新たなクエスト
「おやライ坊。今日はやけに帰りが早いじゃないか?」
「ちょっとレーレイ様に野暮用ができてな」
神殿に入るとフォル婆が出迎えてくれた。俺の横に浮かんでいる幽霊、もといティルナートは見えていないみたいだな。
そう言えば何で俺は見えるんだ?プレイヤーだからだろうか?それとも知らない内に条件を満たしてたりするのかね。
「ん?その剣は……ふふ、なるほどね。あんな所まで飛ばされていたのかい。そりゃ探しても見つからない訳さね」
「フォル婆、この剣について何か知ってるのか?」
「ああ。古い友人の持ち物だったのさ。災厄との戦いでなくしてしまったと悔しがっていたっけねぇ」
「ふーん?ならそっちに返したほうがいいのかな……」
「気にすることないよ。もう何年も昔に逝っちまったからねぇ。そうそう、孫娘の方はよくここに遊びに来るから見せてやりな」
「あー、じゃあ今すぐレーレイ様に返すのはまずいか?」
「おや?ライ坊が使うんじゃないのかい?」
「それも考えなかった訳じゃないけど、本人が帰りたがってるからさ」
そう。レアアイテムっぽいし、いつか改造した戦神の剣・レプリカを振り回す時の為にも剣技スキルの習得までメイン武器として使ってみようかと思いもした。でもツッコミで疲れそうだからやめておいた。ティルナートも帰る気満々だしな!
「ふむ、その言いぐさだと剣に宿された物も見えているみたいだね?なら資質は十分あるだろうに、惜しいもんさね」
「これくらい自分で作れるようになる予定だからいいんだよ」
フォル婆にヒラヒラと手を振って俺は像のある部屋まで移動することにした。だからこの後、フォル婆が呟いた言葉を聞き逃してしまったのだ。
「仮にも神が作り出した物を作れるように、ねぇ。くふふ……それならもっとメニューをハードに作り替えてもいいわよね?これまでにない弟子になりそうだわ!早速タルメル達にも教えてあげなきゃ……って、いけないいけない。今の私はお婆ちゃんだった。言葉使いは直さないといけないねぇ?クックック……」
えーっと?レーレイ様の像は……これだっけな。
「何してるんですライリーフ?それはレーレイ様の双子のお兄様である戯神レーレン様ですよ?」
「……戯と技の音が同じなのも相まって紛らわしいな」
「遊び道具を持ってるのがレーレン様。本と鍛冶道具を持ってるのがレーレイ様って覚えるといいですよ。もしくは眼鏡で見分けてください」
「眼鏡がレーレイ様だな。覚えたぜ。んじゃ改めて、ピンポンパンポーン。レーレイ様、レーレイ様。迷子のお知らせです。居留守使ってないで出て来なさい。どうせ暇してんだろ?ネタは神父がゲロってるんだぜ?」
《誰が迷子か!ってわたしがじゃなくてわたしにか。ん?でもわたしに子供なんていないし……君はいったい何をつれて来たのさ?》
「レーレイ様!私、私です!」
《おー、てぃっぷーじゃんか。久しぶりー。ずいぶん緩い感じに育ったんだね。しかも壊れかけとかびっくりだよ。シチューはちゃんと出せる?》
てぃっぷー?あぁ、プロトの部分まで入れて略したのね。てかシチューって剣の能力だったのか……。何故そんな機能付けたし。
「んじゃ奉納するんでさっさと受け取ってくれ。俺は開拓に戻らなきゃならないしな」
《えー?シチューは食べたいけど修理するの面倒くさ……んん!もといわたしの手を1度でも離れた物は受け取らない主義なんだよね。常に新作とか作ってるし》
「そ、そんなぁ……」
《ごめんねてぃっぷー。でもそこのプレイヤーが直してくれれば問題ないでしょ?……ん?よく見れば君、インテリアでグーヌート倒すとか言ってた子じゃんか!どう?改造は順調かい?》
「覚えてたのか。まだ素材集めの段階だからなんとも言えないな。とりあえず太古の龍骨片をベースに強化する予定だよ」
《うげっ、また殺意高い物をピンポイントで拾ったもんだね。アイツかなりしつこかったし、それを使うならワンチャンあるかもね》
おお、まさかの神様から行けるんじゃね?発言が飛び出したぞ!ふふ、待ってろよグーヌート。お前がインテリアに屈する日は近いぞ?
《おっ?しかも都合よく条件クリアしてるじゃんか。好都合だね。これで合法的に修理を押し付けられる!じゃ、クエスト頑張ってね。バイバーイ》
「クックック……ん?今なんて?」
ピコン!
《シークレットクエスト・技神の試練》
報酬
称号【技神の試練を越えし者】 シークレットジョブ【技神の神徒】 レーレイの万能工具
達成条件
ティルナート・プロトの修理または改造
※※※注意!※※※
このクエストは破棄できません
クエストがクリアされるまで全ての経験値は技神レーレイに奉納されます
クエストがクリアされるまでパーティを組むことはできません
またなのか!?でも割りと余裕じゃん?とか思ってる俺がいたりする。モンスター討伐と違って誰かに先を越される心配もないしな。
「レーレイ様……酷いです。こんな美少女を男性の手で弄くり回させるなんて!」
「お前マジで言い方気を付けろよな?誰が剣に欲情するかっての!」
「えぇ!?でも穴ありますよ?男性は穴があれば見境なしだとマスターが言ってましたし!」
「くっそ……フォル婆の友人め、剣にいらん知識ばかり植え付けやがって!」
生きてたら顔面にドロップキックを食らわせてやりたかった所だが、亡くなってるなら仕方ない。お孫さんにクレーム入れるくらいで勘弁してやるか。
ティルナート・プロト
それはレーレイさんがお腹を空かせながら作った為か、使用者の魔力を聖なる力に、聖なる力をシチューに変換することができる謎装備としての側面もあわせ持つ。
食べ物が出てくる唯一無二の武器。
おまけ
5柱の神様紹介
・戦神グーヌート
剣と槍を手に持ったいかにもな感じの男神。
とても暑苦しい。
像の位置は左端。
加護の効果は戦闘経験値上昇
※世界樹の果実はそんなに好きじゃない。
・技神レーレイ
双子の知的ロリ眼鏡な方。
働くのが面倒くさいので色々なアイテムを作っている。
像の位置は右から2番目。
加護の効果はアイテム作成時の成功率上昇。
・戯神レーレン
双子の活発ショタな方。
働くのが面倒くさいので常に新たな遊びを考えている。
像の位置は右端。
加護の効果はクエストクリア時の報酬にランダム要素が追加される。
・法神コルナーデ
鋭い目をした老成の男神。
魔導師のような姿をしている。
像の位置は左から2番目。
加護の効果は魔法使用時の消費MP軽減。
・地神ウェネア
アイシャさんに迫る胸部装甲を持った女神。
男性信者の数No.1の実績を誇る。
像の位置は真ん中。
加護の効果は採取ポイントのリポップ時間短縮。
加護は1日に1度、神様の像にお祈りすると効果を得られる。
重ね掛け、上書きは不可能で、毎日深夜0時にリセットされる。
主人公は知らないがゲームの基礎知識の1つ。
このシステムがあるのでそのうち別の誰かもシークレットクエストを引き当てる可能性は高い。
シークレットクエストの発生条件と達成難易度は以下の通り。
地神≧戦神>法神>>技神>>>戯神
獣神、龍神、魔神等々他にも沢山の神様がいたりする。