勧誘
新しくレビュー頂きました!
それなのに安定して投稿できない作者は反省すべきですね。
全て途切れることなく開催されるゲームのイベントが悪いんや……。
「話が長い!!!」
「は? たかだか二、三分の話もまともに聞けないんですか貴方は?」
「え……? あ、ほら、あれだよ。全く興味ない話って異様に長く感じるじゃん?朝礼での校長のスピーチとかさ!」
「私の話は貧血起こすレベルで退屈だって言いたいんですか!?」
「どうどう、言葉のあやだ。俺に一切悪気はない」
てかこのゲームの中にある学校の校長も話が長いのか。学校には近づかないようにしよう。
さて、三分で語るバニーちゃん身の上話を俺がくっそ長く感じた理由だが、それはずばり最近使ってなかった第四の壁認識能力と混線をおこしてしまったからだ。ここんとこバニーちゃんを中心の話が進んでいたじゃん?あれを俺も見ちゃったのよね。モンスターとの戦いの様子を除けば、バニーちゃんが話してくれた内容とたいした差はなかったので、暇潰しに善意100%のナレーションを付け加えてみたりしたのに長く感じたんだから不思議だ。体感時間にして一月程に感じたぞ。
「バニーちゃんや、人のことをそんな喉笛狙う獣みたいな目で見つめるのはやめなさい。一応俺この施設のオーナーだからね?」
「はあ!?この金のなる木、もとい素晴らしい施設が貴方なんかの所有物ですって!?なんで!!」
「なんでって言われてもなぁ」
整地して、建物の材料集めて、町の皆で形にしたからとしか言い様がない。え?殆どブラウニーさんが作ってくれてた?ははは、ブラウニーさんは俺と契約してるんだから俺が働いたのと同じことよ。てかそろそろブラウニーさんの姿を見てみたいんだが、会える日は来るのだろうか?
それはさておき、こんな説明をしてもバニーちゃんは納得してくれないだろうし、もっとシンプルに答えるなら――
「運が良かったから?」
「いっそ清々しいほど腹立たしい答えですね!」
「だって不正と疑われるくらいにLUK高いからね俺!」
「くっ、あの荒稼ぎの正体も高いLUKが原因だったって訳ですか……」
「だからそう睨むなって。カジノを追い出されたのは何もバニーちゃんだけじゃないんだからさ」
「……と言うと?」
「俺、あの後さらに稼ぎまくって出禁くらっちゃったんだよね」
「当然でしょう、自業自得では?」
「おう、そのセリフ鏡見てから言えや」
手が出そうになるのを必死で押さえつつ、なんとか表情を笑顔に戻し会話を続ける。
「コホン……俺とバニーちゃんはカジノを追い出された者どうしなんだから、
別にいがみ合う必要はないだろ?」
そもそも俺はイベントの導入かなにかだと思ってたくらいだ、苦労してクリアしたクエストの報酬に粗大ゴミを渡されるのと比べれば怒るほどの事でもないしな。罪を憎んで人を憎まずなんて言葉もある訳だし、ちょっとした勘違いからの暴走くらい水に流してやろうじゃないか。
「むーぅ。まあたしかに……百万歩くらい譲ってその意見に同意してあげなくもないですけどぉ」
そう言いながらバニーちゃんは部屋の出口へ向かって歩いて行く。
「おい、どこ行くんだよ?」
「帰るんですよ。貴方は私に対して特に思う所はないんでしょうけど、私の方は大ありなので。貴方がトップでさえなければここでバリバリ働けたのに……」
「もしかしてバックレる気?それは少し待ってもらおうか」
「嫌ですーぅ。もうこの際エリートとしての再起とか考えずに、ストレスフリーな職場を探す事に決めたので!」
回想でギラギラに燃え滾っていたあの情熱は、いったい何処へ消えてしまったのか。どうせバニーちゃんの性格じゃストレスフリーなんて無理だろうし、何よりジュリペさんが面接して仕事を全部丸投げ出来る程度には有能だと判断を下した人材を逃がす訳にはいかない。全ては俺が楽をする為に!
