第6話 現実
私は絶対に魔法を取り返してみせる。心の中で誓った。
「もぅ、死ぬとかどうでもいいから、魔法を返して。人の許可もなく勝手に魔法を取るなんてひきょうよ。そんなひきょうな奴死んだらいいんだわ。」
「ラ、ラーム…?」
私の怒りは込みあがってきた。でも、魔法で殺したときとは違う。威力が少ない。…やめなきゃ。私がそう思った瞬間、怒りは消えた。
「怒れない。この前みたいに、怒れない。」
「え?怒れないって?」
私は黙ったまま、アラナスのそばを離れ、大きな道路に出た。そして、手をあげタクシーを止めた。ヴィオを呼ぶようにヴィオのほうを見て、タクシーに乗った。ヴィオも走って私のほうに来た。…500円よ!出て!……とうとう出てこなくなった。
「ヴィオ…。お金、よろしくね。私…お金でてこない。100円すら出てこない。」
「分かった。ごめんな。俺のせいで魔法を取られたりして…。魔法を取り返すのに手伝うよ。なんかあったら俺に言ってな。いつでも見方だから。」
「ありがとう。ヴィオ。まずはチャイナに聞こうと思ってる。」
聞いたからどうとか考えてもいなかった。今の私にはそれしか方法がないし、考えもできない。私はまだ、ヴィオが見方とは思っていない。私の味方はメルニアだけだ。そうだ!明日、メルニアに会いに行こう。メルニア…メルニアはもう戻らないの?メルニアは間に合わなかったんだ。もうちょっと早く、チャイナはいい人だって気付いとけば良かったのに。気付いていればもっと魔法を教えてもらえて、あのときみたいに間に合わないということにはならなかっただろう。私がメルニアのことを考えていたら、あっという間にチャイナの家に着いた。
「ヴィオ、やっぱり私が払う。挑戦したいの。」
ヴィオの耳元で私はささやいた。
「うん。分かった。じゃぁ、俺先に家の中に入っとくよ。」
私はタクシーの運転手の上に手をだし、願った。どうか…500円でもいいので出てきてください。タクシー代は450円だ。
「ありがとうございました。はい。おつりです。」
運転手の手の上には500円玉が置いてあった。私の上には50円。ヴィオはもうすっかりタクシーからおりて、家の中に入っていってる。私の魔法…。戻ってきた?
「また、利用します。」
私がこういうと、運転手はニッコリ笑い行ってしまった。私は手の上にある50円玉を見た。なんだか、うれしくて顔がにやけてしまう。私は立ち止ったままのもなんだから家の中に入っていった。
家の中に入ると、チャイナがリビングのいすに座っていた。私も50円玉を握り締めたまま、チャイナの反対側のいすに座った。
「ラーム、用ってなぁに?ヴィオが言ってたわ。ラームが言いたいことあるって言ってたって。」
「あぁ。私、アラナスに魔法を取られてしまったの。どうしたら戻ってくるの?」
「アラナスって、バイオンの事?」
「バイオンって?」
私には理解ができなかった。
「私の夫よ。つまり、あなたのおじいさん。」
「ああぁ。」私はポンと手を叩いた。そして、チャイナに50円玉を見せた。
「50円玉がなぁに?」
「私は魔法を取られてから、お金が手から出てこなかったの。でも、アラナス…バイオンに魔法を返して!って言ったら魔法が使えちゃった。タクシー代で500円が出せたの。」
私は得意げに言った。今でも顔がにやける。知らないうちに500円玉が出ていて、「ありがとうございました。」といわれたとき、私は今までにない嬉しさであふれた。思い出すだけでもっと顔がにやける。
「へぇ。でも、魔法が戻ってきた訳ではないでしょ?じゃぁ…もう一度、10円でいいから出してみて。」
「う、うん。」
さっき、お金を出せたのに私はとても緊張をしていた。出るか、出ないか…。10円よ。出て!心から祈った。
10円は出なかった。私は声も出ないほど、悔しかった。
「ラーム…本当に魔法を取られちゃったのね…。可愛そうに。明日、私と一緒にバイオンのところに行って、魔法を返してもらえるよう、頼みましょ?」
ヴィオも私のことを黙ってみている。私はチャイナの案には賛成できない。返してって言っても返してくれなかったんだから。チャイナが言っても無駄じゃない?別居してるんでしょ?無理だわ。
「行ったら解決する?チャイナが絶対魔法を取り返してくれるなら行くわ。少しでも無理と言うことならば、行ったって無駄でしょ?」
ヴィオの顔が青くなっていくことに気がついた。真っ青だ。
「魔法を絶対取り返すと誓うわ。だから、明日私と行きましょう。いい?ラーム。」
「分かった。それなら行くわ。…それより…ヴィオ、大丈夫?顔が真っ青よ。」
「大丈夫。ちょっと風邪っぽいだけだから。今日はもう帰るよ。明日、俺もついていったほうがいいの?チャイナ。」
チャイナは少し考えてから、
「いざと言うときに、魔法をもらうかもしれないわ。それが0kだったらついてきてほしいわ。」
「俺、チャイとラームの役に立ちたい。だからもちろんついて行く。俺のせいでこんなことになったんだから。」
ヴィオの顔がもっと青くなり、真っ赤になってきた。
「ヴィオのせい?ヴィオが何したって言うのよ。何もしてないでしょ?」
チャイナがヴィオに言った。ヴィオは確かに、アラナスの手伝いをした。でも、私に会わせただけだ。魔法を取るなんてこと一言もいてなかった、と言っていたのだ。
「チャイナ!ヴィオは悪くないのよ。別にヴィオのせいでもないし。全部あの男が悪いのよ。」
「ありがとう、ラーム。」
ヴィオの顔がだんだん普通になってきた。良かった。
「それならいいわ。明日、お昼を食べてから出発しましょう。それまでに風邪を直しといてね、ヴィオ。あなたの魔法ならそんなのへっちゃらでしょ?」
「はい。今日直しておく。じゃぁ、明日昼ごろに来るね。さよなら。」
ヴィオはドアのほうに行き、出ていった。私はひどく疲れている。もう少しで目が閉じてしまいそうだ。
「ラーム大丈夫?あなたこそ風邪じゃない?ヴィオは風邪を引いてなかったわ。それくらい分かったでしょ?ラーム。」
「分かってたわ。ヴィオは全部自分のせいだと思ってた。私がヴィオのせいじゃないって言ったとたん、ヴィオの顔は普通どおりに戻ったもの。」
私は顔や体全体が熱くなってきた。頭はガンガンしてとても痛いし、動こうと思ってもうまく体が動かない。
「今日はもう寝るわ。」私はそういって、立って2階へ行った。フラフラして今にも階段から落ちそうだ。私は手すりを持ち、落ちないように慎重にあがって行った。部屋につくと私は倒れるように、ベットに転がった。そしてすぐ、深い眠りについた。
私は変な夢を見た。
メルニアがアラナスに連れて行かれる夢。どこに連れて行かれたのかは分からない。でもそこは私が今までに見たこともない、木や草がたくさんはえている森だった。私は森の中には入ったことがない。
メルニアは嫌がりもせず、黙ってアラナスの後をついて行く。このままだったらメルニアが危ない、メルニアには大量の魔法がある。もし全部魔法を取られてしまったら──私はふと思った──。
私は苦しくなって目が覚めた。汗がびっしょりだ。夢のことをはっきり覚えている。現実のように私の目から見た映像。初めてだ、こんなにリアルだったのは。いやな予感が私に襲ってくる。本当に起こりそうな気がする。このままだとメルニアが危ない!




