Bブロック決勝戦
俺は順調に勝ち進み、ついにBブロックの最終戦に駒を進めた。
増える蛇剣使い、アルカナギャンブラー、ダンシングファーマー。そしてフィーネを降した自己錬金キメラファイター。誰もが皆強敵で、一瞬も油断できない戦いが続いた。もし炎剣士のまま大会に挑んでいたならば、きっと2回戦で負けていただろう。
『Aブロック決着ーゥ!!えげつない状態異常のコンボでゴザル丸選手を完封したマルティ選手がAブロックの覇者となったァ!!!』
『いやー腐術、じゃなくて符術にこんな使い方があったとは驚きですね』
『うはははは!符術もだが、ステータスとスキルの組み合わせもかなり上手いな。これでまだメインジョブのスキルを使ってないってんだから驚きだわ!ま、なんにせよこれで残すはBブロックの最終戦だ!早速選手の紹介をしていくぜ?これまで全ての対戦相手を一撃で葬ってきた脅威の大剣士!!スプルド最強のプレイヤーとの呼び声も高い優勝候補筆頭、アルバスーッ!!!』
「うひ、あ、あんまり持ち上げないでほしいんだけど……」
『対するは数多のイロモノにも負けず、熱いバトルを我々に見せてくれた蒼炎剣士。ライト選手!』
「うっし、予選のリベンジしてやるぜ!」
「あはは、まさかライト君と本当に本選で戦うことになるとはね。どうせなら決勝戦で戦いたかったかな?」
「どっちでも変わんないっしょ。あとアルバスさん、2日前の俺と同じだと思わない方がいいですよ」
「それはこれまでの戦いでよく分かってるさ。あ、こっちも装備更新してるからね?」
はっ!それくらい分かってるっての!見るからに高そうな防具になってるもんな。恐らく前と同じ展開になったとしても、あの時程HPは削れないだろう。三回戦の時、パワーファイターからの攻撃をわざと受けてカウンターとかしてたしな。
『両者準備は出来てるか?それじゃいくぜ!3!2!1!』
『『レディファイト!!』』
アルバスさん相手に後退は愚策、こっちから仕掛けるぜ!
「ヒートアクセル!」
『おーっと!いきなりライト選手が仕掛けた!攻撃される前に攻めきるつもりかぁ!?』
「それじゃ前回と同じじゃないか。せい!」
「そうでも無いっすよォ!」
「なっ!手応えが無い!?」
「残念、蜃気楼だぜ!」
『おー!ヒートミラージュで大剣の一撃を見事回避しましたね』
『大剣が届くギリギリの距離で発動させたか!あれなら直感スキルでも見破るのは難しい。いいねいいねぇ!このままアーツで大ダメージを狙うのかぁ!?』
そんな事をしても隙を増やすだけだ。ここは地味でも手堅く行かせてもらう。攻撃系のアーツを使うのはアルバスさんのHPが6割を下回ってからだ!
「ヒートアクセル!フレイムハート!」
「え!?攻撃してこないのかい?」
『ここで勝負を焦らずバフを重ねますか。これまでのバトルからすると、派手なアーツを使って攻めそうなイメージだったんですけどね?』
『くーっ!焦らすねぇ!だがよく考えりゃ、アーツで削り切れなきゃ逆に一撃でやられる訳だもんな。そりゃ慎重にもなるか!』
「なるほど、僕のHPを削りきれるまでバフを重ねようって訳か。でもそう上手くはいかないよ!」
チッやっぱりフレイムウォールで時間稼ぎはできないか!戦神の信徒と違って無理やり大剣で炎の壁を吹き飛ばしてきた。
「今度は僕からいくよ?」
「ヒートアクセル!くっそ、もっとフィールド広く作っとけよな!」
バフでAGIも上昇しているのでなんとか回避が間に合っているが、ジリジリと舞台の端へと追い詰められている。これはヤバイな……。前回みたいに運良くジャストガードが決まるとは思えないし、此方からも攻めるしかない。
「ヒートミラージュ――」
「また蜃気楼か!でも種が割れていればなんてことない!より前に出て斬ればいいだけだからね」
「――なんて使うかよ!フレイムウォール!」
「おっと、そっちを使ってきたか!でもこれはさっきも一撃で破れてたのを忘れたのかい?」
再び大剣が振るわれ炎の壁が吹き飛ばされる。でもそうくるのは分かってたぜ!
「えっ?いったい何処に……っ!下か!?」
「正解者にはこいつをプレゼントだ!シールドバッシュ!」
「ぐっ……」
消え去る寸前の炎に自分から飛び込むことで一瞬姿を隠し、隙を突いてシールドバッシュ。我ながらいい作戦だったぜ!多少こっちのHPも削れてしまったが、炎と熱を一部回収できたのでお釣りが来る。加えてアルバスさんにスタンが入った!ここで決めるっきゃないだろ!
『追い詰められたかにみえたライト選手!ここに来て逆転の一撃を繰り出したァ!!!!アルバス選手はスタンが入って動けない!行けるか?行けるのかァ!?』
『かなり熱い展開ですね。炎だけに!』
『……お、おう。そうだな』
外野が若干うるさいが無視だ無視!最大火力のコンボで勝ってみせる!
「エンチャント・ブルーフレイム、蒼炎斬!フレイムストライク!!ブループロミネンスッ!!!」
『出たーッ!炎系アーツ3連打!!これはやったか!?』
『あ、先輩なんてことを……』
「あ、危なかった……。あと一瞬でもスタンが切れるのが遅れていたら勝負は決まっていたよ」
「お、おのれ運営ーーーッ!!!」
You lose……
ちなみに土下座ストリームの使い手は2回戦で普通に負けた。
追記
ダイジェストにされた対戦者達
・増える蛇剣士
乾燥した人斬りワカメで蛇腹剣を作ったプレイヤー。
クリエイトウォーターとドライの組み合わせでワカメを自在に操り敵を圧倒した。
本選ではライトのフェイントに引っ掛かり、ワカメに過剰に水を与えて身動きがとれなくなった所を場外に弾き出され敗退した。
・アルカナギャンブラー
かなり決闘者じみたプレイヤー。
山札からタロットカードを引くことでカードに応じた効果を自分又は相手に与える占い師と、ギャンブラーのイカサマアーツでシナジー高めの組み合わせになっている。
毎回目当てのカードを引き当て無双していた。
本選ではライトにイカサマを見破られ、全ステータスに多大なマイナス補正が掛かり敗退した。
・ダンシングファーマー
華麗なステップであらゆる攻撃を回避し、自慢の農具でどんな地面も畑に変える異形の農民プレイヤー。
MPを消費し植物の成長を爆発的に早めるスキルと、植物を操作するスキルで1人だけパーティプレイ状態を可能にした。
本選ではライトのブループロミネンスを無傷で凌ぐも、MPが底をつき降参した。
・自己錬金キメラファイター
素材アイテムと自身の身体を錬成してキメラな見た目とモンスターなパワーで戦うプレイヤー。
大会のルールでアイテムの持ち込みは禁止されていたが、武器や防具は試合前の状態に戻ると言うルールもあった。
そこを逆手にとり持てる全ての素材を費やして一つの武器を作り上げ錬成素材として使用した。
本選ではギリギリまでライトを追い詰めるも、最後の錬成で植物系モンスターを引いてしまい逆転負けとなった。