表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/285

チュートリアルで詰んだかもしれない.18

普段より少し長めです

 ぬおぉぉ……。めっちゃ痛い……!結構な高さから落とされた影響だろう。現在スタン中で頭がくらくらする。

 俺の攻撃は届いた筈だが、ボス兎はどうなっただろうか?



 追撃が来ないままスタンが解けた。いったい奴はどこにいる?キョロキョロと辺りを見渡すと、気絶状態のボス兎が壁の側に倒れていた。しかも【蹴り兎の天敵】の効果で威力の上がった俺の攻撃と落下によるダメージで、なんとHPが残り4割まで削れていた!ラッキー!このチャンスを逃せば次はないだろう。


「悪く思うなよウサ公。俺にはこれしかお前に勝つ方法がなさそうだからな」


 足を持っておもいっきり壁に叩きつける!よし、いいダメージだ!もう一度!更にもういっちょ!


(ぐっ、不覚!さすがに慢心が過ぎたか……)

「ちっ、起きたか!だがこれで決まりだっ!!」

(甘いっ!)


 ボス兎は驚くべき脚力で、足を持った俺を逆に壁に叩きつけた。


「だー!ちくしょう、大人しくやられとけっての!」

(そう簡単にやられはせん。空脚の力を手に入れていたことには驚かされたが、分かっていればどうとでも対処できる)


 苦し紛れに石を投げつけるが、軽く避けられ蹴り飛ばされた。奴の残りのHPは1割程。だが先ほどまでと違って本気で襲ってくるだろう。もう奥義の時のような隙は望めない。

それに悪いことってのは続くものだ。

異様なプレッシャーを感じる。


(怪我の功名、と言ったところか。HPが削られたことで奇しくも最後の能力が発動したらしい。試そう、などとは最早言わん。我が全力を持ってお前を叩き潰す!)


 奥義を使った時以上にオーラが輝き、色も赤黒いものに変わっていた。変化はそれだけじゃない。バチバチと全身から稲妻が迸る。どうやら体毛に貯めていた電気の量まで増大したようだ。


「は、はは、変身まで残してるなんて無理ゲー過ぎるっての」


 乾いた笑いが出てしまってもしかたないよな。ここまで来たんだ、最後までやってやんよ!【ウォーキング・デッド】が事故るまで足掻き続けてやる!








 なんて意気込んだはいいものの、やはりスペック差がありすぎてサンドバッグ状態だ。

 動きはなんとかギリギリ目で追えている。でも身体がついてこないのよ。攻撃を防ごうとする腕の遅いこと遅いこと。焦れったくて仕方ない。

 いっそ防ぐの諦めようかな?防ごうとして防げないなら。それは防がなくても同じ事よ。大人しくボディや顔面を差し出してしまえ。痛いことに変わりはないのだから、せめて確実に痛みが来ると覚悟しておけば反撃のチャンスに繋げられるんじゃないか?はぁ……やるしかないかぁ。


(ふん、防ぐ事すら諦めたか。だが容赦はしない。確実に仕留めるまで手は緩めん!)

「ぐ、がはっ。手、じゃ、なくて、足だろう、が…ゲホッ」


 反撃のチャンスはまだ訪れない。死なない俺も大概だが、全く休むことなく攻撃を続けてくるこいつも異常だ。そろそろ休んでくれてもいいんだぜ?俺が反撃してやるからさ。


(……っ)


 ん?今一瞬動きが鈍ったか?蹴りの苛烈さは変わらないが、どことなく表情に焦りが見える……ような気がする。

 煽ってみるか?幸い痛みにはかなり慣れてきたし、軽口くらい余裕で叩ける。


「へい、ウサ公、なんか、無理、してんじゃ、なーい?」

(……ふん)


返答はなし、か。だが、またブレたな。反撃してみたが避けられた。()()()()()()()

 確実に体力の限界は近づいて来ているようだ。すかさず石を投げつける。避けずに蹴りで迎撃してきた。


(ちっ!)


 よく見るといつの間にかオーラが消え去り、稲妻もない。


「へへっ、変身は時間制限付きだったのか?」

(……我も運がない。まさかデメリット付きの能力だったとはな)


 息も絶え絶えにボス兎は答える。こいつの性格からして、格上に挑む為の能力だったのではないだろうか?

 残り僅かなHPでも諦めず、全身全霊を持って強敵を打ち倒す。俺の持っている逆境と似ているが、更に条件が厳しくデメリットまである最後の切り札。

 死なないだけの格下に使うには最悪の切り札だったな!動きに精彩を欠き、ステータスが低下して尚こいつは俺より格上だろう。しかし漸く攻撃が届きそうだ。ここからが本番だぜ!


