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全てがポテトに染まっても

―side父帝闘男爵―


 天が、地が、目に映る全ての物がポテトとなり、ポテトに沈み、ポテトとして生まれ変わる。

 一は全、全は一。であるならば、一であるポテトは全足りうると言う暴論こそがこの光景の本質である。


(ぬ、ぐぅ……!)


 あらゆる法則を無視し、全てをポテトとするこの秘奥義の代償は決して軽くはない。にもかかわらず、本来であれば数瞬維持するのみに止めるべきところを発動し続けている理由はただ一つ。


(ちょお!? 旦那ぁ! こんなの聞いてませんぜ!)


 全方位から押し寄せるポテトの濁流を相手に、彼の神鳥の系譜が今尚健在であるからだ。全身から放たれる何かによって、ポテトを全て粉砕しているからだ。

 しかしこの拮抗した状況は長く続くまい。

 まずあちらは未だ余力を残している。私の秘奥義に対し、全力で対応してはいるが……それは無駄口を叩く余裕があることからも明白だろう。

 それに対して、私は辛うじて苦悶の声を洩らすのがやっとである。

 秘奥義、我が身、大地の恵み也アブソリュート・ポテトワールド。例えどのような不毛の大地であれ、自身を糧とし、同胞に絶対の繁栄をもたらす覚悟の形。その発動の代償は私の力そのもの……即ち、()()()()()()

 急速に消え去って行く力、その喪失感に意識を失いそうになりながら耐え続けて、漸くこの拮抗を維持しているのだ。

 このままであれば、私は敗北する。蓄えた力の全てを使い潰し犬死するだろう。皇帝として、己の無能恥じ入るばかりである。

 たが、だがそれでもこの状況に意味はある。あらゆる物がポテトと化すこの秘奥義の中にあって唯一自由に動ける者が、頼もしき兄弟がいるのだから!


(ぬぅぅう! 兄者ァ!)

(ったくよぉ……兄弟使いが荒いぜ、皇帝陛下)

(ほわ!? このポテトの中で活動ができるなんて……そもそも武器はさっき壊れたんじゃなかったんですかい!?)


 ククッ、兄者の姿を見失ったか。それもこのポテトの海の中では無理からぬ事。

 さあ兄者よ。我等が栄光を……全てのポテトの為の楽園をその手にっ!


(ははッ! 手持ちが一つしかない、なんて言った覚えはないんだがな。見失ったまま落ちろ、ラストショットォ!!)


 兄者の渾身の一射は、あちらからの攻撃に威力を減衰されながらも突き進む。この戦い、私達の勝利だッ!!




――フルバースト。




(……な、に?)


 全てのポテトが消え去っていた。


(いやー、執念ってぇのは恐ろしいもんでさぁ。今の技、ファフニール相手でも使う事なんて無かったってのに)


 猛禽の王が、天から私達を見下ろしている。


(あんた等は誇っていい。あっしに切り札一枚切らせたんですからねえ)


 秘奥義すら容易く撃ち破る絶対強者が。


(さて、その上で質問でさぁ。まだ、続けますかい?)


 始めから、私達が勝てる道理などなかったのだ。

 神鳥に連なる者、ただそれだけであれば可能性もあっただろうが……相手が悪すぎた。

 全てがポテトに染まって尚、染めることの出来ない唯一の輝き。不滅はその形を変えて新たな世代へと受け継がれていたのだから。






―sideライリーフ―


 既に戦闘が終了したボスルームを映すモニターを前に、俺は固まっていた。


「控えめに言って、頭おかしい」


 はっきり言うとドン引きである。

 ノクティスが強いのは今更だが、まさかあの父帝闘男爵もそっち側だとは思わなかったわ。

 なんだよあの秘奥義!? 触れた物全てをポテトに変えるとか意味が分からんぞ! それに発動してから増殖するまでが速すぎるし、プレイヤーじゃ対処不可能だろ!

 ハァ……ハァ……ふぅ。まあ食らった所で一定時間状態異常:ポテトになるだけだから、いずれこのダンジョンに挑みに来るであろう本当に強い人達には関係ないな。世の中には飴玉になっても敵を圧倒する強者とかいるんだしセーフセーフ。


「だからこそノクティスのおかしさが際立つんだよなぁ……」


 俺は勘違いしていた。普段のあの超速連射攻撃は、フルバーストの効果によるものだと勝手に決めつけていた。

 それが実際はどうだよ? ファフニールとの戦闘でも通常攻撃しかしてなかっただと? バグキャラかよお前、俺はチートコードなんて使った覚えはないぞ。

 ドラゴンの肉を求めてファフニールLv10を周回した結果だって言うのなら、それはまあ分からなくもない。けどテイムした時にはもう同じ事出来たよなこいつ?

 いやー、つくづく鳥さん(ヴィルゾーヴ)と仲良くなっておいて良かったわ。こんなの敵に回す可能性があったとか、そんな本格的な詰み要素を作らなくてよかったぜ。

 でもそもそも俺があの島に連れ去られなければ、こんな危険物が誕生することもなかった訳で、しかもあと2羽が自由にフィールドを飛び回っているんだよな。

 ……うん、なるべく早めに確保しよう。


「さてと、ポテトがくっそ強いのは分かったし、正式にスカウトしに行くか」


 心が折れたまま放置じゃさすがに可哀想だしな。

 まあ本当はスカウトもノクティスに任せてもいいんだけど、奴らには聞かねばならない事がある。

 俺の作成したダンジョン、その中に存在する()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()について。

 っと、その前にノクティスの成長具合を確認しておくか。



テイムモンスター

レクス=ノクティス(鳥ガーハッピー)

Lv24/150→123/150


ステータス

HP 1200→4200

MP 6500→24200

STR 50→200

VIT 120→420

INT 4120→13750

MND 480→900

AGI 250→910

DEX 800→1400

LUK 40→310



 おー、もうそんなにレベル上がってんのか。狩られたファフニールの数を思うと目頭が熱くなるな。

 しっかし、確認したらもっと衝撃を受けると思ったんだけどなぁ。 あれ?大したことないじゃん、とか一瞬でも思っちゃった自分が怖い。

 元の数値が高かったせいで今一衝撃が薄いけど、INTの数値が5桁オーバーなのは改めて頭おかしい。

 あれだな、一言で言い表すなら……やっぱり鳥ガーハッピーは化物だって事だな。

今のうちに謝っておきます。

次回の投稿が一週間以上空いてしまうかもしれません。本当に申し訳ない!


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