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ポテトVSノクティス

(まずい、非常にまずいぞ!)

(皇帝陛下、いったいどういう事だ? 何故奴はいきなり消えた)

(くっ、ダンジョンとの繋がりが薄くなった……ボスモンスターの(くらい)を剥奪されたか! ええい忌々しい、始めから私など眼中になかったと言うのか!?)

(おい! 質問に答えろよ!)

(ああ、すまんな首領・フライド。まず奴がいきなり消えたのは……ダンジョンマスターとしての能力だと思われる)

(ダンジョンマスターは転移が出来るってのか。だがそれなら逃げたんじゃないのか?)

(いいや、それは違う。奴が転移したのはこの先にあるダンジョンマスター専用の部屋だ。私がボスモンスターでなくなったのがその証拠よ)

(ちょっと待て。そんな事が出来るなら、何故奴は最初からそうしなかったんだ? それならわざわざ呑気に歩いて向かう意味が分からんぞ)

(……気まぐれ、なのだろうよ。少なくとも奴にとってはな。その可能性を考えないでもなかったが、徒歩で現れた明らかに貧弱な奴の姿を目にした時に、私はこれならばダンジョンの支配権を奪えると思ってしまった。私の浅慮で国に危機を招いてしまった事をどうか許して欲しい)

(……まあ、やっちまったもんは仕方ねぇ。あいつ本当に弱そうだったしな。俺があんたの立場でも同じ事をしたろうさ)

(そう言ってくれるか、首領・フライドよ……)

(それに、まだ何もかもが終わった訳じゃねーんだろ?)

(当然だ。私をボスモンスターから外したという事は、新たなボスモンスターを奴が呼び出したという事。そのボスを我等が倒せば、ダンジョンマスターとの交渉も可能だろう……が、少なくとも奴は我等を倒せるだけの戦力を有しているのだろう。厳しい戦いになるが、付き合ってくれるか?)

(ははッ! 今更聞くまでもねーだろうが兄弟。そんなんだから皇帝になっても名前から男爵が消えねーんだよ!)

(……やはり兄者が皇帝になるべきだったのでは)

(ははッ! 今更言っても遅ぇんだよ!)




 もはや焦りも消え去り、気力を充実させながらダンジョンマスタールームへと繋がる通路の先を睨むポテト達。その様子をモニターで鑑賞していた俺は、頼もしい配下(ペット)に指令を下す。


「と言う訳で、あのポテトを正面から圧倒し、心をへし折って我がダンジョンの従順な兵士にするのがお前の任務だ!」

(旦那、あんた鬼ですかい?)


 ダンジョンの機能を使って呼び出し、一緒にポテトの様子を眺めていたノクティスはあまり乗り気ではないようだ。


(あちらさんも交渉がしたいってんですから、わざわざぶっ倒す必要もないでしょうよ。それに、ここじゃダメージも与えられないんでしょう?)

「はっはっは、普段ファフニール周回の為にモンスター倒しまくってる奴の発言とは思えないなおい。ポテト達にどんなバックボーンがあるのかは知らないが、遠慮なくやっちゃえよ。それに、このダンジョンは言わばお前達鳥ガーハッピーの巣だ。連中はそれを無断で占拠してデカい顔してたんだぜ?」

(む、そう言われるとイラッときやすね。でもそれなら完全に排除しちまった方がいいんじゃないですかい?)


 ノクティスの言う事にも一理ある。

 ポテト達を排除してしまえば、後腐れなく通常通りのダンジョン経営が出来る事だろう。だが、だがしかし……!


「正直DP的に美味しいから仲間にはしておきたい」

(DPってなんです?)

「ダンジョンを好きにカスタマイズするために必要な物だ。思った以上に貯めにくいみたいなんだよ」

(あ~、そりゃ切実っすねぇ。あいつ等がいれば配下を増やす分が丸々必要なくなるって事であってますかい?)

