第2ラウンド
核を蹴り出されたマッドゴーレムは崩れてしまった。さすがに核を物理的に排除されては再生しようがないって所か。自分でやっておいてなんだが上手くいくとは思わなかったぞ。と言うより上手くいきすぎだ!見ろ、ライト達がアーツを放つ準備をした格好のまま固まってるぞ!
「マジかよ、この行き場を無くしたアーツを何処にぶつけりゃいいんだ?」
「祝砲代わりにするとか?」
「危ないからやめておきなさい」
「マッドゴーレムってあんな倒しかたもできたんすね」
「あれ?でもまだ撃破のアナウンス流れてないですよ?」
アナウンス?あぁ、あのモンスター倒したりクエストクリアすると聞こえるやつか。どうせ作者が書くの面倒になっただけじゃねぇの?ゴージャスミミックの時も書かれてなかったしな。まったく、設定とか描写は統一して欲しいもんだz――――
「なっ!?ライ!!」
「そんな!確かにHPの表示は消えてたわよ!?」
どうやら俺は今、何者かに攻撃され宙を舞っているらしい。完全に意識の外から攻撃を受けた為か、うまく思考がまとまらない。体がくるくると回転して目が回る。時間にすると1秒にも満たない間の出来事がやけにスローに感じられた。そして未だに回り続ける視界の隅に、俺に不意討ちを仕掛けてきたであろうモンスターの姿が移りこむ。
「ガハッ……くっ、いきなり後ろから、攻撃、とか……ウップ。卑怯だろ……マッドゴーレムゥ!!」
「―――――」
そこにいたのは核を蹴り出され崩れ去った筈のマッドゴーレムだった。いや、さっきまでとは違うな。泥で出来ているとは言え、奴はきちんとゴーレムらしい見た目をしていた。だが今はどうだ?起こすのが早すぎた生物兵器並みにドロドロで、腰から下なんて地面と同化してしまっている。無理矢理再生した結果こんな姿になったのだろうか?
「ライ!大丈夫か!?」
「回復、はしない方がいいのよね?」
「……あぁ。それより、準備してたアーツってまだ行けるか?」
「魔法はファンブルになったけど、アーツだけなら行ける」
「ライさんはちょっと休憩してるといいっす!ここからはあたしらがやるっすよぉ!」
「いいのか?」
「おう、休んどけ!俺もちょっと頼り過ぎちまったからな。こっからはライに負けないくらい派手に暴れてやるぜ!」
「もー!暴れるんじゃなくてきちんと連携してくださいね!?」
「分かってるって!とりあえず俺らにヘイトが向くように威力優先でいくぞ!」
言うが早いかライトはマッドゴーレムに突進し、爆炎を纏った剣を突き立てる。
「リリース・ボルケーノ!」
「――――――!」
剣に貯めた熱と炎、その全てがマッドゴーレムの中で一気に解放される。結果は上々。剣の周辺にあった泥が消し飛んだ。やっぱりの瞬間火力はライトが一番だな。
「嘘だろ?全然効いてない!?」
「なんですと!?」
ちょ、誉めた端から何言ってくれちゃってんの!ライトの攻撃で、確かに泥を消し飛ばしていた。それなのにHPはまるで減っていなかったのだ。
「ライト下がって、今度は私の番。バーサークランス!」
「あたしもやるっすよぉ!フルチャージインパクト!」
おかしい。フィーネの強力な槍の一撃も、ルルの最大まで威力を高めた拳打もほとんど効いていない。再生するまでは確実にダメージを与えていた筈の攻撃がまるで通用しないのは何故だ?まさか……!
モンスター
マッディウォーターゴーレム
鑑定すると案の定別のモンスターの名前が表示された。休憩とかしてる場合じゃねぇ!俺も戦うぞ。これの原因たぶん俺だもの!
