予選大会
主人公交代のお知らせ。
イベント期間はライト君視点で進められます。
―sideライト―
「そこだ!フレイムラッシュ!」
「うわ、しまった!」
You win!
「おっしゃ!いいペースで勝ててるし、これなら本選もワンチャンあるか?」
イベントの予選大会が始まってから、俺達は王都で各自自由行動をすることになった。
俺、ルル、フィーネはガンガン対戦して本選を目指し、ティナとリリィはまったりクエストをこなしている。後衛組もガチャチケ1枚ゲットするまでは頑張ったみたいだが、そこから更に対人戦を続ける気になれなかったみたいだ。
今回のイベントは戦闘職向けだからしゃーないな。でもライまで不参加とは思わなかった。あと少しでクエスト終わるぜひゃっほー!とか言ってたんだけどなぁ。急に何があったんだろ?
「むぐぅ、また負けたっす!」
「お?ルルも今バトル終わったのか」
「あ、ライト!こっちは3戦連続で魔法職にハメ技くらったっす……手品っていったい何なんすか!?」
「あーわかるわ、手品魔導型は厄介だよな。上手い人がやると近接職完封されるし」
「逆に自滅してくれるパターンも多いんすけどね」
ここ数日の戦いで、どんな型が強いのかが広まってその真似をするプレイヤーの数も増えた。オーソドックスな剣士や魔法は強いプレイヤーのアーツの発動タイミングや立ち回りを真似るだけでもかなり有効なのだが、手品魔導のような特殊型は馴れないと逆に弱くなったりするから面白い。
「あ、アルバスさんのバトルが流れてるっすよ!」
「相手は……沈黙符術型か」
沈黙符術型は自分諸とも相手を沈黙状態にしてアーツの発動を封じてしまい、発動に音声が必要ない符術で一方的に攻める型だ。攻撃をアーツのアシストに任せているプレイヤーには恐るべき相手だが……。
「対戦相手が悪かったな。アルバスさん別にアーツとか使わないし」
「うわー、一撃で場外まで綺麗に吹っ飛んだっすね」
「あ、見てみろよ。場外負けじゃなくて普通にKO判定出てるぞ!はっはー、相変わらず一撃の威力が高いな」
「もしアルバスさんと対戦する場合ってどんな対策すればいいんすかね?」
「やっぱり遠距離攻撃の連打で足を止めて近づかせないのが一番じゃね?」
「あたしらには出来ない戦法っすね」
「確かに。あ、ルルならスピードで撹乱するって手もアリか?あの大剣の中に突っ込む勇気があれば、ワンチャン行けるかもしれないぞ」
「んー、ゲームだとわかってても迫力ヤバイっすからね。たぶんムリっす!ライトが戦う場合はどうするんすか?」
「そうだな……」
俺の場合、ステータスはSTR中心にバランスよく振ってるから強みを生かす手段が見当たらない。ワンチャンを狙うなら、炎剣士の特性であるアーツによる自己バフを最大まで発動させて一撃って感じだろうか?……絶対バフ揃う前に負ける気がする。効果を重ねて一撃を狙うチャージ型の組み合わせだったらもっと楽なんだろうけど、俺は攻撃を当て続けることでバフが掛かるヒートアップ型だからなぁ。
「うん、俺じゃムリだ!」
「えー、かっこわるー」
「しゃーないだろ?アルバスさんは最強プレイヤーなんだからさ。あれ?でもライが勝ったとか言ってたな……どうやったんだろ?」
「粘り勝ち、って感じでもなさそうっすよね」
「あとで詳しく聞いておくか」
それから暫く対戦を続けてガチャチケが20枚になった。20枚ってことはなんとか100勝出来たってことだ。俺、そんなに戦ってたのか。
ちょうど一区切りついたことだし、ガチャを回しにいこう。たしか闘技場の裏通りにある怪しい商館に行けばいいんだよな?
マップを便りに道を進んで行くと、とんでもなく怪しい商館にたどり着いた。え?ここなのか?いくらなんでも怪しすぎるだろ!下手なお化け屋敷より雰囲気あるぞ?
「あ、ライト。丁度いいところに来た」
「ん?フィーネもガチャ引きに来てたのか」
「うん。でも剣だった。私は使わないからそっちで使って」
「んお?なかなか良さそうな剣じゃん!」
アイテム
紅剣・タルバロス ☆☆☆☆
ATK240 帯熱
紅く輝く剣身はまるで宝石のよう
仄かな熱を宿している
ATKも高いし、見た目もカッコいい。なにより帯熱はかなりありがたいな。炎剣士が使えば炎系のアーツを使ったときのバフ時間が延びるんじゃないか?俺にぴったりの剣だ!
