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雛鳥の巣立ち

今回はギャグ要素控えめとなっています。

そして少しだけ長めです。

 ログイン早々叩きつけられた内容に動揺していると雛達が光はじめた。な、なんだ?まさかいっぺんに進化するんじゃないだろうな!?


(ほう?思ったより早い巣立ちになったな)

「お、マジで?」

(うむ。この光が合図なのだ。共に旅立ちを見送ってくれ)

「なんだかあっという間だったな……あ、鳥ガーハッピーも世に放たれるのか。ヤバくね?」

(旦那、あっしらは無闇矢鱈と破壊を撒き散らすような趣味は持ち合わせちゃいやせんぜ?ま、敵対しようって輩には容赦しやせんがね)

「そうなのか?名前的にヒャッハーしそうな気がしたんだけど」

(連射出来るようになったのはオマケなんですがねー。あっしらとしては、スナイパー要素を名前に反映して欲しかった所でサァ。それじゃ旦那、あっしらは行きますぜ?縁があったらまた会いやしょう)


 そう言って彼らは巣立っていった。……いやーよかった。鳥ガーハッピーは名前に反してまともな性格をしているらしい。しかし広範囲を殲滅できる力を備えていることに変わりはない。間違って攻撃なんてした日にはミンチ確定だろう。本当、恐ろしいですわー。他のプレイヤーが出会ってしまわないよう祈っておこう。


「あれ?お前らはなんで光ってないんだ?」


 格闘グループの雛達だけ光っていない。こいつらだけ巣立ちの時期がずれてしまったのだろうか?


(師父、ボクらはちょっと格闘に特化し過ぎたみたいで……その、あんまり長く飛べなくなっちゃったんです)

(それ故この島から出られなくなってしまったのです)

(より強くなる為に、この島の住人達程適した相手はいないので後悔はしていませんけどね。それでは師父、そろそろ我らも修行に向かうとします。お元気で!)


 格闘グループも巣から滑空するように島の各地へ散っていった。それで名前が煉獄の武王鳥になっていたのか。でもそれって鳥さん的にはいいのだろうか?気になったのでチラリと見てみる。


(ん?儂は構わんよ。どのみち巣から離れて生活するのだし、簡単に里帰りできる子がいてもいいだろう)

「そんなもんか」

(うむ。実を言うとな、今までの子供達は皆進化した際の環境に適応してしまって帰ってこれないのだ。そして儂が親だと覚えておる子も少ない)


 光を纏い巣立っていく雛達を見つめながら、少し寂しそうに鳥さんは語りだした。


(儂の影響下から抜け出した子供達は、多様性を手にする代わりに守りの特性を無くしてしまうのだ。きっとその時に一緒にこの島での思い出も無くしてしまうのだろう……。散歩中に見かけることもあるのだが、近づくと怯えられてしまってな。クックック、あれは中々に堪えるものだぞ?)

「……いや笑えねぇって」

(ふむ?そうか?……まぁ、そう言う訳だ。お前も次に儂の子供達と出会う際には忘れられているだろう。だから人間、もし戦うことになったとしても気を遣う必要はない。生存の為に、持てる力の全てで応えてやれ)

「……ああ」

(そんな顔をするな。弱体化してしまったとしても儂の子供達だぞ?簡単に倒される訳なかろう。今のはお前がすぐに倒されてしまわぬようにと思ってのアドバイスだ。逃げることくらいは出来ようて)

「そっち!?紛らわしい言い回しすんなよ!」

(はっはっは!そう怒るな。少し湿っぽくなってしまったのでな、空気を変えたまでよ。お前の影響で進化を遂げた子供達は記憶を失うことはないだろうから、気が向いたらまた遊んでやってくれ)

「都合よく会えるかわかんないぞ?」

(なに、世界は広いようで案外狭いものだ。きっとすぐにでも再会できよう)

「そっか。じゃあその時を楽しみに待っておくよ」


 残る雛達も順番に飛び立って行く。改めて思うけど、見た目ひよこみたいなのによく飛べるな……。


(師匠!)

「お。お前らはまだ残ってたのか」

(当然です。師匠に挨拶もなく巣立つことなんてできません!)

(お料理の楽しさを教えてくれてありがとー)

(ぼくらは皆で旅をしながら、お腹をすかせた人に料理を作ってあげるんです)

「おお!いいんじゃないか?でもモンスター相手じゃないのか?」

(普通のモンスターは、味なんて二の次で量を食べられれば満足ですからね……)

「はは!そりゃそうか。ならお前らは人の言葉を覚えた方がいいな。俺みたいにモンスターと話せる人間は珍しいだろうし、話が通じればいつかは自分達の店だって持てるかもしれないぞ?」

(ぼくらのお店……)

(それすっごくいい!)

(頑張って人の言葉を覚えます!)

(ふむ、子供達よ。それならば島から南西に進んで獣人の国を目指すといい。あそこにはモンスターから亜人種へと進化した者達もいるから、言葉くらい教えてくれるだろう)

(ほんと!?とうさまありがとう!)