ボス兎はプレイヤーを攻撃し続けることで戦闘スキルのパワーレベリングを行っていた。プレイヤーとの戦闘は一方的なものであったとしても通常より多くの経験値を獲得できるからだ。だが、戦闘スキルはなにも攻撃用の物ばかりじゃない。防御用の物だってちゃんとある。さすがにクリエイトウォーターは舐めすぎていた。初撃にフィーネが水属性の魔法を放った事からも分かるように、マッドゴーレムの弱点の1つが水属性だ。マッドゴーレム自体も水の属性を持っているのだが、泥の性質上多すぎる水は体の崩壊を招いてしまう。だから生活魔法のクリエイトウォーターで、ダメージは無くとも体の一部が流され核が露出したのだ。
俺は出来る攻撃も少なかったので積極的にクリエイトウォーターを当てまくった。MP消費も極々微量でなんて便利なのかしら生活魔法!とアホみたいに使いまくった。不完全な蹴りで核が吹き飛んだのは、この大量の水で泥がかなり緩くなっていたからなのだろう。そしてそれが最後のトリガーになってしまったらしい。
マッディウォーター。つまり泥水。マッドゴーレムは土属性に水属性が加わっているモンスターだった。しかしこいつはその逆で、水属性に土属性が加わっている。泥で出来た体から、泥水で出来た体へ。弱点だった筈の水が今では力の源だ。そりゃ燃やしたり殴ったりしても効果無いわな……。
「皆ストーップ!そいつマッドゴーレムからマッディウォーターゴーレムになってる。物理効かないから魔法使ってくれ!あ、でも水属性禁止な!」
「納得、それで攻撃効かなかったんだ」
「泥水ってことは俺役立たずじゃんか!」
「安心しろ、俺もだ!」
「ハァ……頼りにならない男子達ね」
「あたしも殆どダメージになる攻撃ないっすよぉ……」
「面目ない。ついでに原因もオレだったりするんだけど、許して?」
「えーっ!?何ですかそれ!」
「クリエイトウォーター使いすぎて耐性獲得&進化されちゃったっぽい」
「ライ、絶許」
「ギルティっす」
「ライ君のアホー!」
「―――――――!!」
「こんにゃろ!ゴーレムの癖にスライムみたいな動きしやがって、核を何処に隠した!」
核さえ見つければ俺達役立たずの物理組だってダメージ稼げると思うんだけど、体が液体になって核の場所を自由に変えられると何処に攻撃していいかわからない。
「――!」
「おわっ!あっぶねー」
しかも広がった泥水から自在に手足を生やして奇襲までしてくるから始末に終えない。リリィとフィーネが魔法で攻撃してくれているが、HPはまだ3割も残っている。MPの消費も大きいのでじり貧だ。もう中ボスってレベルじゃねーよこれ。
「ルル、隙を見て衝撃波系の技使ってくれ!それに合わせて俺も範囲技使うから!ティナ、スナイプ準備!」
「りょーかいっす!」
「頑張ります!」
お、ライトが何か思い付いたみたいだ。たぶん衝撃波と範囲攻撃で出来る限り泥水を散らして核を見つける作戦だろう。ダメージは殆ど無くとも有効かもしれないな。俺にも何かできないだろうか?う~む。あ、水から泥取り除けば見えやすくなるんじゃね?まさに天才的発想だ。クリーンを使えば行ける気がする!
仕掛けるタイミングはライトとルルがアーツを使った直後にしよう。
「今っす!インパクトナックル!」
「よしきた!ストライクフレイム!」
2つの衝撃に挟まれて泥水が盛大に飛び散る。だが少なくとも俺からは核の位置が分からなかった。矢が放たれない所を見るにティナの位置からも発見できなかったのだろう。今が名誉挽回のチャンスだ!広がれ俺のイマジネーション、奴の体を綺麗に、クリーンに。いざ!
「クリーン!!!」
「へ?」
「はい?」
「―――――???―――――――!?」
「よっしゃ!透け透けだぜ!」
作戦成功!見事頑固な泥を一掃してやった!さぁ、あとは丸見えの核を貫いてやれば……
《マッディウォーターゴーレムとの戦闘に勝利した!》
《EXP42000を獲得した!》
《アイテム、ゴーレムの魔核を手に入れた!》
《アイテム、なめらかな泥を手に入れた!》
《アイテム、綺麗な泥団子を手に入れた!》
し、締まらねー!
綺麗すぎる水では魚が生きて行けないように、マッディウォーターゴーレムさんも泥がなければ生きていけないのです。
正直前話で決着のほうがいい気もするのですが、さすがに今の主人公の火力じゃ中ボスワンパンは無理です。
おまけ
月刊ダンジョン通信
・マッドゴーレムの生態
マッドゴーレムとリトルマッドゴーレムは泥でできている、土属性と水属性を持ったゴーレムです。
ゴーレムと言うとなんだか大雑把で無骨なイメージを持っている方も多いでしょう。
ですがマッドゴーレムはかなり繊細なゴーレムなのです。
体が泥でできているので乾燥は天敵です。
表面が固まって動けなくなってしまいます。
多すぎる水も得意ではありません。
泥が緩くなって溶けてしまうのです。
なんとも不思議なゴーレムですね。
そんなマッドゴーレムですが、他のゴーレムには真似できない特技を持っているのです。
なんと合体できるのです!
特別なアイテムもスキルも必要ありません。
泥なのでグチャッとするだけで1つに纏まります。
リトルマッドゴーレムは安価なポイントで召喚が可能なので、新人ダンジョンマスターは是非数を揃えて合体させましょう。
マッドゴーレムサイズになれば立派な中ボスとして活躍してくれます。
戦力が整ってきて中級ダンジョンを目指す頃になっても、更に合体させることができるので活躍してくれることでしょう。
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