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雛鳥達の成長 その1

 ゲームにログインした俺を迎えたのは昨日処理した筈の肉の山だった。しかも2つに増えてやがる!


(おお、やっと起きたか。早速だが料理を作ってくれ)

「勘弁してくれよ……。それに、調味料なんて昨日の時点で使い果たしてるぞ?」

(焼いてくれればそれでいい。生のまま食べるよりも旨かったからな)

「なら、あそこの燃えてる山にでも食材投げ込んで焼けばいいだろ?」

(うむ、儂もそう思って試してみたのだ。だが真っ黒になってしまってな。苦くて食べられたものではなかった……)


 おお、自分で料理しようとしてたのか。で、盛大に焦がして諦めたと。しかたない。羽根を山ほど貰ったことだし、何より原因は俺が舌を肥えさせてしまったことだ。かなりキツイけどやってやろう。ハァ、せめてジョブが変更できれば経験値は貰えた筈なのに……。






「ぜぇ……ぜぇ……。ぬおぁ~やっと半分か!」


 時間にして約二時間程かかった。昨日と違って途中追加がないのがありがたい。あとすっかり忘れてたけどスキルに調理術あったんだな。これのレベルが上がったおかげで短い時間で火が通るようになったのは助かった。

 あと大量生産なるスキルも生えていたのだが、同じ量の素材で複数個アイテムを生産することができるようになるスキルだったので効率は変わらなかった。


「ん?どうしたお前ら。まだ追加の肉は焼けてないぞ?」


 ふと顔を上げると、10羽の雛が俺のことをじっと見つめていた。行儀よく並んで見つめてくるその瞳はどこか真剣だ。


「もしかして、お前らもやってみたいのか?」

コクコク!!


 おお、当たってた。ここにきて手伝いを申し出てくれるとはありがたい。どれくらいできるかは分からないが、一人でやるより早く片付けることができそうだ。鳥さんのように肉を焦がしてしまったとしても大量生産を使えばカバーできる。


「よし!じゃあまずは下拵えからやっていくぞ!」

「ピュイー!!」

「って言ってもその手じゃできる事は少ないか。そうだ!おもいっきり豪快な料理にしよう!」

「ピュイー?」

「ちょっと待っててくれ。おーい鳥さーん!ここって床で直に火つけても燃え広がったりしないか?」

(ふむ、火を大きくして一気に作ろうと言うのだな?この巣は世界樹の枝を編み込んで作ってある。心配せずとも生半可な炎では焦げ跡すらつかんよ。でなければ当の昔に枯れておる)

「へー。この木ってやっぱり世界樹だったのか」


 まぁ今はどうでもいいや。キャンプファイアしちゃっても良いってことが重要だ。ヒャッハー!特大の漫画肉作っちゃうぜ!

 漫画肉に使う肉と言えば?もちろんマンモスに決まってる。現実ではなかなか手に入らない貴重な食材なのですが、はいこちら!鳥さんはなんと3頭も仕留めてきていたようです!すごいですねー。ヤベー名前した食材達の中でも圧巻の大きさです。

 さて、本日はこの3頭を使って漫画肉を作っていきたいのですが……大きすぎて一人で調理することは不可能です。で、す、が!なんと、助っ人に鳥さんの子供達が10羽もきてくれましたー!わー!

 では5羽ずつに別れてこのドデカい足肉を火に掛け、ゆっくりと回転させましょう。こうすることによって、均等に熱が加わりジューシーな仕上がりになるんですねー。スキルの補正があるので短時間で仕上げることができますが、実際にご家庭で作る場合は長時間の作業が予想されるので有給を1カ月ばかしとっておくことをおすすめします。これでもマンモスが捕まるかは微妙な所なんですけどねー?

 はい!そして完成したものがこちらです。どうですかこの重量感?キャンプカー並の大きさですよ?……いややべーなこれ。出かすぎて漫画肉に見えねぇや。


「ピュイ!ピュルー!」

「ん?鳥さんに食わせたいのか?」

「ピュイピュイ」

「おう、持ってけ持ってけ。お前達の作った初めての料理だもんな。きっと喜んで食ってくれるぞ」

「ピュルルー!」


 


(おお、どうしたのだ子供達よ?)