「まあまあそう言わずに。そうだ、今夜の宿はもう決めてあるのか?まだなら家に招待しよう」
「は?いきなり何なんですか気持ち悪い」
「ナンパだと思ったか?バカめ、100%ビジネスのお話よ!だからその汚物を見るような目を向けてくるのやめようぜ」
「しつこいですよ、ここで働く気はないって言ってるでしょう」
「話を聞くだけならタダなんだから、聞くだけ聞いていけって。上手い飯もサービスで付けるぞ?二度とサバイバル生活に戻れなくなるくらい上手い飯をな」
「それはこま……いえ別に困りませんけど、随分な自信ですね。お抱えのシェフでもいるんですか?」
「聞いて驚け、俺の手料理だ!」
「手料理ぃ?戦闘の合間に鍛えたレベル2、30がいいところの料理系スキルでしたら、事前情報無しでその辺の適当な店に飛び込んだ方がまだ美味しい食事になりますね」
「聞いて驚け、俺の調理術のレベルは84だ」
「はぁ?」
この反応、信じてないな?仕方ないスキル覧を表示して直接見せあげよう。
「ほれ」
「!?!?!?」
お?よくみたら85に上がってるじゃん。神様連中に世界樹の果実でデザート作ってやった影響だな。さて、驚き過ぎてバニーちゃんが固まってる間にホームに運んでしまおう。
「はっ!?なんですその異常なレベルは!……ってここ何処!?何この豪邸!?」
「ようやく再起動したか。今目の前に見えているその豪邸こそ俺の家だ」
「これが!?あっちのボロ小屋ではなくて!?」
「鋭いな。一人で使うにはこの家広すぎて落ち着かないからさ、普段はそのボロ小屋を使ってるんだよね」
あの小屋は、不用意にオブジェクト化してしまったファフニールの尻尾の下敷きになり崩壊した小屋を修繕した物でもある。俺のホームエリアに存在する建物の中で、この小屋だけが唯一俺の力のみで建設されている。景観を壊すから撤去したいとのブラウニーさんからの申請を突っぱねて残しておくくらいには愛着がある。
そしてブラウニーさんが本気を出した結果、屋敷の規模を通り越してもはや城レベルになっているこの豪邸の中には、今回を合わせてたったの三回しか入っていない体たらく。なので人を入れるのはバニーちゃんが初だったりする。
「ニャー?」
「おうセレネ、良いタイミングで現れてくれたな。そろそろ飯作るから他の連中呼んで来てくれ」
「ニャ……」
「えっ、なんで呆れた顔してんの?」
「ンニャウ」
セレネがおもむろに影から取り出した物体、それは世界樹の果実だった。
「ああ、そう言えば子兎達に先に食ってろって渡したんだっけ。忘れてたわ」
つまりセレネは一向に戻って来ない俺を探してここに現れたってことか。そりゃ呆れられるわな。
「そ、それ!まさか世界樹の果実ですか!?」
「よく分かったな、鑑定でもした?とりあえずデザートにはこれ出すぞ」
「……ゴクリ」
「ここまで来て話を聞かないなんて選択肢は無いよなぁ?」
「……は」
「は?」
「話を聞くだけですからね!」
よし、餌に食いついた!ククク、これで作戦の八割は成功したようなものよ。
それにしてもバニーちゃん、涎垂らし過ぎでは?
おまけ
・ライリーフのホーム
地上5階建て、更に地下室まである規格外のホーム。広すぎてもて余すのは当然だ!
庭もブラウニーさんが整備してくれているので完璧な仕上がり……なのだが、ライリーフ手製のボロ小屋が素人目に見ても全てを台無しにしている。キャンプファイヤーに使うのにちょうどいい木材の量なので、解体される日も近い。