アルバスVSゴーレム軍団+1
「ライリーフ……お前の戦い方絶対変だよな?」
「お前には言われたくない。トーキングスカル見つける度に攻撃しやがって!お前は良くてもこっちは割りと必死なんだからな!?そりゃネタスキルでも使いこなしてみせるさ!」
「いや、この軍勢なら余裕だと思って……」
「……確かに」
スキルチケットで新たに覚えた手品と達筆。俺は戦いの中でこの2つの活用法を見つけ出した。手品は凄いぞ?手に持った石とゴーレムの核を入れ替えて強制昇天とかできた。成功率がDEXとLUKに依存してるみたいで俺とは相性がいい。他にも色々とできそうだ。しかも手品を使ってる俺自身にも原理は解らないので見破られることもないときたもんだ。ネタが割れたら教えて欲しい。
次に達筆。石と取り替えた核に命令を書き込めた。たぶん他のスキルの効果もあるんだろうけどこと文字を書く行為全般に作用するみたいだ。命令を書き込んだ核を他のゴーレムの核と取り替えてみたら命令権を奪えたので、ゴーレムが出てくる度に戦力は増えている。なんとその数30体。気分はゴーレムマスターだ。でも鍋返してもらったらダンジョンマスターに返すぞ。置場所に困るしな。
サクッとボス部屋まで来てしまった。ここにはマッディウォーターゴーレムがいるのだろうか?総数63体に増えたゴーレム達を引き連れて部屋に入る。ほら、そこ!順番守れって!一気に入るとつっかえるだろうが!
「―――?―――――!?」
「そりゃ驚くよな。でもこっちだって驚いてるんだぞ?なんで再生してやがるんだ、マッディウォーターゴーレム……」
「さすがにデカい。これは一撃では倒せそうにないな」
「アーツ使えばいいじゃんか」
「無理だ。俺はアーツを使えない」
「え、お前もアーツ覚えてないのか?いやぁ奇遇だな俺もなんだ」
「一緒にするな!使えないだけで習得はしてる。称号の効果でアーツを封印する代わりに攻撃力を上げてるんだよ」
「ちっ、脳筋め。クソ雑魚メンタルの癖してなんでそんな大胆なことを」
「う、うるさいな!いいだろ別に……動きをアシストされる感覚が苦手なんだよ」
「あ、それはちょっと分かるわ」
勝手に厨二な技名とか口走るの結構恥ずかしいから止めていただきたいものだ。
「――――――――!」
「仲間を返せ卑怯者め、だと?戦ってる最中に進化するような奴には言われたくないな!」
「―――――?―――――――www」
「あ"ん?またその泥だらけの体綺麗にされたいのか?」
「……あの、君らなんで平然と会話してんの?」
「「?」」
「そんな不思議そうな顔で見ないでくれよ!俺がおかしいみたいじゃないか!」
「―――。―――――?」
「おいおいそんな事言ってやるなって!いくら本当の事だとしても直接言うのは可哀想だろ?」
「お前達が俺を馬鹿にしてるのはよーくわかったよ!」
「擁護してやったのにキレるとは……これだからクソ雑魚メンタル脳筋ソロプレイヤーはいかんのだ」
「――――――――!」
「げっマジかよ!?それはねーわー。それは悪口言われちゃってもしかたないわー」
「くそ!一体何を聞いた!ゴーレムの言葉が分からないから反論できないじゃないか!」
「安心しろアルバス君。俺にも分からん」
「…………」
「…………」
「…………」スチャ…
「へい、無言で武器構えるなよ。敵はあっちだろ?」
「両方斬り伏せれば問題ない!」
「ほほう?このゴーレム軍団を突破できるとでも?」
「その程度の数で俺が止められるとでも?」
「………その豪華な大剣へし折ってやる!」
「……仮面ごと真っ二つにしてやるよ!」
「―――――……」
こうして始まってしまった最強プレイヤーとの醜い争い。状況的に俺が不利だ。囲むように突進させたリトルマッドゴーレムが一気に6体もやられてしまった。大剣を振るうスペースがなければなんとかなるかと思ったのだがSTRのゴリ押しでゴーレムごと持ち上げて攻撃して来やがったのだ!ちっ、ゴーレムで抑えつけた後で気絶させ、その間に鍋を返してもらって先に帰る作戦は無理そうだな。STRに極振りしてる以上そこまでVITは高くないと思いたいが……最強と呼ばれるくらいだしレベルめっちゃ上がってるよなぁ。戦闘系のジョブばかりを上げ続けたのだとしたら平均的なプレイヤー並みのHPは確保されていそうだ。あ、しまった!装備の性能もあるのか!エリアボスをソロで狩れる程度の性能ってぶっちゃけヤバくね?AGIは俺とどっこいどっこいみたいだしボスの攻撃は避けるんじゃなくて受けたってことだろ?それって俺に勝ち目なくね?
「どうした!ゴーレムに頼ってないでお前も攻撃してきたら、どうだッ!」
「あ!また4体も壊しやがって!ペースを考えろペースを!」
「――――……」
くそ、どんどんゴーレム軍団が減っていく!もう半分もやられてしまった。マッディウォーターゴーレムが何か言ってるが気にしない。鍋返して貰いに来たのに目的果たす前に帰れるかっての!考えろ俺。あのクソ雑魚メンタルなアルバスがなんの躊躇いもなく攻撃を続けることができるのは何故だ?決まってる。装備に絶対の自信があるからだ。ボスの攻撃にも耐えられるDEFならここのモンスターにいくら攻撃された所で恐くない。なら脱がせてしまえば勝てるのでは?……って人の装備なんてどうやって剥がせばいいんだよ。それに今は戦闘中だぞ?悠長に着替えさせるような時間はない。マジックショーの早着替えでもなければそんなこと…………。これ、手品で行けんじゃね?なんて考えてる場合じゃねぇ!ゴーレム軍団があと10体まで減らされてるじゃないか!