「ピュイ……ピュイー!」

(何!?それを儂にくれるのか!ハッハッハ!子供達からの贈り物なぞ初めてだぞ?ふふ、存外に嬉しいものなのだな……ありがとう。大切に食べさせてもらおう)

「ピュルル~」


 oh……なんてハートフルなのかしら。邪魔にならないように俺はログアウトしてしまおう。良かったな、鳥さん。






 翌日、ログインすると肉の山が4つに増えていた。


「何でだ!?」

(安心しろ、お前に料理してもらう訳ではない)

「え?そうなのか?」

(うむ。子供達が作ってくれるのでな。これがまたたまらんほど旨いのだ!)

「はいはい、親バカ乙。初めてプレゼント貰ったからってはしゃぎすぎだろ」

(いやいや、お前が寝ている間にあの子達も随分と腕を上げたのだ。実際に食してみればわかる筈だ。ほれ)


 そう言って鳥さんが俺に差し出してきたものはステーキだった。デカいな。なんの肉だろ?



アイテム

フレイムドラゴンのテールステーキ ☆☆☆☆☆

空腹度50%回復 30分間STR上昇・中

フレイムドラゴンの尻尾を豪快に焼き上げたステーキ

味付けは一切されていないが、肉本来の力強い味わいが楽しめる



 あいつら進歩しすぎだろ!?だがこれは食材のレア度が高いから効果までついただけなのでは?……しかしアイテムがゴミに変わってないあたり、きちんと調理ができている証拠なのだろうか?


(師匠、見て!)

(これ、作った!)

(おいしい?おいしい?)

「お!喋れるようになったのか。……なんか君ら縮んでね?」


 てててー!と走りよってきた子供達は明らかに周りの雛より小さくなっていた。2メートル程あった身長が、今では俺の胸くらいまでしかない。大きさから醸し出される威圧感がなくなって一気に可愛らしくなったもんだ。


(進化した!調理、火の極意、覚えた!)

(ぼくも!)

(わたしも!)

「マジかよ!?」


 師匠とか呼ばれたけど、もう追い抜かれた感があるぞ?火の極意とか絶対凄いやつじゃん。俺の大量生産がショボく見えるぞおい!

 どうやら料理をするために背が低くなり、翼も手のように動かせるようになったみたいだ。俺がログアウトしてからゲーム内時間で3日間ひたすら料理を作っていたんだってさ。皆が自分達の作ったご飯を美味しそうに食べてくれるのが嬉しくてしかたないらしい。


(ふむ、本来は島から出て暫くしてから進化するのだがな。珍しいこともあるものだ)

「鳥さんも驚いてたのか」

(長いこと生きてきて初めて目にする進化の形だからな。これは他の子供達にも何か面白い変化が起きるやもしれぬ。ふはは!やはりお前を拾ってきて良かったぞ)

「あっそ。てか肉ばっかりで飽きないか?近くに海もあるんだし魚介類も獲ってきたらどうだ?」

(む?海の者達を食すのか?それは変わっているな)

「そうか?魚捕まえる鳥なんていくらでもいる筈だぞ?」

(ふむ、そうだったのか……。では早速獲ってくるとしよう。よければ子供達に調理の仕方を教えてやってくれ)

「それくらい構わないさ。俺はここだと出来ることの方が少ないしな」

(ふっ、そうだったな。どれ、せっかくだし大物でも狙うとするか)

「おいバカやめろ!普通でいいんだよ普通で!」


 鳥さんは気軽にドラゴンを狩ってくるような奴だ。そんな奴をやる気にさせてはいけない!深き者とか持ってこられたら困るからな。


(そうか?では軽く運動してくるとしよう)

(((いってらっしゃーい!)))

(うむ。いってきます、だ)

「ふぅ、これで世界の均衡は守られた」









が、帰って来た鳥さんの足には伝説級の生物が多数吊るされていた。

鳥さんはリヴァイアサンもクラーケンも軽い運動で倒せるらしい。

おまけ

鳥さんの持ってきた伝説級の食材達


グリフォン

オルトロス

ケルベロス

ミノタウロス

クラーケン

ヤマタノオロチ

バハムート

リヴァイアサン

ニーズヘッグ

ヨルムンガンド


なお鳥さんが食べる為に獲ってきた為、全て食材としてしか使用できない。

唯一の救いはゲームだから時間が経てば皆リポップするところ。ただしまた狩られる運命にある。

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― 新着の感想 ―
[一言] 軽い運動で伝説級だとしたら… その大物って何狩ろうとしてたんだろう… ショゴスとかクトゥルフあたりじゃないだろうな… \(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!
[良い点] 超料理人とか伝説級料理人とか生えそう。 [一言] 感想返しは嬉しいもの。 だが、重要情報を感想返しに書かれたりすると気付かない恐れ。
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