合宿3日目 ~自己紹介~
書籍版の発売日まであと2週間を切りました!
買うかどうかは財布と相談してから決めようね? 作者との約束だぞ!
この班で唯一疎外感を感じていた委員長。俺達は彼女をあえてこの班のリーダーに据えることにした。
「それじゃ自己紹介から始めましょうか。あなた達は知り合いみたいだけど、ゲームの中だけの知り合いなら本名知らないでしょ?」
「悠がゲーム始めた時に教えたような……あれ? どうだったけ? ま、いっか。んじゃ俺からな、赤木光介です! 光介でもライトでも、どっちで呼んでくれてもいいぜ!」
「い、いきなり下の名前呼ぶ勇気は……いやいや、頑張るっす私!」
ルルがなんかゴニョゴニョ言ってるけど、光介には聞こえていないようだ。
少し前までの俺であったなら、こんな些細なラブコメの波動も逃さずキャッチし、即デストロイしていたろう。リア充スレイヤーの本能がオートで反応するからだ。
しかしそれももはや昔の話。今では生暖かな視線をルルに送れるくらい、余裕に満ち溢れている。だってこの場をよく見てご覧なさいな。学校の行事故に、芋っぽいジャージ姿とはいえ美少女達とのハイキング! 勝ち組ッ! 圧倒的勝ち組ッ!! フハハハハ、羨ましかろう! これこそが主人公の特権ってやつよ!
「よし、次は俺な! 稲葉悠二です! 最近懸賞で当てたのは『動いて光る! たぶん原寸大メジェド像』……誰か欲しい人いる?」
「ぬいぐるみなら……んっんん、話には聞いてたけどリアルでも運がいいのね。もっと普通な物狙えばいいのに」
「それが欲しい物狙いに行くと途端に当たらなくなるんだなぁこれが」
誰も欲しがらなかったメジェド様には、もう暫く俺の部屋の間接照明として働いてもらおう。
「最後は私ですね。雪村小姫です。そこの二人と違って完全に初対面だけど、その……よろしく」
「ば、バカな! 委員長に人としての名前が!?」
「てっきり委員長って名前なんだとばかり……」
「それ、前に5回くらい言われたんだけど、わざと言ってるんだよね? もしわざとじゃないって言うなら……そろそろ本気で怒るよ?」
「サーセンした!」
「もう言いません!」
委員長と知り合ってから、この流れは六度目。ついに本人からNGを出されてしまったとあっては、このネタは今回で止めるしかない。なんて言っている内は二流だ。来年もやって盛大に怒られてフィナーレを飾ろうじゃないか!
「あの顔、絶対またやるつもりね……」
「ライ君ってすぐ顔に出るし、すごく分かりやすい顔するよね……。それじゃ蝶望蘭茉はまず私から、水嶋早百合よ」
「近衛伊織。美味しい物が好き」
「柊瑠美っす! 体動かすのが得意っすよ!」
早百合さんがリリィ、伊織ちゃんがフィーネで、瑠美がルルだな。リアルでの名前が分かったのはいいとして、一つ気になる事がある。以前、学年が違う的な話を聞いたことがあったような気がするんだが、記憶違いだろうか?
「なあ、三人って学年違うんじゃなかったか?」
「そうよ? 私が三年で、伊織が二年」
「あたしが一年っす!」
厄災討伐後のドンチャン騒ぎで聞いた内容だったから不安だったが、どうやら俺の記憶は正しかったようだ。
「えっ、そうだったんですか? もしかして、蝶望蘭茉さんって生徒全員で来てたり……?」
「そう思うでしょ? でも実際はここに来てるのって、全体の三分の一くらいなの」
「山、海、お寺の三グループに別れてる。お寺はハズレ扱い」
「へーぇ。でもさ、普通学年毎に別れるもんなんじゃねーの?」
光介の言うように、普通の学校ならそうするだろう。一年が寺、二年が山、そして三年でようやく海ってな感じにグレードアップしたりして。
「なんか学校が出来たときからの伝統らしいっすよ、三学年合同合宿」
「ふーん? そっちの学校っていつからあんの?」
「たしか……大正から、だったかしら?」
「大正って今の何個前だっけ?」
「五、六個前だったような……」
「七つ前でしょ」
「おお、さすが委員長! さらっと答えを導き出すとはやるじゃないか。にしても結構な歴史ある高校なんだな。変な名前なのに」
「ん。南無三高校もなかなかに変」
「それな」
お互いに自己紹介を済ませて雑談をすること暫し、ようやく俺達の班のスタートの順番が回ってきた。
「どうする? 賞品狙いにいく?」
「もちろんっす!」
「当然だよなあ!」
「えー。のんびりがいい」
「私もゆっくり歩きたいかな。委員長さんは?」
「水嶋先輩、せめて苗字で呼んでもらえます? 他校の人にまで委員長呼ばわりされるのは辛い」
「あ、ごめんね。ついライ君達につられちゃって」
賞品狙う派が光介と瑠美。のんびりしたい派が伊織ちゃんと早百合さん。そして委員長が中立となった。俺の票次第でハイキングの難易度が決定されるわけだが、どうしたものだろうか。
たしかに学食の無料券は魅力的ではある。金曜日限定メニューのビーフシチューなんて、お高い洋食屋のメニューですと言われても納得してしまうクオリティだしな。
しかし無料券を勝ち取ったとしても、それを使えるのは俺達南無三高校の生徒のみ。そして蝶望蘭茉側の賞品の話題が三人から上がらないと言うことは、こっちの賞品ほど魅力がないのだろう。
「ん~、じゃあゆっくり回るか」
「「えー……」」
悪いな光介と瑠美。俺は学食無料券よりも、美少女達との時間をゆっくり堪能することを選ばせてもらうぜ!
忘れがちな設定ですが、本作は現代より結構未来のお話です。
ライトのパーティーメンバーがどんなだったか忘れたというそこのあなた!
本作をもう一周してみてください。ここにたどり着くまでにどんなキャラだったかまた忘れている筈です。