林間合宿開始
バニーちゃんの勧誘を成功させ、翌日の日曜日。
ダンジョンに行ってさっそくDPを使いきった鳥頭達をしかり、Q・ビシソワーズと世界樹についてあれやこれやと話し合い、ついでに世界樹の採取ポイントを巡って生産所にこもる。
今回作るのは世界樹装備一式だ。手甲、脚甲、鎧、額当て、それから木刀と小槍。この装備を揃えて、剣と槍の同時使用の練習に使おうと思っている。
インテリア改良に使えそうな素材は揃っていないが、練習だけでも早めに始めたほうがいいだろうと言う判断だ。と言っても今日はやらないけどな。何しろショッピングモールと遊園地のオープンが控えている。この準備がまた大変で大変で……何でこんな施設作ったんだ俺は?
途中、イキったバニーちゃんが子兎達にボコられて舎弟になるなんてトラブルもあったが、なんとか準備を終えることができた。あとは次のゲーム内時間の昼を迎え次第オープンするだけなんだが……正直もう限界だ。こんなのゲームじゃねーよ、ただの労働だよ。
明日から林間合宿もあるし、なによりもう疲労がピークなので寝ることにする。なーに、俺よりもブラウニーさんが居てくれた方がはるかに助かるだろうし問題無いっしょ。てことでお休みグンナイ!
「おっす悠、いつにも増してテンション低いな」
「……ぉぅ」
低血圧+普段の通学より重い荷物+三日間の勉強地獄=今の俺だ。昨日全力で働いたのも原因の一つかもしれない。
「てかさー、せっかくオープンに間に合わせてファースに戻ったのに、ログアウトしてるってどういう事だよ?」
「今の俺を見ろ。それが答えだ」
「なるほど、準備で燃え尽きたか。でも勿体ねーなぁ、準備した側としては当然知ってるだろうけど、あんなド派手なイベントに参加しないなんて」
「……ド派手?」
いったい何の話だ?オープンイベントなんて適当にテープカットして終わりじゃねーの?
「おいおい、あれで派手じゃないとでも言うつもりか?昼間はパレードが街中練り歩いて、夜になったら盛大に10万発の花火……えっ、何その顔、もしかして悠ノータッチなわけ?」
「……寝耳に水とは正にこの事よ。とりあえず光介、昨日何があったのか詳しく教えろ」
バニーガールにいいように誘導され散財する野郎共、施設内で布教活動をしようとして警備員につまみ出されるレスラー、突如開催されるマスコットキャラによるゲリラヒーローショー、何故か視察にやって来た姫様、ダンジョンはどこなのです!?と泣き叫ぶ迷子、分身までして全てのアトラクションに一番乗りを果たした大人げない神。軽く聞いただけで、これだけの珍事が一度に発生していたことがわかった。
「ははは、寝といてよかったわ。そんなカオスな状況じゃさすがに脳の処理が追い付かねぇよ」
「えー?めっちゃ楽しかったぜ?」
「そりゃ客だからだろ。……まあ、俺も疲れてなければ普通に楽しんでたろうけども」
その場合、よりカオスな状況になっているのは明らかだ。
朝の低血圧な状態、尚且つ客観的な視点からその場を想像しているからこそヤバいなって感想が浮かんだだけで、通常運転の俺ならばまず間違いなくその状況で調子に乗って更なる燃料を投入する。そして何かしらやらかす。
そういったことを回避する意味でも、昨日は寝といて正解だったと言えるだろう。
「しっかし今日から三日間もスプルド出来ないのは辛いよなー」
「三日目には帰れるんだから、出来ないのは今日明日の二日だけだろ」
「どっちにしても長い!MMOってやつはな、一日放置するだけでも結構な差が出るんだぜ!?」
「別にトッププレイヤーでもないんだからよくね?」
「そりゃそうなんだけどさー、やっぱ一日の終わりにモンスターと戦わないと気持ちよく眠れないじゃん?」
「いやねーよ、そんなことしなくてもぐっすり眠れるわ」
そんな会話をしている間に二年生全員が揃い、クラス毎にバスに乗り込むことに。そこから約一時間の暇な道中になるわけだが、聞こえてくる会話の中に、明らかにうちのホームの話があって困る。
施設に関しては概ね好評そうではあるものの、やはりプレイヤー個人であんなホームを所持しているとマイナスの感情も向けられるみたいで、チート扱いされているようだ。
反論してやりたいところだが、胸に手を当てて暫し考えてみる。チート、チートかぁ……。やたらと自分の持つ技術を俺に吸収させようとしてくる各分野の元トップ達、俺が寝てる間に全てを終わらせてくれる超絶お手伝い妖精のブラウニーさん、ボスモンスターすら瞬殺する鳥×3。
うーん……一切チート行為をしてないのに、あながちチート扱いも間違ってない気がしてくるから不思議だ。とくにブラウニーさんが酷い。
ま、今更ブラウニーさんと契約解除なんてする気は毛頭ない。もし文句言ってる彼らにゲーム内で会うことがあったら、ダンジョンチケットでも束で渡して俺のダンジョンのDP稼ぎ……んっんん、レアアイテムの採取が捗るようにしてやろう。きっと涙を流しながら喜んでくれるぞ。
「悠、お前なんか悪い顔してるぞ?」
「ん?ちょっと酔ったかな?」
「顔色が悪いんじゃなくて悪い顔してんだってば!」
「いやー、はやく合宿終わらないかなー。スプルド超やりたいわ!」
「さっきと言ってること違くね!?」
「光介、人は常に進歩するものなのだよ。っと、やっと到着したみたいだな」
「ここから三日間勉強漬けかぁ。本当にさっさと……ん?」
「どうした?……これは!?」
南無三高等学校様。これはどうでもいい。変な名前の高校だが、うちの学校のことだ。しかし!隣にもう一つ別の高校を歓迎するパネルがあるではないか!
蝶望蘭茉女子高等学校様。まさかの女子高の合宿と会場がダブる奇跡よ!これだけで野郎共のやる気が五割増しになったのを肌で感じるぜ!
林間合宿、いいじゃないか!楽しい三日間になりそうだぜ!
高校の名前は両校とも適当につけました。
同じ名前の高校ないよね……?
追記、あったみたいなので女子校の名前をチェンジ!
チョモランマって読め!!