虹のむこうに
丘のうえにある、赤いやねの小さなおうち。
そこには、黒ねこのクロと白ねこのシロが住んでいます。
クロとシロは、おたがいが大好きで、とってもなかよし。
クロはシロがうれしいとしあわせで、シロはクロがしあわせだとうれしいのです。
ある日、シロがおててをつないで、クロをおにわにつれていきました。
おにわには、シロがおせわをしている花だんがあります。
クロを花だんまでつれてきたシロは、にゃあにゃあ言いました。
「クロがだいすきな色のお花がさくタネをうえたのにゃ! お花がさいたらクロはとってもよろこぶと思うのにゃ! たのしみにしててほしいにゃ!」
「たのしみなのにゃ! シロ、ありがとうなのにゃ」
「どういたしましてにゃ」
まだお花はさいていないけれど、クロはとってもうれしくなりました。
そして、クロは、シロにもよろこんでほしいなと思ったのです。
シロがよろこぶものはなにかにゃ?
どんなプレゼントがいいかにゃ?
クロはこっそりとおうちを出て、シロにあげるプレゼントをさがしに行きました。
とこ、とこ、とこ。
にゃん、にゃん、にゃん。
原っぱについたクロは、いろんな色の羽がオシャレなオウムとであいました。
「オウムさん、なにかいいプレゼントはないかにゃ?」
「プレゼント! プレゼントはすてきなものがいいね! すてきなものは虹のむこうにあるらしいよ!」
「虹のむこう?」
「虹のむこう!」
オウムはきれいな羽でとおくのお空をゆびさします。
お空には、大きな虹がかかっていました。
すてきなものをかくしていそうな、すてきな虹です。
「オウムさん、ありがとうなのにゃ。虹のむこうに行ってみるのにゃ」
「どういたしまして! がんばれ! がんばれ!」
オウムはきれいな羽をふって、クロを見送ってくれました。
とこ、とこ、とこ。
にゃん、にゃん、にゃん。
クロは元気よくあるいて、虹をめざします。
たくさん足をうごかして、しっぽをゆらゆらとゆらして、わくわくしながらあるきました。
虹はちっとも近くなりません。
でも、クロはがんばってあるきます。
どうしても、シロにすてきなものをあげたかったのです。
シロがよろこぶかおを思いうかべて、クロはせっせと足をうごかしました。
とこ、とこ、とこ。
にゃん、にゃん、にゃん。
海についたクロは、きりりとした目がかっこいいウミネコとであいました。
ウミネコは、クロやシロのように、にゃあにゃあ言います。
「ネコだにゃーっ。黒いネコだにゃーっ。どうしてネコが海にいるのかにゃーっ」
「虹のむこうにあるすてきなものがほしいのにゃ。でも、なかなか虹が近くならないのにゃ」
「にゃーんだって! 虹のむこうに行くだにゃーんて! そんなのできっこないにゃーっ」
ウミネコは、かっこいい目をもっときりりっとさせて、羽をバタバタさせました。
「ネコにはトリみたいに羽がないのに、ネコにはサカナみたいにおよげないのに、海をこえて虹まで行くなんてムリだにゃーっ」
「でも、クロはどうしても虹のむこうに行きたいのにゃ……シロによろこんでほしいのにゃ……」
たしかに、クロには羽はないですし、およぐこともできません。
でも、どうしても海をこえて、虹のむこうへ行きたいのです。
クロはさんかくの耳をションボリさせました。
黒いしっぽもションボリしています。
かわいそうに思ったウミネコは、いいことをおしえてあげました。
「森へ行ってみるといいのにゃーっ。いろんなことを知っているフクロウがいるらしいのにゃーっ」
「森のフクロウさん! 会いに行ってみるのにゃ。おしえてくれて、ありがとうなのにゃ」
「どういたしましてにゃーっ」
ウミネコはきりりっとした目で森のほうを見てから、手をふって見送ってくれました。
とこ、とこ、とこ。
にゃん、にゃん、にゃん。
クロは、森をめざして歩きます。
海から森まではとてもとおくて、なかなかつきません。
とぼ、とぼ、とぼ……。
にゃぁ、にゃぁ、にゃぁ……。
歩いているうちに、まわりがまっくらになってきます。
夜になったのです。
クロはなきそうになりながらも、がんばって森につきました。
「フクロウさん! フクロウさん!」
クロがにゃあにゃあよぶと、すぐにフクロウがやってきて、ホーホーなきました。
「これはこれは、ちいさなネコさん。どうしたのかな。ホー、ホー」
「虹のむこうに行きたいのにゃ……どうしたらいいのかにゃ……」
「虹のむこうに? はて、どうして虹のむこうに行きたいのかな。ホー、ホー」
「虹のむこうにはすてきなものがあるのにゃ……、それをシロにあげたいのにゃ……、よろこんでほしいのにゃ……」
「ほぉ……、ホーホー」
フクロウは首をかしげて、まわして、考えます。
そして、やわらかい羽でクロのあたまをなでました。
「朝になったら、おうちにかえってごらん。きっと、すてきなものを見つけられるよ。ホー、ホー」
「おうちに? でも、虹のむこうに……、」
「いいから、かえってごらん。そんなにとおくまで行かなくても、ちかくにだって、たからものはあるものだよ。ホー、ホー」
「にゃぁ……」
もふもふとしたあったかい羽になでられて、つかれていたクロはすやすやとねむってしまいました。
すや、すや、すや。
にゃぁ、にゃぁ、にゃぁ。
クロは朝までぐっすりねむって、フクロウの朝ごはんをたべてから、おうちにむかってしゅっぱつしました。
「フクロウさん、ありがとうなのにゃ」
「どういたしまして。きをつけてかえるんだよ。ホー、ホー」
フクロウは首をくるくると回しながら、見送ってくれました。
とこ、とこ、とこ。
にゃん、にゃん、にゃん。
クロは虹にせなかをむけて、おうちをめざして歩きました。
なにも言わずに来ていたので、シロはおこっているかもしれません。
丘のうえの赤いやねのおうちについて、クロはもじもじしながら、そーっとお庭をのぞいてみました。
お庭には、シロがいました。
じょうろで花だんにお水をあげています。
ションボリとしていて、さみしそうです。
そして、シロのじょうろからながれるお水は、小さな虹をつくっていました。
そう、虹です!
小さな虹のむこうにいるのは、シロ。
クロにとって、だいじなだいじなシロです。
虹のむこうにあるすてきなものは、シロでした。
「にゃあああん! シロー!」
たまらないきもちになって、クロはシロのほうへ走りだしました。
シロはまんまるなおめめを、もっと大きくまんまるにしたあと、じょうろをなげだしてクロのほうへ走ってきます。
「にゃーん! クロー! どこにいってたのー! しんぱいしたのにゃー!」
「ごめんにゃ、ごめんにゃ。シロにあげるすてきなものをさがしていたのにゃ。虹のむこうにすてきなものがあるってきいたのにゃ。でも、でも、すてきなものはシロだったのにゃ」
「にゃあああん! シロにとっていちばんすてきなものはクロだにゃ! シロのたからものはクロなのにゃ!」
おたがいが、だいじなたからもの。
それがわかったにひきのネコたちは、ぎゅーっとだきあいました。
それからすこしして、シロがそだてていた花がさきました。
まっしろな花びらの、きれいなお花です。
お水をあげると、小さな虹が見えます。
それをながめるクロとシロは、いつもしあわせそうに、にゃあにゃあ言って、おててをつないでいるんですよ。
【おしまい】