髑髏の語る真実
()内の言葉は主人公にしか聞こえません
やっぱり俺いらなくね?いかん、いかんぞ。このままでは寄生プレイヤーまっしぐらだ。運命力が少ーしばかり足りない気もするが、それでも俺は主人公だ。指先で丸めた鼻くそ程度のプライドがある。なんとか役割を見つけなくては。何か、何かないのか!?必死に考えていると何者かの声が聞こえてきた。
妙だな?確かこのゲームのダンジョンは、入るとパーティ毎に生成されるから他のプレイヤーとの取り合いにはならないってさっき聞いたんだけど。
(ハァ……やってらんねーぜ。初めの頃は俺らにも攻撃してくれるやつらがいたってのによぉ。最近入ってくる連中ときたら俺らを毎回無視しやがる!こちとらインテリアじゃなくてモンスターだってーの!攻撃仕掛けて来やがれ腰抜け共が!俺にスキルを使わせろーっ!!)
トーキングスカルさんが喋ってるじゃないの。俺がわかるのって兎語だけじゃなかったか?いつから他のモンスターの言葉もわかるようになってたんだか。うわ、モンスター言語のスキルから兎とれてんじゃん。今までキックラビットとしか戦闘してこなかったから気づかなかった。う~ん微妙だなぁ。言葉が分かると地味に倒し難いんだよなぁ。兎達を虐殺しながら何を今さらだと?これでも結構葛藤したんだぜ?最終的にサンドバッグの恨みが勝ってふっきれたけどな。ふむ、暇潰しに話し相手になってやるか。トーキングスカルはダメージ与えなきゃインテリアみたいなものだしな。倒さなくて済むモンスターとの会話なら罪悪感もわかないだろう。
「よぉ。ずいぶん荒れてるな」
(んお!?俺の言葉がわかるのか!)
「モンスター言語持ってるからな」
(また珍しいスキルを持ってるんだな。さすがプレイヤーって所か。なぁ、さっきの聞いてたんだろ?俺を攻撃してくれよぉ。暇で暇でしょうがないんだ!俺もスキル使って戦闘したいんだよぉ!)
「嫌だね。お前を攻撃すると周りから他のモンスター呼び寄せるんだろ?わざわざそんなことするかってーの!」
(そう言わずにさぁ、頼むよぉ~。ちょこっと、ほんのちょこーっとだけ殴ってくれればいいんだって!大丈夫、あんたのことは襲わないようにここに来る連中に言ってやるからさぁ?)
「言うだけで他のモンスターは普通に攻撃してくるってオチだろ?約束は守ったけど他のモンスターの行動までは責任もてないとか言っちゃうんだろ?」
(チッ、鋭いな兄弟)
「誰が兄弟か」
(じゃあこうしよう、今から兄弟に良いこと教えてやる。その代わり攻撃してくれ)
「良いことねぇ……。とりあえず話してみろよ。それが有益な情報だったらあいつらと相談した上で攻撃してやらないこともないぞ」
(OKOK!それで十分だとも!うっひょー!久しぶりにスキル使えるかも知れないと思っただけで高ぶるぜ!俺に体があったら華麗なブレイクダンスを披露してやってもいいくらいだ!)
「え、踊れんの?」
(は?無理に決まってんだろ?産まれてこの方頭しかないんだぞ?デリカシーの無いやつめ)
…………、そろそろ戦闘も終わりそうだし戻るとするか。どうせ壁に引っ掛けてあるようなモンスターからの情報だ。大したこと無いに決まってる。無価値な髑髏とはオサラバよ。一生壁に引っ付いてろ、ぺっ!
(ちょ、ちょっと何離れて行こうとしてんのさ!待て待て!待ってくれ!今のは俺が悪かった!それくらい嬉しいってことなんだよ!ちょっとしたジョークさ!思わず舞い上がっちまったのよ!だから行かないでくれー!話だけでも聞いてってばー!)
「……しゃーねぇなぁ。とっとと話せ」
(ふぅ、焦ったぜ。本当に行っちまうのかと思ったぞ。絶対に損はさせねーぜ?なんせ俺の知る限りお前らプレイヤーはまだ誰も知らない情報だからな!)
「ほーん」
誰も知らない情報ねぇ?始まってまだ1週間しか経っていないゲームだ。そんなもの山のようにあるだろうよ。いったいどんな情報かが重要だ。ダンジョン内のモンスターだしダンジョンに関することだとは思うが……。
(なんと今プレイヤー達がボスだと思ってるモンスターは中ボスなのさ!)
