名前格差
料理する機械となり、深夜まで様々な料理をフィーネに提供し続けた俺は、ギリギリ遅刻せずに学校にたどり着けた。出席で自分の名前が呼ばれた瞬間、「はい!」と元気よく返せれば誰がなんと言おうとセーフなのだ!
不甲斐ないことに、光介の野郎は遅刻していた。ストレージに貯まった素材の数々を俺が買い取り、買い取り額10000コル毎にダンジョンチケットを渡した結果である。奴は俺がログアウトした後もポテトひしめくダンジョンに挑み続けていたのさ。DPおいしいです。
そして今、俺が来ているのもマイダンジョンである。ノクティスが鳥系モンスターを追加したいと言っていたので、一緒に良いモンスターをカタログから探す為だ。
「しっかし、ずいぶん手を加えたもんだな」
既に稼働しているダンジョンに正面から入るわけにもいかないので、直接ダンジョンマスターの部屋まで転移したのだが、そこに設置されたモニターに映し出された光景は以前に見たダンジョンとは大きく違っていた。
木々の合間にクリスタルが乱立していたり、金色の植物が生えていたりする。誰が弄ったのか非常にわかりやすい。
「いくらモンスターにポイント使わなくていいからって、無駄使いし過ぎじゃねーか?」
ボス部屋が三つに増えていて、クリスタルや金ぴか植物の侵食はそこから広がっているようだ。そして肝心のボス部屋はと言うと……うん、一面クリスタルと金ぴかが覆っている。まともなのはノクティスの部屋だけだわ。
(お待たせしやした旦那!)
「ノクティス、お前だけがこのダンジョンの良心だ」
(え? なんの話ですかい?)
「いや、なんでもない。それよりポイントはちゃんと貯まってるのか? 見たところ結構派手に使ってそうだけど」
(安心してくだせぇ旦那。ポイントなら、ほら)
「ん? おお!?」
一、十、百、千、万……42万ポイントもあるじゃねーか!
「これ、いったいどうしたんだ?」
(いやー、思いの外ルクスとラクスの所が人気でしてね。ひっきりなしに人が入って来て、それを全滅させてたらこの通りでさぁ)
「うわぁ……」
確かにあの二羽のボス部屋は派手だし、良いアイテムがゲットできそうではある。しかしそれはボスを倒さなければ手に入らない訳で、しかも相手は鳥ガーハッピー。御愁傷様としか言いようがない。
ポテトの里に気がつければ、世界樹系統の素材が手に入るかなり旨みのあるダンジョンだが、それまではポテトしか拾えずボスも倒せないクソダンジョンである。それでもこんなにポイントが貯まったのは、ショッピングモールと遊園地の効果もあるんだろうなぁ。
「ま、使えるものはありがたく使わせてもらおう」
(早く選びましょうや!)
「ちょっと待ってな、鳥系モンスターのページは……お、あったあった」
今のポイントで召喚できるモンスターは、フィールドでよく見かけるものから珍しいモンスターまで様々だ。名前が黒くなっていて選択出来ないのもいるが、それはダンジョン内のフィールドが合ってないからだろう。ペンギンっぽい名前してるし。
「ん?」
(何か良さそうなの見つけたんで?)
「あー、う~ん。たぶんな」
俺が見つけたのは一つの項目。そこを選択すると新しくモンスターが表示されると思うんだけど、それをすると当初ダンジョンを作った目的に反する気がする。
いやぁ、でもなぁ、鳥ガーハッピーをダンジョンに隔離は出来てる訳だし? ダンジョンのモンスターが外に出ていく訳でもないんだから、選んじゃっても問題ない、か? うん、問題ない。ポイントだっていっぱいあるんだ、男は度胸っしょ!
「ポチッとな!」
(おっ、まだ表示されてないモンスターがいたんですね)
「クックック。ノクティスよ、こいつらは強いぞ? さっきまで表示されてた奴らとは次元が違うと言ってもいい」
(ほぇー、旦那がそこまで言いますか。どれどれ……こ、これは!?)
ノクティスが驚愕で固まる。
無理もない。新しく開いた項目、そこにはボスモンスターの系譜に連なるモンスターが表示されているのだから!
鳥ガーハッピーからどこまで劣化した性能のモンスターかは分からないが、劣化していようと絶対に強いってことだけは分かる。ダンジョンの戦力としては十分過ぎるだろうよ!
(だ、旦那……こいつらを召喚するんで?)
「そのつもりだけど……あれ? 気に入らなかったか?」
(いえ……そういう訳じゃないんですがね)
「じゃあなんだよ?」
(こいつらがあっしらの配下になるわけでしょ? ちょっと、その……)
「なんなんだよ、はっきり言えよ!」
(あっしらに比べてこいつらの種族の名前格好よ過ぎるでしょうがッ!!)
「知るかッ!」
ノクティスの魂の叫びを無視して三種のモンスターのスポーンサークルを購入するのだった。
モンスター
・アサルトスワロー
高速で飛び回り、羽の弾丸を放ちながら敵を強襲する。
・スプレッドピジョン
常に五、六羽程の群れで行動し、外敵に遭遇すると一斉に羽の弾丸を放ってくる。
・スナイプシュービル
獲物が射程圏内に入って来るまで絶対に動かない鋼の精神を持つ。
動かな過ぎてそのまま死んでしまうこともある絶滅危惧種。




