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1.目の前の自分は

今、私の目の前には私がいる。

こいつは何を言っているんだと思った人もいるだろう。

幻覚を見ているわけではない。いや、他の人には見えないのだから、もしかしたら幻覚に近いのかもしれないが、私は幽霊に近いと思っている。

ただ、正確に言うとそれは「夢に現れた私」である。

寝ぼけているわけではない。私が今いるのは現実世界だ。決して夢の中ではない。

私も初めて私…紛らわしいので「夢に現れた私」は「自分」と言うことにしよう。えー、それで、私も初めて自分に会った時はびっくりしたものだ。

そっくりさん?ドッペルゲンガー?と色々考えたが、周りには見えていないし、自分がいる場所や時間、景色は初めてのはずなのになぜか見たことがあるものだった。デジャブよりもはっきりと「見たことがある」と感じた。


初めて自分に出会ったのは、今から3ヶ月前のことだ。

初めは驚きのあまり、何も言葉を発することができなかったが、害はなさそうだったので会話をしてみることにした。

「あなたはなんなの?」

「…」

「どうしてここにいるの?」

「…」

「…私なの?」

自分はコクンと頷いた。

どうやら自分は言葉を発することはできないらしい。そした、やはり自分は私だった。

そこで、私はふとあることに気づいた。

本来私と共にあるべきものが、独立してこの世に存在しているのは、非常にまずいのではと。

もしかしたら、私の魂が分離してしまっているのではないかと。

「私の魂、持ってる?」

私は考えても仕方のないことは思い切って聞いてしまうタイプなので、思い切って聞いてみた。すると、自分はコクンと頷いた。

あー、これはまずいな…。取り返さないと。

すぐにそう思った。そして、それと同時に浮かんだ疑問を聞くことにした。

「ところで、君以外に君みたいな状態の自分はいる?」

これに対しても自分は頷いた。

つまりだ。今、私の魂はバラバラになってしまっている状態なのだ。どうにかしなければ、私は死んでしまうかもしれない。

どうしたらいいだろう。触れれば勝手に戻ってくるものなんだろうか。

そう思い、自分に触れたがすり抜けるだけだった。

相手は自分なのにさっぱりわからない。

しばらく、あれこれ試したが私の元へ戻すことはできなかった。

「あーもー。私のとこに帰ってきてよ…」

疲れ果て、そうぼやいた瞬間に自分は私の元へと戻った。

「え…。まじか」

正解は「戻れ」や「帰ってこい」だったのだ。


それから私は自分を見つけては回収した。

大抵は自分は自ら私の元へと帰ってきてくれるので、そこまで大変ではなかったが、原因も正体も不明なままだった。

そんな日々が3ヶ月続き、今朝、これは夢に現れた私であることに気づいた。

今までは、「あれ、ここ来たことあるぞ?」とはっきり覚えてはいなかったが、その日は一昨日見た夢と一致していることに気づいたのだ。

そして、私がなんとなく覚えている夢の数と自分の数から推測するに、おそらく、自ら戻ってくる自分は「忘れられた夢の中の私」だろう。

と、いうことはだ。記憶にあるかつ、近所ではない夢を見た時は、大変だということだ。

勝手に戻ってくることもないし、ただ生活しているだけでは回収できない。なんてこった。

朝から最悪の気分になった。


ひとまず、次の休日に遠出しないとだな。朝家を出て、電車に乗って…。まぁ、なんとかなるか!

私はそう思いながら目の前の自分を回収した。


明らかに異常な状態であるにも関わらず、「回収」という作業に意識が向き、考えていなかったことが、後々厄介なことになるとはこの時は思ってもみなかった。

よろしくお願いします!!!

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