地神との遭遇
投稿遅れた上に短くてすまぬ
神殿内に並ぶ五体の像、その中央に位置するのが今回の試練を送りつけてきた地神の像だ。改めてじっくりと観察してみると、実にたわわな果実をお持ちだという事が見てとれる。そのサイズたるやアイシャさんクラス、大地を司る豊穣の女神に相応しい迫力をしている。右隣のツルペタなレーレイ様像が可哀想になってくるぜ。
《君、わたしに喧嘩売ってるのかな?》
「デフォルトで心読むのやめてくれません?」
まだ呼び掛けてもいないのに出て来ないでほしい。更に言うなら今日用があるのはレーレイ様ではなくおっぱい様の方だ、お子様はお子様らしく兄弟と仲良くカードゲームでもして遊んでてどうぞ。
《心なんて読めないよ。ウェネアとわたしの像見比べて、哀れみのこもった視線なんて向けてくれば誰でも分かるから》
「くっ、ポーカーフェイスが崩れていたか! でも呼び掛ける前から俺のこと見てたんだな、何故に?」
《ウェネアの試練クリアしたでしょ? だから来ると思って待ってたんだ》
「ウェネア? ああ、おっぱい様のことか」
《せめて地神って呼んでくださいぃ~》
「む!?」
なんてこった、地神の石像のおっぱいから声がするではないか! くっ、石像なのが悔やまれるな。これが本体だったならおっぱいガン見しながら会話できたのに。
《またアホな事考えてるでしょ君》
「アホな事とは失礼だなレーレイ様。おっぱいを見つめることは健康にもいいって昔何かの研究で証明されてたし、きっと人として真っ当な事だぜ?」
《やだ、プレイヤーが普段いる世界って変人ばっかりなの?》
「否定はしない」
何しろ我が国に向かって「奴らは未来に生きてる」なんて言っていた国々もいつの間にかその残念な未来に追い付き、一緒になって切磋琢磨しちゃっているくらいなのだから。サブカル文化は今や未来を通り越し、少し深い所を目にした一般人に「宇宙中からドン引きされる」と言わしめるまでに成長を遂げているのだ!
「さてと、悪ふざけはこの辺にしておくとして……ウェネア様、だっけ? いきなり試練達成ってのは何事よ?」
《あ、ふざけてただけでしたかぁ。えっとですねぇ、世界樹あるじゃないですかぁ? あれを育ててくれたので試練達成なんですぅ》
「いや、どうしてクエスト受けてもいないのに達成扱いなのかが聞きたいんだけど」
《ああ、そう言う意味ですかぁ。そのぉ、実は世界樹の果実が欲しくってやっちゃいましたぁ。先に試練達成にしておけば渡して貰えるかなぁと思ってぇ》
「物欲にまみれてんなー」
まあ世界樹の果実は神でも滅多に食べることが出来ないってフレーバーテキストに書いてあったし、味を知っている俺からすればその気持ちも分からなくはない。
あれ? でも前に世界樹の果実あげなかったっけ? グーヌートへの嫌がらせの為に、グーヌートを除く四体の神に一つずつ渡して、渡して……ないな。何だかんだで後回しにした挙げ句、小兎達に振る舞ったんだった。
「欲しいってんならあげてもいいけど、それくらいなら普通に試練出しとけば済んだんじゃね? 試練って強制なんだしさ」
《私も本当ならそうしたかったんですよけどぉ、貴方がまったく話し掛けて来なかったので仕方なくなんですぅ》
「ん? こっちから話し掛けないと試練って発生しないのか?」
《そうですよぉ?》
思い返してみると、確かに試練は俺から石像に向かって話し掛けた後に出ていた。グーヌートの時はウサ公討伐の為のお祈りで、レーレイ様の時は迷子のティルナートを引き取ってもらいにだったかな? レーレン様の時は……ああ、フォル婆が伝言預かってて呼び出されたんだっけ。
「そうだよ、レーレン様の時みたくフォル婆に伝言頼めばよかったのに」
《……その手がありましたかぁ》
《ダメでしょウェネア。あのおバカと違ってわたし達は簡単に干渉できないんだから》
《でもどのみち無理をするならフォルに頼んだ方が穏便だったんじゃないかしらぁ?》
《それも今更よね。それだと次の世界樹を育ててもらう事になるし、やっちゃったものは仕方ないんだからとっとと世界樹の果実貰ってお茶にしましょう?》
「今更なんだけど、石像と石像が喋ってるように見えて会話に混ざり難いな」
一対一でなら構わないんだが、三人での会話となると困る。だって端から見たら俺が頭のおかしい人になってしまう。プレイヤーや住人の少ないファースだからいいけど、これが他の街の神殿だったら確実に変な目で見られること請け合いである。
「グーヌートの野郎みたいにデフォルメ分身出してくれよ。俺が試練達成してるんだしできるだろ?」
《デフォ……? ああ、分霊の事ね。それもいいけど、折角だし貴方をこっちに呼ぼうかな》
「は?」
《レーレイ、二人だと難しいわよぉ?》
《ちょっと待ってて。今レーレン連れてくるから!》
困惑しながら待つこと数分、レーレン様の像から泣き言が聞こえてきた。
《酷い! 横暴だ! 100年ぶりの超大作ドミノだったのに! あとちょっとで完成だったのに!》
《ごめんってば。とっておきのおやつ食べさせてあげるから許してよ》
《とっておき!? わーい! さっすがレーレイ、話がわかるぅ! そこで提案なんだけど、お小遣いの増額もですね……》
《それはダメ》
《ちぇっ……あ、バルムンク伯爵じゃん。おひさ~》
「仮面着けてないのにバルムンク伯爵言うなし。それで? これから何する気なんだ?」
《貴方をこっちに呼ぶって言ったでしょ? すぐに終わるからちょっとじっとしてて》
レーレイ様がそう言うと、ウェネア、レーレン、レーレイの像が光だし、俺の足下に魔法陣が出現した。像の光は次第に大きくなり、魔法陣も形を変えながら光を増す。そして――
「ッ!?」
「ようこそ神界へ」
気がつくと目の前には三柱の神が立っていた。