「そう言うこと! 何せ勝手に増えてたポテト達だ、これからもさぞポイントを浮かせる事が出来るだろうよ」


 雑魚モンスターの補充を気にする必要がなくなれば、その分を階層の拡張に使える。せっかくだし一層ずつ鳥ガーハッピー達に担当してもらって、ダンジョンのレイアウトも自由にさせてやりたい。


(それじゃ旦那、あっしらの快適なダンジョンライフの為にちょっくら行ってきまさぁ!)

「頑張れよー」


 さて、ここからは再びモニター越しの観戦だ。ポテト達がノクティス相手にどれだけ粘れるか……弱っちい俺では引き出せなかった奴らの本当の力を見せてもらおうか。




(……ッ!? このプレッシャー、来るか!)

(ははッ、姿を見る前から化物だって分かっちまうぜクソが……)


 通路の奥を睨み身構えるポテト達。そんなポテト達とは対称的に、ノクティスはゆったりと羽ばたきながら戦いの場に姿を見せる。


(お待たせいたしやした。野生の掟はご存知でしょう? あっしらの縄張りを荒らした罪、その身を以て償っていただきやす)


 強キャラの風格を漂わせて現れたノクティスを目にした瞬間、ポテトの皇帝は大いに取り乱した。


(ば、バカな……世界樹を守護する神鳥にして不滅の大怪鳥、ヴィルゾーヴに連なる者だと!?)

(何だってこんな所に……)


 首領の方はまだ落ち着いているように見えるが、手にしたポテトガンが震えている。


(先手くらいは譲ってやってもいいですぜ? もっとも、それでもあっしの攻撃の方が速いでしょうがね)

(くっ、兄者!)

(分かってる! ポテトガトリング!)


 ホクホクのポテトが戦場に乱れ舞う。

 なんてこった。あのポテトガン、水鉄砲ハイドロスプラッシャーには劣るけどクインティアより性能高いのか。技名叫んだってことはスキルかアーツなんだろうけど、それでもレア素材をかき集めて完成させた作品に並ばれるのは悔しいもんだ。

 ただ、それ以上に悔しい思いを首領はすることになる。何故なら――


(フェザーショット)

(なっ!?)


 ノクティスの連射能力はそれを遥かに上回り、尚且つ威力も桁違いなのだから。

 ノクティスの攻撃により、ホクホクのポテトは全て命中することなくマッシュポテトへと変貌した。

 完全に画面の向こうで起きた事なので、ふと疑問が浮かんでしまったのだが……このマッシュポテトもいつかスマッシュポテトになるのだろうか?

 スマッシュポテトはマッシュされたポテトの魂が集まった物だと言う。畑へ足を踏み入れた者をスマッシュするのも、かつて自分達がマッシュされた恨みを晴らすためだとか。

 首領はポテトを武器にしている。であればポテト達から恨まれている筈だ。それなのに首領……う~ん分からん。


(ぬわぁああ!!)

(ぐおおおお!!)


 はっ!? どうでもいい思考に囚われている間に戦況が動いているじゃないか! クダラナイ事考えてる暇があるならちゃんと観戦しないとだよな!


(ぬぅう、なんと言う暴威……)

(くっ、今の攻撃で銃がイカれちまった)

(まだ諦めないんで? 正直そっちに勝ち目は無いと思うんですがね)

(それでも、諦める事は出来んのだ……)

(応よ。どのみちダメージはねぇんだ、気力が続く限り食らいついてやらァ! 例えステゴロだろうとな!)


 武器を失った首領が駆ける。空を舞うノクティスには届きよう筈もないが、ノクティスの注意を一瞬引く事には成功した。その一瞬に父帝闘男爵は賭けたのだ。


(秘奥義! 我が身、大地の恵み也アブソリュート・ポテトワールド

(ほわ!?)


 直後、世界はポテトに塗り潰された。

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