「はい?」
(ボスを倒すと街に転移できるのは知ってるか?うちのダンマスはそれを利用して中ボス倒したら転移を選べるトラップを組んだのさ!いやー、量産型の中ボス倒して帰っていくプレイヤー達のの満足げな顔ときたら……ププ、思い出しただけで笑えるぜ)
「おい、スカル君?そんな重要な情報サラッと流しちゃっていいの?ダンマス、だっけ。その人に怒られるんじゃないのかね?」
(大丈夫大丈夫。うちのダンマスは心が広いからこの程度じゃ怒んないって!全員面白いくらいに引っ掛かるから暇だって愚痴ってたしな。そんなことより早く!早く俺を攻撃してくれぇ!!もう待てねぇよォ!!)
「わかったわかった、戦闘も終わったみたいだし聞いてやるから静かにしてろ!」
かなり重要な情報を貰ってしまったので無下にもできない。めんどくさいが相談するっきゃないよなぁ……。
「ふぅ、こんな感じだな!ライ!ちゃんと見てたか?」
「どうでしたかライリーフさん?何かイメージできました?」
「あー、すまん。一旦それは置いといて、聞いて欲しいことがあるんだけどさ」
「なんすか?お宝でも見つけたんすか?」
「それに近い。内容話す前にコイツ攻撃していい?情報と引き換えに攻撃する約束しちゃったんだけど……」
「コイツって、トーキングスカルじゃない!」
「カタカタカタカタ!!」(ハリアップ!ハリアップ!ギブミーダメージ!!)
「ひっ!すごいカタカタしてますよぉ?」
「なんでも最近プレイヤーに相手にされなくて暇らしいんだ」
「ライ、モンスターと話せるの?」
「モンスター言語ってスキルがあってな。それのおかげで話せるみたいだ」
「カタカタカタカタカタァ!!!」(ウダウダやってねーで俺を攻撃しろぉ!!今にも爆発しちまいそうなんだよぉ!!!)
「へー、バチバチ光るのと言い空飛べるのと言い珍しいスキル持ってんだな。俺は別にいいぜ?お宝探しの前に粗方モンスター倒しちまった方が楽だしな」
「私もかまわない。その代わり後でおかわりちょーだい」
「フィーネがいいなら私も大丈夫です!」
「あたしもっす!まだまだ戦い足りないっすからねー!」
「無駄に戦いたくはないんだけど……。多数決じゃ仕方ないわね。その代わり、次はライ君も戦ってね?」
「もちろん!みんなと違ってダメージは期待できないけど徹底的にモンスターの邪魔になることしてやんぜ!」
「カタカタカタァ!!」(話が決まったなら早く!早く攻撃しろぉ!!)
喚く髑髏を無視して戦闘準備を整える。戦闘中の誤爆じゃない以上、来るべきモンスターに備えるのは当然だよな。
「よし、じゃあやるぞ!」
「カタカタ、カタカタ……」(あぁ、漸く。漸くスキルを使えるぜ……)
「せい!」
「カータカタカタカタカタァ!!!!」(来た来た来たァ!楽しい楽しい祭りの始まりだぜぇ!!ヒャッハー!!)
「来るぞ、みんな構えろ!!」
シーン……
空調音で耳がいたい。モンスターの近づいてくる気配は一切感じられない。居たたまれない空気に、俺達は困惑しながら互いの顔を見合わせた。
「カタカタ?」(あれ?なんでだ?)
トーキングスカルのその言葉に合わせたのか、何もなかった空間からヒラリと1枚の紙が落ちてきた。それを目に?したトーキングスカルは顎が外れる程驚いていた。実際外れてた。
「んーどれどれ?……俺には読めないな。ライ、読んでみてくれるか?モンスター言語持ってるなら読めるかもだし」
「はいよー」
なになに?うぉ、めっちゃ読みづらいな!スキルレベルが低いからだろうか?落ちてきた紙にはこんなことが書かれていた。
『ダンジョンノジュウヨウジョウホウヲモラスヨウナヤツニゾウエンナンゾフヨウダロ?ソコナリョウリニンニスープノダシニデモサレルトイイ。ホネハヒロッテヤルカラアンシンシテイケ』
「えーっと。ダンジョンの重要情報を漏らすような奴に増援なんぞ不要だろ?其処な料理人にスープの出汁にでもされるといい。骨は拾ってやるから安心して逝け、か。ドンマイ髑髏君!ダンマスめっちゃ怒ってるぜ!」
あ、気絶のバッドステータス入ってる。骨でも気絶ってするんだなぁ
おまけ
・トーキングスカルについて
トーキングスカルは本作に登場する攻撃してこないトラップモンスターの一種。トラップモンスター達は単体では登場せず、他のモンスターと一緒に出現する。
トラップモンスターはダメージを与えてこないものの様々な手段でプレイヤーを邪魔してくるのだ。
トーキングスカルの場合、攻撃が当たると周辺のモンスターを全て呼び寄せる能力を持っている。
戦闘中に誤って攻撃を当ててしまうと乱戦に巻き込まれてしまう。
ある程度レベルが上がったプレイヤーからは、レベル上げ用の便利アイテム扱いされてしまう悲しき髑髏。