ピロン!
《アーツ、リスキーチャレンジを覚えた!》
いきなりなんだ!?ってそうか、ゴーレムは俺の支配下にあるけど敵mob扱いだ。パーティを組んでる以上アルバスが倒せば俺にも経験値が入ってくる。レベルが上がってアーツに必要な能力値に届いたか!急いで効果を確認する。
アーツ
リスキーチャレンジ
効果
次に行う行動の効果を上昇させる(成功率が低い程上昇率up)
行動失敗時、HPとMPが減少する
「良いもんゲットしたぜ!お前の望み通り仕掛けてやんよ!」
「えっマジで来るのか!?ゴーレム全滅したら謝ってくると思ったのに!このっ!」
「ふははは!遅い遅ーい!」
「くっゴーレムを盾にして速度を殺したか!」
「リスキーチャレンジ!からの、種も仕掛けも御座いませんってな!」
「は?なんでこのタイミングで手品なんか……ってあれ!?インナー!?なんで!?」
「おっしゃ成功!今だゴーレム共取り押さえろ!」
「うわ!つ、冷たい!ドロドロが気持ち悪い!」
「大人しくしてるんだな、フン!」
「あだっ」
「さすがLUKさんだぜ。一撃で気絶を引き当ててくれるなんて有難い」
作戦成功。失敗しても自傷ダメージで逆境状態になれた辺りマジで素晴らしいアーツだ。さて、アルバスがおねんねしてる間に用事済ませて帰ろっと。
「―――――!」
「戦う気はねーよ。鍋返してってダンジョンマスターに伝えてくれ」
「――――――?」
「挑むのはここが完成してからの予定なんだよ。その時はちゃんと戦うって」
「―――――――w」
「おい、今すぐクリーン掛けてやってもいいんだぞ?ん?」
「……―――――」
まったく、最初から素直に取り次いでくれればいいものを。アルバスの気絶がいつ切れるか分からないから早くして欲しいときに茶番劇なんてしてられないんだよ。
少しするとヒラリと紙が落ちて来た
「おっ、どれとれ?」
『ごめんなさいです。とっても嬉しかったのでつい鍋ごと取ってしまったのです。反省してるのです。でもまだカレーが辛くて食べ終わってないのです……。だから暫く鍋を貸して欲しいのです。勿論その間代わりに使える物をあげるのです!鍋もちゃんと洗って返したいのです。だから待ってほしいのです』
「キャラ違くね?まぁ代わりくれるならいいけどさ」
ヒラリ
『寛大な判断痛み入る。貴殿が再びこのダンジョンを訪れる際に鍋を返還することをダンジョンマスターの名において誓おうぞ!……あ、こら!ホネホネ!ダメなのです!それは私が貰ったカレーなのです!秘密をばらしたホネホネは食べちゃダメなのです!ってしまったのです!魔法を切り忘れていたのです……こ、これではカッコいいダンジョンマスターのイメージが崩れてしま』
録画終了ボタンを押し忘れた配信みたいな内容の手紙だな。途切れてるのは慌てて魔法を切ったからか?
《アイテム、錬金の大鍋を手に入れた!》
《街に転移します》
ピコン
《メッセージが届いています》
『さっきのことは誰にも言わないでほしいのです……ダンジョンマスターは舐められたらおしまいなのです……』
おい運営、モンスターにシステムハックされてんぞ?
皆様いつも応援ありがとうございます。
早いもので投稿開始からもう一月経ちました。
作者は3日坊主になるだろうと思っていたのですが、気がつけば毎日投稿しているじゃないですか。
おや、日数より話数の方が多い……?
きっとチュートリアルをさっさと終わらせたかったのですね。
正直タイトル的にチュートリアルまでが本編で、後は蛇足なのでは?と作者は思っています。
それもこれも予定にない行動ばかりする主人公が悪いんです。俺は悪くねぇ!
おまけ
とあるダンジョンの1日
「どうですかホネホネ?私のトラップが見事冒険者を撃退したのです!」
「いやいやダンマス、あれは普通に帰ってっただけじゃねーの?見ろよあの満足そうな顔」
「わかってないですね……それだからホネホネはホネホネなのです。いいですかホネホネ?ダンジョンにとって避けなければならないことはコアが破壊される事、そしてダンジョンマスターである私が討伐されてしまう事なのです。それをこのトラップは完全に防いでくれるのです!しかもその間に私たちはダンジョンの改装まで行える優れものなのです!」
「おお!そう聞くと凄そうだぜ!さすが俺らのダンマスだ!よっ、世界一の天才ダンジョンマスター!」
「むふふふ、そうなのです!私はすごいのです!は~。でも最近ちょっと工事ばかりで暇なのです。たまになら先に侵入してくる冒険者がいてもいいかも、なんて言っちゃだめですね。せっかくドロヌマさんが頑張ってくれているのです!早く改装を終わらせて中級ダンジョンに進化させるのです!」
「あー俺も最近攻撃される事なくて暇なんだよなぁ。そろそろ爆発しそうだぜ……」
「ホネホネは爆発なんて出来ないのです。できたらもっと楽に冒険者を撃退できるのです」
「ハッハー!ごもっともだぜダンマス!だからポイント使って俺らを進化させてくれよぉ」
「ダメなのです!貴重なポイントをホネホネに使うなんてありえないのです。それに貯金したポイントでようやく錬金の大鍋が買えそうなのです!ホネホネの強化はダンジョンの優先度最下位だと知るのです」
「そんなぁ……!」
以上、主人公達がダンジョンに訪れる3日くらい前の会話