(お店が出来たら招待するね!)

(うむうむ。楽しみにしているぞ)

「よかったな鳥さん。けどお土産に伝説級のモンスターを持って行くのはやめておけよ?絶対パニックになるから」

(む?そうか、駄目なのか……)





 こうして全ての雛が巣立ち、あれだけ賑やかだった巣に残っているのは俺と鳥さんだけだ。ここもずいぶん広く感じるなぁ。


「さて、じゃあ俺もそろそろ帰らせてくれ」

(うむ、世話をかけたな人間。約束通り儂のコレクションの中から好きなものを持っていくといい。……いや、それよりもアレを持たせてやろう)

「ん?なんだよアレって」

(儂の密かな楽しみの一つでな。子供達の巣立ちの後には必ず実っているのだ)

「実る?……おい、それってまさか!」

(そう世界樹の果実だ。これがまた絶品でな!これを食せるからこそ、ここに巣を作ったと言っても過言ではない)

「いいのか?そんなもの貰っちゃっても」

(数は少ないが、何も1つしか実らない訳ではない。遠慮せず持っていけ)


 ふーん?幾つも実るのか。それなら遠慮せず持っていけるな。枝と葉っぱだけでも貴重なのに果実までゲットできるとはラッキーだ。鳥さんのコレクションも気になるところだが、今回は我慢しておこう。なにせ普段から伝説級の食材を食べている鳥さんが絶賛するほどの味だ。これを食さずにいられる筈がない!



アイテム

世界樹の果実 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

特殊な条件が揃った場合にのみ世界樹から収穫できる

神々の晩餐にすら滅多に出てこない程貴重

その味はまさにフルーツの神



 いいね!特に神々すら滅多に食えないってところが素晴らしい!街に戻ったら真っ先に神殿に行ってグーヌートを呼び出し目の前で食ってやろう。さぞ羨ましがるに違いない。レア度はまさかの☆9だが関係ない!やつを苦しめることができるのなら安いもんだぜ!


「鳥さんサンキュー!めっちゃ嬉しいわ!」

(それは良かった。では元いた場所まで送ろう。背中に乗るがいい)

「あれ?足で掴むんじゃないのか?」

(戻るのに逃げ出される心配をする必要はないからな)

「あぁ、確かに」


 おっと、街に戻る前に装備を変えておかないとな。危ない危ない。この島ではずっと怨嗟の骨鎧を装備してたから忘れる所だった。意気揚々と街に入ってKILLされてはたまったもんじゃないからな。鳥さんの飛行速度だと装備が壊れるかもしれないし初心者装備でいいか。


(準備はいいか?……では行くぞ)


 うっはー!やっぱり滅茶苦茶速いな!振り落とされないように掴まっているだけで精一杯だ。こんどは綺麗な景色とかゆったり見れるかも、なんて思った俺がバカだった!うひーぃ!?おい、何故唐突にバレルロールなんてしたんだ鳥さん!?さては俺が必死に堪えているのを見て楽しんでやがるんだな!ぬわぁーーーーー!落ちるぅ!?







(はっはっは!どうだ?空の旅は満喫できたか?)

「吐くかと思ったぞ……うっぷ」


 鳥さんのアクロバットな飛行に耐えること約二時間、俺は漸く人里に帰ってこれた。


(あまり低く飛ぶ訳にもいかんのだが、本当にこんな高さでいいのか?)

「あぁ、俺も少しは跳べるから平気だよ」

(ふむ、そうか。……そうだ、最後に1つ忠告だ。お前が身に付けていたあの骨の鎧。あれはあまり使わぬ方がいいだろう)

「ん?そうか?まぁVITが666も下がるしな。言われなくても人前では使えないから安心しろ」

(ならばいい。では達者でな、小さき友よ。再び巡り会うその時まで暫しの別れだ)

「おう。鳥さんも元気でな」


 俺は天翔天駆を起動し、ゆっくりと降下しながら飛び去っていく鳥さんを見送った。おっと、このペースだとMPが足りないか。怨嗟の骨鎧のMP自動回復ってかなり便利だったんだな。しかたない、暫く自由落下を楽しもう。

 地上が近づいてきたので再び天翔天駆を起動したのだが、あれ?おかしいな。人里は人里だけど街じゃないぞ?町、いや村か?少なくともアドベントではなさそうだな。ん~でもあの山には見覚えあるし、街の近くまでこれただけよしとするか。どれどれ?マップ名は……始まりの町・ファース、ね。とりあえず今日はここで宿をとってログアウトだな。





こうして俺はβ時代のスタート地点へとたどり着いたのだった。

漸く人里に戻ってきた主人公。

ふふふ、漸く作者が連載開始当初予定していたストーリーに戻れそうです。

このまま主人公がファースに留まってくれればヒロイン(仮)だって出せるんだ!



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