装備を強化したら詰んだかもしれない.7
「よーし、なかなか連携良くなってきたんじゃないか?」
「三つ首相手でも余裕が出てきたし、そろそろライト君達と合流しようか」
「アイシャちゃんガッツリ攻撃受けてたけど平気?」
「ええ。みんなやんちゃで可愛かったわ!倒さなくちゃいけないのがちょっと残念ね」
「あはは。ボクも人のこと言えないけど、アイシャちゃんってかなり変わってるよねー」
現在俺達は災厄の眷属相手に絶賛パーティプレイの特訓中だ。
俺、アルバス、アルバスにくっついてきたマルティさん、そしてせっかくだから一緒に遊びたいと言って急遽協力してくれることになったアイシャさん。この基本ソロプレイヤーな即席パーティでボスに挑むために!
ライト達と組まなくていいのかって?うん、俺もそれは考えたさ。β時代から組んでるだけあってパーティの連携は抜群だしな。ただそこに俺が加わってしまうとバランスが崩れてパフォーマンスが低下してしまう。そしてボス相手にいささか火力が足りない気もする。なので今回は俺達がボスと戦闘している間、周辺の災厄の眷属の掃討してもらうことになった。眷属達は意外と強いので、乱入の可能性が減るのは超助かるんだよ。
んでもって俺達即席パーティの基本的な動きはこんな感じだ。俺がわちゃわちゃして敵の気を引き、マルティさんがデバフを掛けながらスキルでヘイトをアイシャさんへ移す。そしてアイシャさんが攻撃を受けている隙にアルバスが敵に攻撃を叩き込む。
ん?もしやこのパーティでも俺っていらないんじゃ……。
「てかこのパーティ全員極振り勢なのも原因だよなぁ」
「ライリーフ、役割に不満でもあるのか?」
「違うぞアルバス。不満はないが存在意義もボスレーダーしかないんだよ。これじゃイベントNPCみたいじゃんか」
「言われてみると確かにイベントキャラみたいだね。実際騒動の元凶な訳だし」
「んふふ、聞いたよ?アドベントの魔人騒動も君が原因なんだってね」
「あれはアルバスが攻撃してきたから仕方なくって感じですねー。よって原因はアルバスにある」
「待て、その理屈はおかしい!」
「うふふ、パーティを組むと賑やかで楽しいのね!」
道すがら現れる災厄の眷属を何体か倒しながら俺達はファースまで帰還した。どうやらライト達も戻って来ているみたいだな。
「お帰りなさい。連携のほうは大丈夫そうかしら?」
「とりあえず形にはなったかな。……そう言えばリリィはふわふわ装備じゃないんだな」
「あんな危険物着られる訳ないでしょ!?また皆が暴走したらどうするのよ!」
「もちろんスクショするに決まってるじゃん。野郎は排除するから思う存分もふられてくれ!」
「絶対イヤ!」
「おいライ、リリィからかうのはその辺にしてこれからどうするか決めようぜ?」
「それもそうだな」
「……もぅ」
おや?リリィってば心なしか残念そうじゃね?ははーん、さては本当はふわふわ装備着たかったんだな?俺がしつこく言うから仕方なくって流れがお望みだったに違いない。ふっふっふ、その機会はこの件が片付いたら用意してあげようじゃないの!
「ッ!?何かしら?突然悪寒が……」
「リリィちゃん風邪?ってゲームで風邪引くわけないよね」
「そうでもないよ。ボクのスキルにも相手を風邪状態にする物があるしね」
へー。風邪ってバッドステータス扱いなんだ。知らなかったぜ。
「で、どうする?今からボスに挑んでみるか?」
ライトが単刀直入に聞いてくる。俺としては早く挑んでサクッとステータスとスキルを取り返したい所ではある。あるのだが。
「いや、今日はやめておこう。ボスの居場所がかなり遠いみたいで、今からだとたどり着くのが夜中になっちまう」
「休みなんだしいいじゃんかよ」
「あー、ごめん。ボク夜はバイトがあるからできれば明日にしてもらいたいかな?」
「私もお父様とお食事の約束があるの。ごめんなさいねライト?」
「え、いや、全然大丈夫ですよ!むしろ明日の方が俺もいいかな!」
「へぇ……?ライトはおっぱい星人だったんすね。どうりでうちらにモーションかけてこない訳っす」
「ルルはライトへのアピールが足りてない」
「ちょ、フィーネ!別にそんなんじゃないっすからね!?」
……ラブコメの波動を感じる。粉砕せねば。ライト、許すまじ!
「おわ!いきなりトマホーク投げてくるとかなんなんだよ!?」
「黙れ!貴様には失望したぞライトよ! リア充滅ぶべし!」
「何でだーッ!」
「ふ、ふふ、腐腐腐腐腐!良い、良いよぉその嫉妬! 俺だけを見てくれってことだよね? あぁ……今すぐ形にしなきゃ! ちょっとログアウトするね、アデュー!」
「はぁ……僕は関係ないし描かれてないといいなぁ……」
とりあえず、幻影水晶の剣の性能テストにはなったとだけ言っておこう。
ちなみにライトのパーティメンバーは全員近くに住んでたりする。