「ウサ公、そろそろ決着といこうや」

(ハァ…ハァ…、抜かせ。我は倒れぬ)

「そう、かい!」


 連続で石を投げつける。この際命中精度は低くてもいい。回避も迎撃も出来ない数で圧倒してやる!


(くっ、いったい幾つ懐にいれているのだ!)

「まだ後150個程残ってるぜ!」

(ええい、鬱陶しい!)


 幾つか掠めたがダメージは微々たるものだ。最小限の動きで回避され本命に放った石も蹴り飛ばされる。よーし、だんだんペースを掴んできたぞ?


 回避、回避、迎撃。回避、回避、迎撃。


 疲れのせいで動きが単調だ。これならアレが当たるかもしれない。タイミングを見計らえ。何せ俺の手札の中でも1度しか切れないカードだ。頼むから上手くいってくれよ!


 回避、回避、迎撃。回避、回避、迎撃。回避、回避、迎撃。回避、回避、ここだ!


(痛っ!ナイフだと!?)

「その通り!初日以降ずっと出番のなかった初心者のナイフさんだ!片足貰ったぞ!」


 これで機動力は半減以下だ。最後は拳で決めてやんよ!


(まだだ!)


 ボス兎は二足歩行をやめて、両手を地面についた。いや、()()()

 まるで傷なんて無いかのようにかなりの速度で空を駆ける。次の一撃に全てを賭けるつもりなのだろう。消えていた筈のオーラを再び纏い真っ直ぐ俺に向かってきた。

 これに答えなきゃ男が廃るってもんだぜ!


(これで!)

「終わりだ!」










「ハァ…ハァ…ぐっ!」


 お互いにクリーンヒット。

 俺は感電状態で動けない。


(フッ、どうやらここまでのようだな)

「…………」

(なかなかに楽しかったぞ。もし次があるのなら、最初から全力で戦うと誓おう)





《ユニークモンスター『空脚無双・ラビットオブテンペスト』に勝利した!》

《EXP48000は戦神グーヌートに捧げられた!》

《アイテム、無双の雷毛を手に入れた!》

《アイテム、無双の嵐毛を手に入れた!》

《アイテム、無双の嵐核を手に入れた!》

《アイテム、空脚無双の魂珠を手に入れた!》

《称号【嵐脚無双】を獲得!》



 勝てた、か……これで戦神の試練も終わりだ。ボス兎め、最後に余計なフラグを立てていきやがって……。

 いいとも、次までに俺もまともな戦いができるようになってやるさ!

 称号の確認は後でいいや。疲れた。めちゃくちゃ疲れた。今は一歩も動きたくない。けど早く帰らないとな。

 ここは兎の巣穴だ。いつ次のキックラビットが出てくるともしれない。ボスに勝てたのにそこらの雑魚に負けたんじゃ格好つかないからな。


(おー。おじさんまけちゃったー)

(にんげんかったー)

(よわいのにへんなのー)

「あ、あのときの子兎達か!」


 どうしよう。めっちゃ気まずいんですけど!何故よりによって子兎達が出て来てしまったのか。どうすんの?倒すのか俺!?

 いやー無理っす!さすがにいたいけな子兎達は倒せない。


「えっと、その、お前らの仲間をいっぱい倒してしまった。すまん!」

(んー?)

(なんでー?)

(じゃくにくきょうしょくだよー?)

「えっ……」

(よわいものはー)

((たべられるー))

(つよくなったら)

((おもうままー))

「昨日までみゅうみゅう鳴いてたのになんて殺伐な……」


これが野生か。


(((だからけいけんちおいてけー!!)))

「えっちょっ!い、痛い!地味に痛いぞ!ぐあー!!」




 あいつら成長早すぎんだろ。普通に死に戻ったぞおい!子兎にやられたの俺が初なんじゃないか?

 ハァ……。移動の手間が省けたと喜ぶべきか。いずれあの中からネームドモンスターになる奴が現れるかもしれない。ユニークに至ることもあるだろう。その時は、リベンジにでも行こうかね。




 神殿に入ると神父が出迎えてくれた。


「おや、お戻りになりましたか。試練はどうでしたかな?」

「なんとかギリギリで達成できましたよ、神父様」

「素晴らしい!すぐにグーヌート様に報告をなさるといいでしょう」

「ええ、そうさせて貰います」


 グーヌートの野郎には文句が山ほどあるからな!


