表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/285

森の巨狼と魔法少女

…ォ………ン

………ォォン!

ズドォォォォォン!!


 リブレスまでの回り道を半分ほど進んだ頃だろうか。森の奥から激しい戦闘音が響いてきた。ずいぶんと派手な戦い方する人もいるもんだな。


「うっはー!スゲー音だな。魔法かこれ?」

「僕の気のせいかな?少しずつこっちに近づいて来てる気がするんだけど」


 アルバスの言う通り、音はどんどん大きくなっている。このままだと俺達が戦闘に巻き込まれる可能性がかなり高い。


「どうするライト。走って逃げるか?」

「んー、俺はちょっと覗き見したかったりするんだけどなー」

「安心しなよライリーフ。巻き込まれても僕がついているからね!どんなモンスターだって一刀両断さ!」

「くっ2対1か……。チラッと見たら先を急ぐからな!」


 またしても多数決に敗北してしまった。こいつらイレギュラー好きすぎるだろ。あれか?自分で切り抜けることが出来るって自信の表れだったりするのか?



ズゴオォォォォォォン!!!!



「わっひゃあ!?あっぶねーなぁ、おニューの装備がいきなり壊れる所だったぞ!」

「本当にすごい威力だね。一撃の火力だけなら僕より上だと思うな」

「うわぁこれはやべーな。ライの言う通り逃げれば良かったかも」


考え事しながら歩いてたせいで吹き飛んできた大木に当たりかけた。おいおい、これでまだ戦闘中なのか?今ので倒せないモンスターって序盤に出て来ちゃいかんでしょ!


 魔法によって更地に変えられたとおぼしき広場では、魔法少女風の衣装に身を包んだ背の高い女性と巨大な狼の群れが戦闘を繰り広げていた。なるほど。モンスターは1体じゃなかったわけか。しかし数が多いな。ひー、ふー、みー……ざっと数えただけでも40体近くいるぞ?継続的に聞こえていた戦闘音から、おそらくこの倍以上の群れと戦っていたんじゃないか?


「フェア!このままじゃ魔力が持たないわ!」


 お?どうやらMP切れでピンチみたいだな。あれだけ派手に魔法をぶっぱなしていた事からINT特化のビルドだと思われる。MPが切れたら死に戻りは確実か……。


「ライト、助けるぞ」

「お?来るの渋ってた割にはやる気だな!」

「さすがにこの状況スルーできるほど腐ってねーよ」

「ライリーフ、熱でもあるのか?とても君の言動とは思えない」

「アルバス……奇襲の件は水に流そうと思ったが取り止めだ。後で泣かす!」

「なんで!?」

「おい、うだうだ言ってないでさっさと助けようぜ!」




「ここまでなの?……いいえ、魔法少女はどんな時でも諦めたりしない。私が魔法少女である限り、希望は絶対に消えないわ!」

「おーい!助太刀するぜ!」

「えっライリーフくん!?私のピンチに駆けつけてくれるなんて……とっても嬉しいわ!」


 パァ!と輝くようなとびきりの笑顔で迎えられた。おおぅ、眩しいぜ。そして俺の知り合いだったみたいだぞ?でもこんな美人さんと話した覚えないんだがなぁ……。まぁいい、今は戦いに集中しよう。


「そら犬共!遊び相手の交代だ!……てなわけでアルバス君、蹴散らしてくれたまえ」

「自分で戦わないのか!?」

「無理!俺はヘイト集めることしか出来ない!」

「ダンジョンでは、ふん!戦えてたじゃないか!?」

「あれはレアケースだから忘れろ!」

「ヒートスラッシュ!ってうわ!?固いなこいつら!お姉さん、とりあえず俺らのパーティに入ってくれ!」


 ライトの攻撃で弾かれるのか!?いや、弾かれても属性ダメージは入っている筈。あの美人さんがMP回復する時間は稼げるか。ヒーラー不在だからあんまり持久戦はしたくないし……怨嗟の骨鎧使うしかないよな。スキルレベル低いからいまいち信用ならないが、探知できる範囲に人らしき反応はないし使ってしまおう!


「変身!……クハハハハ!獣風情がこの我に敵う筈が無ァい!!」

「うわ!?いきなり装備変えるなよライ!明るくても怖いんだぞそれ!」

「これは!?なんて禍々しい波動なの……」

「ライリーフ!狼の前で骨だらけは不味いんじゃないか!?」


 あっ……


(ホネ、オヤツ、ウマソウ)

(デカイホネ、デカイホネ)

(ハラゴシラエ、タイセツ、クエルトキニ、クウ!)

「「「「「ウォーーーーーン!!!!!」」」」」

(エンチャント・AGI)

「ワンちゃん大興奮だと!?っておいそこ!地味にバフまで掛けてんじゃねぇ!ぬぉーーーァ!?」


 思ってたのと違うけど結果オーライだ。狼のヘイト?を俺に集中させることに成功した。後は死ぬ気で鬼ごっこするだけだ!


「うぉーーーー!!!」

「グルルル……ヴァウ!」

「なんのォ!」

「「グルァウ!」」

「まだまだぁ!」

「ヴォエ~」

「歌下手か!はっ!?しまった!」

(ホネ、ウマイ)

(オヤツ、サイコウ)

(クエルトキニ、クウ!)

(素晴らしい……なんと芳醇な味わいだろうか。骨単体ではこの味にはならない。これは……そうかスライムか!スライムの風味がアクセントになって骨の旨味を引き立てているんだ!!)


 突っ込みの隙を突かれてガブガブされてしまった。全身に集られて身動きがとれない。てか最後の一匹だけ喋り方流暢過ぎんだろ!グルメ漫画の住人かっての!


