心霊体験?
短めです
撮影会が終わった後、ライト達は去っていった。リブレスの先にある王都を目指すことにしたらしい。王都にはでっかい闘技場があって毎週大会が開かれてるんだってさ。
ピコーン!
《メッセージを受信しました》
《ふふふ、人間よ。ついに我がダンジョンは進化を遂げたのだ。何時なりとも挑んでくるがいい。その時こそ、我がダンジョンの真の恐ろしさを知るのです。じゃなくて、知るのだ! byダンジョンマスター》
……この子も間が悪いな。もう少し早く完成していればライト達が遊びに行ってくれたろうに。これ、メールとは違うみたいだけど返信って出来るのか?おっ?いけるっぽいな。
「あー、あー。これ、ちゃんと録れてる?……よし、録れてるっぽいな。すまんが暫くクエストで手が離せない。遊びに行くのはだいぶ先になると思うから、もっとダンジョンを進化させて待っててくれ。以上!」
メッセージはメールと違って音声入力式だから威厳が薄れるミスまで垂れ流されてしまうのか。録り直そうとか思わないもんなのかね?
更に3時間程作業を続けたので、辺りはもう真っ暗だ。あー、疲れた。肉体的にじゃなく精神的にな。まだ荒れ地エリアの10分の1程度しか終わっていない。いや、開始時点で予想していたより遥かに早いスピードで作業が進んではいるんだよ?やだ、ジョブの補正ってステキ!って思うくらいには捗ってる。でもな、ちょっとでも根っこが残ってると千年草が生えてくるんだよ……。
スパイスリーフとかリャパリャパだったら利用価値があるから我慢も出来る。けどこいつは生命力がパないだけの雑草だ。食えないし薬にもならない。少し意味深なフレーバーテキストを信じて研究を進めてみた結果、本当にただの雑草でしかないと分かった時の脱力感たるやないぜ……。
「ふわぁーぁ……ふぅ、単純作業は眠くなるな」
「ではお夜食でもいかがですか?出来立てのシチューですよ」
「お、サンキュー。いやー空腹度かなり減ってたから助かる……って誰だ!?」
いったいいつからいたんだこの人?探知に一切引っ掛からなかったぞ。ん?なんか向こう側が見えちゃってませんこと?
「町の者です。さぁ、遠慮せず召し上がって下さいませ」
「あの、こんなこと言いたくないんだけどさ。お姉さんなんか透けてない?」
「ホホホ、気のせいですわ。ささ、冷めないうちにどうぞ」
「いやいや、絶対足無いよね!?ねぇ!」
「細かい人ですね……昔から足なぞ飾りと言うではありませんか?」
「人間はロボットじゃねぇよ!」
なんなんだこの幽霊は?ただでさえ面倒なクエストの途中なのだ。これ以上厄介事が追加されたりしないよな?
「やれやれ、バレなければそれが一番でしたが仕方ありませんね。実は私、幽霊なんです!」
「まぁ、見たまんまっすもんね」
「むぅ。……実は!私!幽霊なんです!!」
「いや、一回聞けば解るって」
「ゆ・う・れ・い・な・ん・で・すぅ!!」
「……あ~、なるほどな。ん"ん……な、なんだってぇ!?」
「ありがとうございます。……貴方に接触したのは、どうしても頼みたいことがあったからなのです」
「頼みたいこと?」
「はい。この荒れ地の何処かにある私の遺骨を探し出し、正式に墓地へと埋葬してほしいのです」
「うへぇ……深く埋まってたりしたら絶対見つからないぞそれ」
そもそもこの幽霊自体が俺の探知に引っ掛からなかったのだ。その本体である遺骨なんて探せるのか?無理っぽいなぁ。
「ハァ……どのみちここら一帯を整備する訳だしな。一応探してはみるけど期待すんなよ?」
「ええ。それだけでも十分ですわ」
「所で、そのシチューは何のために持ってきたんだ?」
「あぁ、これですか?先に報酬を渡して断れなくしてしまおうと思いまして。この方法なら確実に見つかるまで探してくれるでしょう?」
「よし、今すぐ掲示板でお祓いが出来るプレイヤーを探そう。こんな腹黒い奴に付き合ってやる義理はない!」
「そ、そんなぁ!私はちゃんと天へと導かれたいのです!悪霊として消されるなんて嫌ー!」
残念ながらそんなプレイヤーはいなかったので、非常に面倒だが俺が探すことになってしまった。
今度は幽霊とエンカウントした主人公。
死神さんは結構な頻度で掲示板を覗いている筈なのですが、痛恨のニアミス。