チュートリアルで詰んだかもしれない.6
とりあえず光介にフレ申請しよう。たしかライト、だったよな…?名前から検索かけて……あぁあったあったたぶんこれだな
ふぅ……。
…………。
あ"ー恥ずかしい……!めちゃくちゃ恥ずかしい!
いかにもこれから冒険が始まるんだ!的なノリでナナさんと話していたのにまだチュートリアルが終わってないってどうなのよ!?
だが少し考えてみればわかった筈だ。レアモンスターの素材をゲットしたとは言え文無し。お財布の中身スッカラカンで放り出されるようなRPGはそうそう無いだろう。
進行状況だってメニューから確認できる。それを見ていればこんな失態を演じることもなかったろうに……。
「長いこと2人でいたのもよくなかったかもな…つい光介とふざける感じでしょーもない寸劇を始めちゃったし。えーっと、メニュー。クエストのページは……これか」
《チュートリアルクエスト》
報酬 5000コル セットスキル制限解放 ランダムスキルチケット×2
1.Naviの話を聞こう 達成!
2.身体を動かしてみよう 達成!
3.モンスターを倒してみよう 達成!
4.冒険者ギルドで登録しよう
とりあえず冒険者ギルドに行けばいいみたいだ。
ナナさんはちゃんと最後まで終わらせるようにと言っていたがこれなら楽勝だろ。登録するだけならステータスなんて関係ない。さっと行ってちゃっと受付すればいいだけだもんな?
ギルドの場所は……通りかかった衛兵っぽいおっさんにでも聞けばいいだろう。
「すみませーん、冒険者ギルドまでの道を教えてほしいんですけど」
「ん?この街にいてギルドの場所を知らないとはおかしなやつだな」
「いやー自分さっきここに着いたばかりでして…」
「旅の者か。だがそれなら街に入る時に説明を受ける筈だ、何故こんな所にいる?」
おっさんの目が険しくなる。やべぇ、完全に不審者を見る目だ。
おやおや……?なんか流れが怪しくないか?俺、何も悪いことしてないよな?ちょっと道を聞いただけだもんな!?
「た、旅の者ではなくて、その!伝わるかどうかわからないんですけど、この世界の外側から来た感じでして!」
「あぁ、なんだあんたプレイヤーだったのか。それならそうと言ってくれれば良かったのに」
「プレイヤーで伝わるのかよ……」
おっさんはあっさりと警戒を解いてくれた。どうやらこのゲームの世界感に馴染めるように、と作り上げたキャラの見た目が思いの外マッチしていて現地の人だと勘違いしたっぽい。
「ハッハッハ!疑うような目を向けてしまって悪かったな。俺はこの街で衛兵をしているバルザだ」
「ライリーフ・エイルターナーっす……」
「冒険者ギルドへの道だったな。それならここを真っ直ぐ行って突き当たりを右に曲がると正面に見えてくるデカい建物がギルドの本部だ。支部が街の門の近くにもあるが、これから登録をするなら本部がいいだろう」
へー、支部があるのか。門の近くってことはクエストの報告が楽になるようにかな?
「バルザさんあざっす、早速ギルドに行ってみるっす」
「ああ。さて、俺も仕事に戻るとしよう。ライリーフ、非番の日に会うようなことがあれば、今日の詫びを兼ねて酒でも奢ってやろう」
最初はどうなるかと思ったが、話してみると気のいいおっさんだったな。未成年だから酒は飲めないが、ここでそんなことを言うのは野暮ってもんだろう。
「おお、本当にデカいな!」
バルザさんに教えてもらった道を進んで冒険者ギルド本部にたどり着いた。
街にある他の建物とは比べ物にならない大きさだ。さすが冒険者ギルドの本部、と言ったところか。
「じゃ、早速中に入ってみるか」
たくさんの依頼が張り付けてあるクエストボード。美人の受付嬢。併設された酒場で酒を飲んでいる荒れくれ者。実に、実にファンタジーだ!
実際にこの空気を体感してみるとテンションが上がってくる。
ふっふっふ、知ってるぜ?ここで感動にうち震えてボーッと突っ立ってるとテンプレートな先輩冒険者に絡まれたりするんだろ?
俺のステータスがまともだったなら、そんなイベントもアリだった。だがここは絡まれないように素早く受付に並ぶとしよう。下手したら子供にだって完封されかねないステータスだからしゃーないよな!
「次の方どうぞー」
何事もなく俺の順番が回ってきた。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「ギルドへの登録を頼みたい」
「登録ですね、ではこちらの用紙に名前を書いて下さい」
ライリーフ・エイルターナーっと。あれ?日本語で書いちゃったけど大丈夫だろうか?
「はい、結構です。次は此方の水晶で魔力紋の登録を行います。」
「(大丈夫だったか……)どうすればいいんだ?」
「水晶に手をかざして下さい。過去に犯罪歴等が無ければ登録されます」
水晶に手をかざすと体から何かが流れていくような感覚があった。これが魔力だったりするのだろうか?
「……はい、問題なさそうですね。こちらが貴方のギルドカードになります。再発行に1万コルかかるので無くさないように気をつけてください」
「わかった、気をつけよう」
「最後にギルドカードにステータスを登録します」
「ん?さっき魔力紋とか言うのを登録したんだしそれだけでいいんじゃないか?」
「魔力紋は再発行時の本人確認のために登録するものなんです。ステータスの登録はまた別でして、登録しないと倒したモンスターの数がカウントされないのでトラブルの元になってしまうんです」
「なるほど」
「ギルドカードの裏面に血を一滴垂らして下さい。それで登録が完了します」
血を垂らすのか。まぁ定番っちゃ定番のやり方だよな。異世界転生物の小説でもよく見かけるし。
しかし血とか出るのだろうか?ここゲームの中だぜ?あ、でもバッドステータスに出血とかあるんだっけ。でもそれはあくまで戦闘中の話だろうし……。
「あ、もしかして指を切るのが怖いんですか?大丈夫ですよ、ちょっと指先をチクッとするだけで十分ですから」
受付のお姉さんがいい笑顔でそんな事を言ってきた。
まずい!これでは周りの冒険者達に腰抜けだと思われてしまうじゃないか!せっかく絡まれずに受付に来れたのに帰るときに絡まれては意味がない。早く、早く誤解を解かなくては!
「いや、俺はプレイヤーだからな。そもそも血が出るのかと悩んでいたんだ」
「あ、失礼しました!プレイヤーの方だったんですね。でしたらギルドカードの裏面に触れながら『ステータス』と唱えれば登録できますよ!」
ふぅ、ギリギリセーフ。しかしまたプレイヤーだと気づかれてなかったな。頭上にカーソルが浮かんで見えるのはプレイヤーだけだから仕方ないのかもしれないし、他のプレイヤーも経験しているスプルドあるあるだったりするのかもな。