合宿3日目 ~予想通り出てこなかった問題~
投稿遅れて申し訳ない!
集中力が続かないのです……
「……」
「……」
「なあ、元気だせって二人とも」
露骨に落ち込んでいるのは光介と瑠美。何があったのかと言えば、残りの問題で、何かを数えておく系の問題が出題されなかった。ただそれだけである。
「あんなに頑張って数えたのに……無意味だったなんてよぉ……」
「あたしなんて種類毎に木の数まで数えて……ほんと、バカみたいっす……」
「どんな記憶力してんだよ」
そもそも特徴が有るものや人工物ならいざ知らず、その辺に生えている木の数なんて問題にするわけないだろうに。いや、敷地内で最大の樹齢を誇る杉の樹齢は?なんて問題はあったけども。
「たぶん一問目問題は、周りの自然に目を向けてもらう為の物だったんじゃない? ほら、それまで私達会話ばっかりだったけど、景色も見だしたし」
「違うっす……絶対引っかけっす……」
「問題作ったやつは絶対性格ねじ曲がってる……」
「そ、そんなことないと思うわよ……?」
早百合さんがフォローにまわるもいじけっぱなしだ。じめじめと鬱陶しいので、さっさといつもの調子に戻ってもらいたい。その為の手段が一つ考えついたので、さすがにそこまで二人も単純な性格してないだろうと思いつつ試してみる。
「しゃーない、とっておきの情報を教えてやろう」
「情報……? そんなもので俺達の砕けたハートを癒せるとでも?」
「癒しになるかは知らねーよ。ただ結構すごい情報だぞ?」
「なんすか……勿体ぶらずに早く話してくださいよ……」
「フフフ、いいだろう。うちのホームにダンジョン作ったじゃん?」
「あ、スプルドの話なのか」
「ダンジョンがどうかしたっすか?」
「そこにね、生えちゃったんだわ」
「生えちゃった……って何がだよ?」
「世界樹」
「は……?」
「せか……ええっ!?」
「悠二君それ本当!?」
「もち! エルフの国に行って面倒なクエストの数々をこなさなくても、世界樹の素材取り放題になりました!」
「うおおお! スゲー!」
「ヤバいっすねそれ!」
なんとまあ、二人どころか早百合さんまでテンション爆上げである。気持ちは分かる、なにせ世界樹だ。現在判明している植物系のアイテムの中で、最上位に位置する存在。枯れ葉ですら高値で取引されるような物が、取り放題。テンション上がらない訳がなかったか。テンション上がらないのなんて、いつの間にか寝ちゃってる伊織ちゃんと、スプルドやってない委員長くらいで…………おかしいな、委員長が「こいつマジか!?」みたいな顔でこっちを見てる。
「せ、世界樹……? それって育てられるものなの……?」
「畑に蒔いたら立派に育ったよ?」
「蒔いたら育ったって……そもそもなんで世界樹の種なんか持ってるのよ!」
「でっかい鳥に拐われたお土産かな。てか委員長、もしかしてスプルドやりたくなってきた?」
「えっ、ちが……! いきなり神話級の植物が生えたなんて言い出すから気になっただけだし!」
「はっはっは、ゲームやりたいなんて普通のことで恥ずかしがるなよ。委員長キャラを守るのもいいけど、あんまり我慢しすぎるのは体にわるいぜ?」
「別に委員長キャラなんて守りたくもないし! そんなふうに過ごしたこともないから!」
「そうか……既に委員長は委員長を極めているから、今さらそんなこと意識する必要もないのか。流石だぜ」
「そんなもの極めた覚えはない!」
「まあおふざけはこの辺にして、スプルド始めるならダイブマシーンはこんどスプルド同梱の廉価版が出るみたいだからそれまで待ったほうがいいよ」
「うぐっ、う、うん……考えとく……」
廉価版でもまだけっこうな値段である、買うのを躊躇するのは当然だな。でもそんな苦虫を噛み潰したみたいな渋い顔になるほどか……?
「ん……」
「お?」
わりと騒がしくしたからか、俺の背中で寝ていた伊織ちゃんも起きたようだ。
「んー……お子様ランチ」
「え?」
「決めた。お子様ランチ」
「あ、もしかして寝てる間も何作らせるか考えてた?」
「ん。お子様ランチはいい、一つのお皿に色とりどりの料理が並ぶ夢のメニュー」
「たしかに。冷静に考えると豪華だな、お子様ランチ……」
ご飯にチキンライスやピラフを、オカズにハンバーグやエビフライなんかの主役級を複数。そこにスープとデザートはもちろんのこと、場合によってはおもちゃまでついてくる徹底っぷり。お子様ランチを考案したやつは、さぞお子様レベルが高かったことだろう。お子様の特権のなんたるかを知り尽くしている。大人は頼むことに二の足を踏み、お子様であるが故に頼める優越感。そして堂々とその姿を主張する旗が、更に特別感まで演出してくれるパーフェクトな一皿……それこそがお子様ランチ!
そしてそんなお子様ランチ作成に、俺は今夜挑まねばならないのか。……ん? 夜に作るならそれはランチではなくディナーなのでは……?
「もちろん、サイズは特大サイズで」
「それ、もうお子様ランチじゃなくね?」
「大丈夫。私はお子様歴17年のベテランだから」
「お子様にもベテランとかあるのか……」
お子様とはなんなのか、考えさせられる言葉であった。




