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師への挑戦?

 シフォンの店を後にした俺達は、ナナさんに連れられて冒険者ギルドの訓練所にいた。俺とクッキングバード・レギオンとのやりとりを見たナナさんが師匠っぽい事をしたくなったからだ。

 ナナさんって師匠だっけ? と思った人もいることだろう。ナナさんから『チュートリアルを担当したんだから、私は師匠だよね?』と問われて、まあそっすねと俺が答えたので師匠で合ってるのだ。ファースのご老人連中なんかは、俺が何も習っていない人でもワシが育てた感を出してくるので、それと比べればよっぽど師匠してるしな!


「それじゃあライ君、君があれからどれだけ成長したのかを見せてもらおうか」

「あれ? 魔法陣は使わないんですか?」

「それでもいいんだけど……今回は私が直接相手してみたいからね」


 ナナさんが直接か。チュートリアルを終えてから気が付いた事なのだが、ナナさんの装備は一般的なNPCの装備と比べると、ちょっと特殊な見た目をしている。一部のプレイヤーを除いた大多数がRPGだなって雰囲気の装備をしている中、ナナさんの装備は宇宙的と言うか、サイバーと言うか……ロボット作ってる俺が言うのもなんだが、ジャンル違くね、と言いたくなる見た目をしている。果たしてあれは強さも比例して特別な物なのだろうか?


「あ、もしかして私が戦えるのか疑ってたりする? これでも私、普段はこの国でAランクの冒険者をしてるんだよ?」


 ナナさんの取り出したギルドカードには、Aの文字が確かに輝いていた。


「だから心配せずに全力で掛かっておいで。一撃私に決められたら合格って事で」


 元から弱いとなんか思ってなかったが、Aランクって事は現状のプレイヤーより明確に格上である。力試しとは言え、俺のステータスでは全力で戦ってワンチャンあるかどうかだろう。


「スタートの合図は?」

「いつでも始めていいよ」


 その言葉を聞いたと同時に俺は走り出した。両手に世界樹の木刀を一本ずつ呼び出して正面から斬り掛かるも、その攻撃は当然のように受け止められる。上下左右、緩急をつけて何度も攻撃をしてみたが、まるで相手になっていない。だがこれは想定内だ。俺は死にかけてからが強いんだから!


「シッ……!」

「もしかして今のジョブは戦闘系じゃないのかな? ジョブを変える時間あげようか? このままじゃいつまで経っても私に攻撃は当たらないよ?」

「戦闘系は一切育ててないんでお構いなく!」


 大振りの一撃を受け止められ、弾き飛ばされナナさんとの距離が開く。暫く攻撃し続けたが、ダメージは無い。ナナさんはもちろんの事、俺も。


「……あの」

「なにかな?」

「は、反撃とかして来ないんで?」

「そう言う事は私をここから一歩でも動かしてから言うんだね」

「さいですか……」


 憤怒の逆鱗は使えないってよ! どうすりゃいいんだよ!

 くっ……とりあえず後で自傷用のアイテムを開発するとして、今を切り抜ける為に必要な物を考えよう。

 先ずは武器を変えよう。MP回復効果付きで長期戦向きな世界樹の木刀よりも、格上相手に効果を発揮出来る幻影水晶の剣の方が良いだろう。

 防具は……このままでいいや。ドラグディザスターが良い感じに育っていれば切り替えたかもしれないが、今の性能だとちょっと神と竜に特効が乗るだけの派手な鎧だ。防御力も正直微妙だし、育てるのめんどくさい。いっそ解体して素材にでも出来ればいいんだけど、あれ専用装備扱いで分解出来ねぇんだよなぁ。

 まあ使えない鎧は置いといて、次に戦法。近接のみではナナさんを出し抜けない。遠距離攻撃も混ぜるべきだろう。そうと決まれば……!


「ハァッ!」


 世界樹の木刀をストレージに戻し、鉄のトマホークを投げつける。サイクロントマホークだと隙が大きいので、アーツは無しで六連の投擲!