「ライ!大丈夫か!?今助けてやるからな!」

「待てライト、ストップ!大丈夫だから攻撃するなよ?防具の性能もあってか兎達のサンドバッグしてた時より楽だからさ。それよりあのお姉さんのMP回復優先してくれ!」


 実際全然痛くない。初心者シリーズと比べると、合計DEFが10倍以上あるってのが理由の1つではある。だがこいつらが骨に夢中になっているのが原因だろう。普通の防具なら耐久値の限界が来てぶっ壊れる所を怨嗟の骨鎧は自動で再生してくれる。そもそも耐久値がないしな。始めにグルメな狼が絶賛してくれた影響なのか、尻尾が大人気で他の装備を食べないでくれるのもありがたい。千切られては生え、千切られては生え。わんこそばならぬわんこ尻尾状態だ。いやはや、無駄に7つも取り付けてやった甲斐があるってもんだぜ。


「わかった!魔法で一掃してもらうんだな!」

「そんなのダメよ!助けに来てくれた仲間を見殺しになんて出来ないわ!」


 ん?パーティだと攻撃の誤爆は衝撃だけでダメージないのをご存知ない感じかな。それともロールプレイ?後者だとしたら合わせてあげねばなるまい。

……よし、遊んじゃおう!


「貴女の旅はここで終わりじゃない筈だ。背負った使命を果たすその時まで、歩みを止めることは許されない。今この時を俺の犠牲で乗り切ることが出来るなら……それでいいじゃないか?」

「そんなの、そんなのってないわ……。魔法少女は皆を助けられる筈だもの!」

「お姉さん、ライの覚悟を無駄にしないでやってくれ……。くっ、こいつは鎧の呪いでもう長くないんだよ……!せめてモンスターになっちまう前に、人として逝かせてやってくれ……」

「そんな!?」


 お、さすがライト!いい演出だぜ。これならお姉さんもサクッと魔法を撃てるだろう。アルバスの奴は……またポカーンとしてるし。2回目なんだしもうちょい頑張ってくれよな?


「魔法少女は皆を助けられる筈、その通りさ。なんせ俺は人として死ぬことが出来るんだ。それが何よりの救いだぜ」

「ライリーフくん……」

「やってくれ!これ以上こいつらを抑えておけない!」

(ぴゃー!永久に骨が食べられるなんて天国ですか!?一生このまま過ごしたいです!んまーい!)

「お姉さん!早く魔法を!」

「……本当に、こうするしかないのね?」

「あぁ」

「わかったわ。……魔法少女はどんな時でも笑顔でなきゃいけないの。それがこんなに辛いことだなんて思わなかったわ」

「ハハ、なら一歩前進だ。きっと今日の出来事を笑って話せる日が来るさ」

「いや、これゲームだよね……?」

「はっ!そう言えばそうだったわ!」


 アルバス!お前本当に空気読めよな?せめて邪魔にならないように喋らないでいることもできんのか!あー不完全燃焼だ。やっぱりリブレスに着いたらお仕置きせねばなるまい。


「えーと、パーティ組んでればダメージないんで一思いにやっちゃってくだせぇ」

「ライごとドカーンとぶっ飛ばしちゃってお姉さん」

「わ、わかったわ。そう言うことなら遠慮なく――フェア、残存魔力最大展開!セット、妖精王の極光剣トゥルー・フェアルディン。いくよ、オーバーリリース!!!!」


カッ!!!!






瞬間、世界を光が塗り潰した

謎の魔法少女、いったい何者なんだ!?


おまけ

ジョブ解説


・魔法少女

聖霊、妖精といった種族と契約することで取得可能な特殊ジョブ。野郎でもババアでも関係無く魔法少女になれる。誰がなんと言おうが魔法少女なのだ。

死に戻りをしてしまうと契約した聖霊、妖精が死んでしまってジョブが剥奪される。もう一度魔法少女になるためにはアホみたいな難易度のチェーンクエストをソロで攻略する必要がある。

魔法少女に変身中、契約した聖霊、妖精のステータスの内の一つが自分のステータスに加算される。どれが加算されるかは契約した聖霊、妖精によって異なる。謎の魔法少女さんはAGIが増えていた模様。

バフも無く、回復アイテムも底をつき、HPもMPも残り1割を切っている。そんな状況でも諦めずに戦うことで、ジョブスキル【魔力覚醒】が発動する。

効果としては戦闘中一度だけ契約した聖霊、妖精の属性に対応した禁術を発動できる。ぶっちゃけ謎の魔法少女さんも使えるので主人公達が助けなくてもなんとかなっていたかもしれない。

威力は絶大だが、前記した通り死に戻りのリスクが半端ないので狙ってやるものじゃない。奥の手中の奥の手


・アイドル

バード系のジョブ。意外と簡単になれる。

その手の願望を持ったことのある女性プレイヤーは大抵取得していたりする。

しかし中級職、上級職の解放条件を満たせず挫折するケースが多いのだとか。

トップアイドルの道は長く険しいのだ。


・大道芸人

路上パフォーマンスでお捻りを貰うと選択可能になるジョブ。

路上パフォーマンスで経験値が入り、ついでに貰えるお捻りの額も増える。


・マジシャン

魔法使いではない。

スキル手品で10種類の手品を使用すると選択可能。

マジックショーで経験値が入り、手品の成功率が上がる。

手品のネタを割られると一定時間その手品で経験値を稼げなくなるらしい。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 骨装備ヤバいです~~ツボ押されまくり~~~
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