装備を強化したら詰んだかもしれない.8
1日経過して準備を整えた俺達は、ボスモンスターがいるであろうフィールドに向けて移動している。ボスに近づく程に現れる眷属の数が増えていき、今では通常のモンスターすら見かけなくなった。
「これは本格的にボスが近いな」
「ライリーフ、少し休憩しないか?三つ首はあまり出てきていないとは言え、ここまでかなりの数の眷属と戦闘してきた訳だし」
「ボクもアルバスに賛成かな。集中力切れてきちゃった」
「なら甘いものはいかが?クッキーがあるのだけど」
「アイシャさん、当たりつきクッキーは勘弁してください」
ボスに近づく程増える眷属を律儀に処理し続けたのはゲーマーの悲しき性だろう。討伐ポイントおいしいです。
ここはセーフティエリアでも何でもないので少し不安だが、疲れているのもまた事実だし……
「なら少し休憩するか。アルバス、俺は飯作るから見張りよろしく。ついでにライト達も呼んでくれ」
「え?ここで何か作るのか?空腹度の回復なら果物でも食べれば十分だと思うんだけど」
「それだとバフ付かねぇだろうが」
「へぇ?さすが幻の屋台店主だ。他のプレイヤーはまだどうすれば美味しくなるか調べてるのにもうバフ付き料理なんて作れるんだね」
「しまった……マルティさん結構掲示板見てるんだったな」
「書き込んだりしないから安心しなよ」
「料理でバフが付く、くらいなら別に書き込んでもいいですよ」
「いいの?なら遠慮なく」
「行動早っ!?」
アイテム
輝く具沢山スープ PM
空腹度50%回復 150分間HP、MP自動回復・小
150分間STR上昇・小
沢山の食材をニ"ャーーーーーッ!?で煮詰めて作られたスープ
飲むと力が湧いてくる
「ん、こんなもんかな」
「君、サラッとPMアイテム作らないでくれる?掲示板に載せられないじゃん」
「とっても美味しそう!ライはお料理が上手なのね」
「ライト君達から料理の腕前は聞いてたけど、味がいいだけじゃなかったのか」
「適当に作ってるからどんな効果になるかはその時次第なんだけどな」
「お、もう出来てたか!」
ちょうどいいタイミングでライト達が到着したな。モンスターが来ない内にさっさと食べてしまおう。
「ライ、私の分は大盛で」
「ダメだよフィーネ!いつものメンバーだけじゃないんだから!」
「ぶー……」
「ティナ、ありがとな。でも大盛くらいなら大丈夫だぞ?おかわりは無理そうだけど」
大量生産が奪われてなければ、全員おかわりしても余裕で余るくらいになったんだけどなぁ。余った分を俺1人の時に食べられるから料理する手間が省けて割りと便利だったんだな、大量生産。
「ふぅ……美味かったぁ!」
「んふふ、これはご飯スレの住人が捜索願いを出すわけだよ」
「むー……おかわり出来ないと物足りない」
「フィーネはいっつもたくさんおかわりしてたもんね」
「さーて、腹ごしらえも済んだことだし作戦の確認といこうか」
ここから先、ひとまず全員で移動する。恊闘ペナルティで攻撃のダメージが減少したり、貰える経験値が下がってしまうが眷属相手なら問題ないだろう。
そしてボスを発見したらパーティ毎に別れ、俺達がボスに攻撃。それと同時にライト達が周りにいるであろう眷属に攻撃して逃走。追いかけてきた眷属を遠くで処理して周辺の眷属の討伐に移行する、と。
かなりシンプルな作戦だけど上手くいくだろうか?
作戦の確認もサクッと終わり、俺達は移動を再開した。
そして割りとすぐに奴を発見したのだが……
「ライリーフ、あれがそうなのか……?」
「……」
「ちょ、あれってレイドモンスターじゃないのかい?」
「……」
「まぁ、とっても大きいのね!それに頭が7つもあるわ!」
「セブンヘッドって書いてあったもんな。なぁ、あれって鎧の尻尾が頭になったのか?」
「……」
「ライ君?さっきから黙ってどうしたの?」
「……そ」
「そ?」
「育ち過ぎだろッ!?」
7つの頭はそれぞれ違う動物になっていて、どれも凶暴な顔つきだ。しかも真ん中の頭なんて完全にドラゴンなんですけど!?
そして何よりデカイ!俺が倒された時は2Mぐらいだった筈の奴の大きさは、今ではなんと約10M程になっている。これ、レイドモンスターじゃねーの?マジで?
正直今回は1人じゃないし余裕じゃん?とか思ってたけど、改めて言わせてくれ。詰んだかもしれない……
次回、ついに開戦!