 5体の神の像、その左端に位置するグーヌートの像の前で形ばかりの祈りを捧げる。


(グーヌート様グーヌート様。一応試練は達成したけどふざけんな!俺から持ってった経験値で敵を強化とか聞いてないぞ!報酬には色をつけるべきだと断固抗議いたします。)


 言いたいことは例え神が相手でも言わなきゃね。言わなきゃ伝わらない想いなんて星の数ほどあるのだから。


《フハハハハ!弱き者よ、よくぞ試練を成し遂げた!なかなか見ごたえのある戦いであったぞ!ユニークモンスターを強化したことは罰当たりな貴様の言動への罰である!よって報酬は変わらぬ!減らさぬだけ有り難く思うがいい!》


《シークレットクエスト・戦神からの試練をクリアした!》

《報酬として称号【戦神の試練を越えし者】、シークレットジョブ戦神の使徒、戦神の剣・レプリカ、戦神の槍・レプリカを手に入れた!》


「ちっケチ臭い神様だぜ」

《聴こえているぞ、弱き者よ!》

「うぇ!?まだいたのか!」

《次の機会まで、その身を錆び付かせぬように精進に励むべし!ではさらばだ!》


 ちょっと待て!次ってなにさ!

 ハァ……今考えても仕方ない。とりあえず報酬でも確認しよう。

ケチ臭いと言ったが戦神の剣と槍がある。レプリカだとしてもなかなかの武器なんじゃないかな?

 さてさてボス兎のと合わせて称号から見ていきますかねぇ。



【嵐脚無双】

ネームドの枠を越えユニークに至りし無双の兎に勝利した証

効果

スキル【天翔天駆】【雷召嵐武】を獲得


 うぉ!さすがユニーク!まさかスキルを2つもくれるなんて気前がいい。

 1つ目の効果は天翔天駆が空歩の上位互換みたいなものか。使うのにMPを消費するみたいだけど、逆に言えばMPが続く限り自由に空中移動ができるってことだな。

 次の雷召嵐武もヤバい。ボス兎が最後に使ってきた技だ。デメリットはあるものの一定時間AGIとSTRを2倍にできるらしい。

 2倍、2倍?あれ?俺のステータスだとそんなに強くない?倍になっても一般的なプレイヤーのステータスに遠く及ばないぞ?

……………。

 きっといつか輝いてくれる、そう信じているよ?気を取り直してグーヌートから貰った称号を見てみよう。



【戦神の試練を越えし者】

戦神グーヌートから出された試練を見事成し遂げた者の証

効果

稀に戦神からおつかいを頼まれることがある※拒否不可能



……………は?おい、それだけか!?苦労してクリアしたのにそれだけなのか!!おつかいってパシりにされるってことだろ?デメリットしかねぇ!なんだこの称号!

 くっ、でも戦神の武器のレプリカ貰ってるもんな。この程度のデメリットで済むなら軽い方だろう。

 ジョブはどうだ?変なのじゃないよな?



シークレットジョブ

戦神の使徒 Lv1/1

このジョブは戦神のおつかい中自動でメインジョブにセットされます

このジョブをセットしている間の経験値は戦神グーヌートに奉納されます



 おい!また使えない物置いていきやがって!

 まぁ?こんなジョブでも余裕で戦闘に勝てるくらい武器の性能がいいんだよな?そうだよな?信じてるからな!



アイテム

戦神の剣・レプリカ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

技神レーレイが戯れに造り上げた戦神の剣のレプリカ

見た目も重さも実物と寸分も変わらない

これを持って寝ぼけたグーヌートが戦いに出向いてしまった程の完成度を誇る

あくまでインテリアなので武器としての性能は皆無

神殿や教会に寄贈すると大変喜ばれる


アイテム

戦神の槍・レプリカ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

技神レーレイが戯れに造り上げた戦神の槍のレプリカ

見た目も重さも実物と寸分も変わらない

これを持って寝ぼけたグーヌートが戦いに出向いてしまった程の完成度を誇る

あくまでインテリアなので武器としての性能は皆無

神殿や教会に寄贈すると大変喜ばれる



Fu○k you!!

俺は剣と槍をオブジェクト化して床に叩きつけた。

チートへの道は遠い

チュートリアルは後少しで終わる予定です

主人公が暴走さえしなければ、ですが……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] グーヌートさんグーヌートさん、正直に答えてくれ レプリカ持ってった憂さ晴らしだろコレ
[一言] クソゲーじゃね一か。あそこまで持ち上げといて、コレは無いわ一
[一言] あの難易度でこの報酬はクソゲー過ぎる笑
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