「サンキューなフィーネ!」
「ん。お礼はいい槍当ててくれればいい」
「OK、とびっきりの当ててきてやるよ!」
「期待しないで待ってるね」
俺は意気揚々と怪しさ満点の商館に入った……と思ったんだがここは何処だ?明らかに別の場所だ。
「いらっしゃい。君は何回引いていくのかな?」
「おわ!ビックリした……後ろから話しかけてくるなよ」
「ふふ。その反応、ここに来るのは初めてでしょ。説明は聞いていくかい?」
「あー、一応頼む。ここって明らかに入って来た場所とは違うよな?」
「あぁ、その通り。ここは本来もう少し先にある場所だよ。正規の手段でここまでこれればガチャの他にも楽しいことが色々できる魅惑の島さ。期間限定で入口が繋がっているんだ」
「あ!わかった!ここって歓楽島・バルカナルだろ」
「ふふ、ご名答だ。街の住民から噂でも聞いたのかな?」
歓楽島・バルカナル。あらゆる国に属さないリゾートアイランド。NPCの話によれば誰もが一度は訪れてみたい場所の1つなのだとか。カジノとかもあるらしいし、ライを送り込めば面白いことになりそうだと思ってたんだよな。まさかガチャ会場がそんな所だったとは。まぁらしいっちゃらしいか。
「さすがにどうやったらここに来れるかは教えてくれないよな……」
「ん?王都なら定期便が出てるしそれに乗ればすぐだよ」
「なんてあっさりと……」
「ま、君たちプレイヤーが簡単に飛空挺に乗れるとは思わないけどね」
「どうしてだよ?」
「搭乗料金が片道80万コルだからだよ」
た、高い。カジノを目指してた連中はまず80万コルって壁に阻まれて挫折するのか……。生産系プレイヤーならワンチャンあるけど戦闘系プレイヤーには厳しい料金設定だ。今回のイベントで優勝しても片道分しか払えないし、別の方法もあるのかもしれないな。
「イベント終わったらクエスト漁ってみるか……とりあえず今はガチャだな!20回頼む」
「へー。こんなに集めて来るなんて、君って結構強いんだね?」
「ま、そこそこな」
「ふふ、ならここで良い物当てれば本選まで残れるかもしれないね。一気に引くかい?」
「もちろん!」
「それじゃ、このガチャマシーンDX君三世にチケットをセットしてレバーを引いてくれ。セットしたチケットの数だけカプセルが出てくるよ」
三世……。一世と二世に何が起きたのだろうか。まさか外れ引いたプレイヤーが暴れて壊したのか?うーん、考えても仕方ないしガチャを引こう。20枚セットして……いざ!
「当たれ!」
ガコン!
ゴロゴロゴロゴロ……
ピコン!
《回復ポーションセットが当たった!》
《オリハルコンのフライパンが当たった!》
《高級モンスターフードが当たった!》
《蒼剣・エルベスが当たった!》
《回復ポーションセットが当たった!》
《お洒落な普段着セットが当たった!》
《キュートなデート着セットが当たった!》
《鉄人の中華鍋が当たった!》
《滞空マントが当たった!》
《高級モンスターフードが当たった!》
《回復ポーションセットが当たった!》
《回復ポーションセットが当たった!》
《龍鉄扇が当たった!》
《真紅の盾が当たった!》
《ワイルドな特攻服セットが当たった!》
《癒しのアミュレットが当たった!》
《白の枝杖が当たった!》
《回復ポーションセットが当たった!》
《天雷槍・ゼウルが当たった!》
《闇夜のヒーローなりきり変身セットが当たった!》
ふぅ、ギリギリでよさそうな槍が当たったな。今日は疲れたし、フィーネに槍を渡してログアウトするか。
主人公をクビになったライリーフの活躍はこの後すぐ!
おまけ1
予選大会のルール
1戦最大5分。
HPの全損、又は場外で決着。
3分経った時点で決着がつかない場合、その時点での残りHPの割合を比較して、低い方が負けになる。
ドローの場合は延長戦で、先に一撃当てた方の勝ち。
ライリーフが参戦していた場合、たぶんガッチガチの生産職にしか勝てない。リビングデッドで粘っても攻撃威力が低すぎて対戦相手のHPを殆ど削れずにタイムアップで判定負け。相手を空の旅に招待することに成功すれば場外判定でワンチャン勝てるかもしれないが、STRが低いので装備を着た人間とか持ち上げることはできない悲しみ。
おまけ2
追加師匠
・ニコルテス
魔導工学の産みの親。
王国では流行らなかったので帝国に渡りブイブイ言わせていたが、水質が合わなくて出戻ってきた。
・ビューティー・エロティカ
王国の伝説的ファッションリーダー。
通り名ではなく本名。
彼女がいなければ今の10倍ダサい服装だったと道行く人は語る。
近年はあまりに未来を先取りし過ぎた服を量産し、周囲を困惑させた。
・ドーン三兄弟
上から順番にカツ・ドーン、ギュウ・ドーン、カイセン・ドーン。
元は別の国に所属していた造船技師。
何故か海の無い王国に流れ着き、巨大な船を作成してそこに住んでいる。
・パブル
王国に古くから伝わるポナートと言う木彫りの伝統工芸品を作り続けて早70年。
もはやポナートがなんなのかわからなくなってきたらしいが木工の腕はピカイチ。
・キャンディ
ギルド受付のおばちゃん。
担当した冒険者が全員Sランクになった伝説を持つ元カリスマ受付嬢。
正確には師匠ではないが一応紹介。
おまけ3
ライリーフの修行風景
「ただの建築作業だからな!?」
「ライ坊、いきなり大声出してどうしたんだい?」
「何でもない。はぁ、爺さん達好き勝手に図面作りやがって……どこのサグラ○・ファミリアだっての!完成にどれだけ時間掛かると思ってやがる。お迎えの方が絶対早いぞ?」
「サグラダ・○ァミリアが何かは知らないけど、そう時間はかからないと思うよ?連中ノリノリで準備をしてるからねぇ」
「それ、逆に不安なんだけど……」
とりあえず建物は敷地の5分の1の範囲を使うことに決定した。これでもアホみたいに広いからな?
範囲が決まると爺婆があーでもないこーでもないと設計図を改良し、最終的なデザインが決まった訳だ。どう見ても人の住む家じゃない。なんだよ、変形合体予想図って!天空蹂躙形態って!
どうやら俺のホームは決戦兵器にもなるらしい。この事実を知ったとき、俺は考えるのをやめた。この謎兵器が完成してる頃には俺も家の一軒くらい建てられるようになってるだろうし、一人で空いてるスペースにちゃんとした家を建てよう。