「レイジングスロウ!」


 あれ、アーツ覚えた!? 今まであんなに酷使してサイクロントマホーク以外覚えなかったのになんでだ!? まあいい、好都合だ! アーツになったお陰で、六つのトマホークは殆んど同時にナナさんへと殺到した。硬直が少し邪魔だが、このタイミングなら追加で仕込める!


「ラピッドスロウ!」


 おお、またしても新アーツ! そういえばサイクロントマホークを使わずに投擲するのは久しぶりな気がするし、それが理由だったりするのだろうか?

 それはともかく今投げた物だ。あれは本来逃走用のアイテムで、煙幕を発生させる煙玉だ。スキルとステータスの補正で驚く程に正確な俺の投擲は、煙玉をトマホークとそれを迎撃に動いたナナさんのワンドの間に運び込んだ。


「おっ、なかなか器用な事するね!」


 煙の中からナナさんが俺を誉めてくる。まだまだ余裕綽々って感じだ。今に目に物見せてやんぜ!

 足音を立てないように低空を這うように天翔天駆でナナさんの背後へと回り込む。煙幕を何時までも放置してはくれないと思うので、一気に勝負を仕掛けよう。


「サイクロントマホーク!」


 風を纏ったトマホークが唸りを上げてナナさんへと迫る。


「甘いよ!」


 トマホークの纏った風が煙幕を晴らすのを待つまでもなく、ナナさんは正確に迎撃を行った。武器同士の激突した衝撃で風が弾けて煙幕を晴らす。


「次は何処から……ッ!?」

「チィッ!」


 トマホークを投げた直後に、幻影水晶の剣を取り出して雷召嵐武を発動、風切り音に紛れて肉薄した……までは良かったが、攻撃の瞬間に気付かれてしまった。もう攻撃は止められない、ヤケクソアタックを食らえ!


「おっとぉ!」

「一歩目ェ!」


 足元を狙った剣の一撃をナナさんが回避する。当たらなかったのは残念だが、とりあえずは移動させてやったぜ! ここで満足? する訳無いね!

 宙へと浮いたナナさんを追撃するべく、剣を握っていない左手を地面に付き、剣を振った反動も利用して躰道(たいどう)じみた動きで上段へと蹴りを放つ。しかしこの蹴りにもナナさんは反応し、上体を反らす事でやり過ごした。

 この時点で、ナナさんは俺の追撃はもう無い物と見極めたのだろう。体制を整える為に、バク転するように地面に両手をついた。その瞬間を俺は見逃さない。


「せりやァ!」

「嘘!?」


 蹴りを振り抜く直前に、天翔天駆で無理矢理足場として固定する。地面に手をつき、立ち上がる為に足を下ろしている最中のナナさんの上を、上方向に半回転しながら取った形だ。身体制御のレベルが上がっていて良かった。こんな無茶苦茶な動きでも、俺が思い描いた通りにキチンと動いてくれるのだから。下方向に跳びながら振るった幻影水晶の剣の一撃は、ガラ空きのナナさんの背中をしっかりと捉えた。


「お見事!」

「ハァ……ハァ……や、やったぜ」


 天翔天駆を煙幕中にしか使わなかったのが効いた。もし早々に見せびらかしていたら絶対攻撃を当てられなかっただろう。それにしても……。


「凄いね、さっきの空歩じゃないでしょ? 戦闘系のジョブを取ってないって聞いた時はどうしようかなって思ったけど……うん、プレイヤーらしい良い戦い方だったよ」

「はは、どうも……」


 ナナさんの頭上に浮かぶHPバー。僅かに削れた分が、俺の攻撃によるダメージだ。数値にしてたったの27ダメージ。

 やれやれ、どうやらまだAランクへの道のりは長そうだ。

ナナさんの装備が見たい人は書籍版をチェック!

最初のほうに載ってるから、買わなくてもお試し何ページとかやってるサイトで見れるぜ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 全然流れが途切れないんで、サクサク読めてしまいました。 [気になる点] 主人公自傷技なかったっけと思いましたが、リスキーチャレンジは失敗時でしたか。 ゲームにもよりますが、HP減少とかデメ…
[一言] 買わなくても見れるよとか優しさの塊でしかない
[一言] やっぱスキル使わない投擲って大事ね!
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