楽しい銃作成
ファースへと移動した俺達は、一先ず生産所に向かい使えそうな手持ちのアイテムを並べて選別することにした。ラクスは新しい住居の確認がしたいと言ってホームに飛んで行ってしまったが、ついうっかりルクスのこと食べたりしないよな? ルクスは金ぴかでキラキラしてるからちょっと不安だなぁ……とか考えてる内に生産所に到着。
「とりあえず使えそうなアイテムはこんな所か。特に珍しい物はないんだが、見ての通り大きめの魔力結晶が手に入ってな。これを使えば威力の高い銃が作れると思うんだ」
「あー、ウォーヘッド? 一応借りてた銃バラしてみたんだけどさ、魔力結晶はどっちかって言うと弾数に影響してるっぽいぞ」
「ん? そうなのか?」
「結晶に込めたMP……魔力を消費して無属性の魔法を弾丸の代わりに放つって構造だったからな」
「じゃあ威力上げる役には立たないか……」
「いや、どっちにしろ大きい魔力結晶はあって損はないよ。威力上げるとその分消費魔力も増えるだろうしな」
ウォーヘッドから研究用に借りた銃は、貸してきた本人が安物だと言うだけあって引き金を引くと魔力結晶と銃に刻まれた術式が一瞬接触して魔法が発動するかなりシンプルな作りだった。
こんな構造だったので、術式さえ正しければ素材は何でもいいんじゃね?と考えて木製の物を試作して試し撃ちしてみた所……見事に暴発しやがった。
この事から強い銃を作るのに必要な物は3つだと俺は学んだ。それ即ち強力で頑丈な本体を形作る為の素材、高威力の魔法術式、そして大容量の魔力結晶!
この3つの中で特に問題だったのは魔法の術式だ。
普通の術式と違って銃専用にアレンジされているので、そこら辺の店で売っている攻撃魔法のスクロールを模写しても意味がないって所がかなり面倒だった。
だがそれも最早過ぎ去った過去の事よ。俺は一昨日ログアウトする前に何の気なしに寄ってみた雑貨屋でついに手に入れてしまったのだ。そう、この『スライムでも分かる簡単術式アレンジ術 魔銃編』をな!
クックック、これに載っている術式の変換方法を研究者のジョブスキルを使って研究しつくせばどんな魔法の術式だって銃に使えるって寸法よ!
「とりあえず威力高い銃作ってみるからさ、ウォーヘッドはその間に足りない物買いに行って来てくれる?」
「分かった。何買って来ればいいんだ?」
「なんか凄そうな魔法の術式が載ってる本」
「なんてアバウトな……それ本当に銃作るのに必要なのか?」
「力こそパワーだからな。金は惜しむなよ?」
「わ、分かった。行ってくる」
去り際に「俺、キメ顔であんな頭悪い発言する奴初めて見たわ……」とか聞こえた気がするが気にしない。多少説明のしかたが悪かったかもしれないが、意味はだいたい合ってるからな。きっと銃が完成したらウォーヘッドも力こそパワーだぜ!とはしゃぐに決まってるさ。
「買ってきたぞー」
「ナイスタイミング! こっちもちょうど試作品が完成した所だぜ」
「おお、早いな」
「まあ銃本体は前に作った奴がそのまま放置されてたからな。それに術式をちょちょいと刻んでやれば楽勝よ。外出て試し撃ちする?」
「もちろん! 早く貸してくれ!」
「あいよー、ほれ」
「うわっ、この悪趣味な金色……素材はファフニールか?」
「ペットが乱獲してくるせいで有り余ってるからな!」
ちなみにノクティスとルクスの羽も少し混ざってるのでちょっとやそっとの無茶じゃ壊れない優れものだぜ! そして性能はこんな感じ。
アイテム
黄金銃・ファブルカノン ★★★★★
ATK50 耐久値1200/1200 MP1000/1000
雷撃弾
反動軽減・小 ヘイト集中・小
黄金に輝く謎の銃
その圧倒的存在感で周囲の視線が集まる
最初にこの銃の性能を見た時ATKが低くて変だなーと思ったんだけど、どうやらこのATKは銃本体で殴った時に適用される数値みたいなんだよね。もう少し分かりやすく表示してほしいもんだぜ。
「おっといけね、的も用意しなきゃだよな」
「そんな物まで準備してたのか」
「ふっふっふ、実は銃よりも凄い物が出来ちゃったんだなーこれが」
「ただの的に凄いも何もないだろ?」
「ならば刮目して見るがいい! これこそが最近作ったアイテムの中でも最高クラスの完成度を誇る超アイテム……無限木人・ナグラレールだっ!」
「ただの木で出来たマネキンじゃねーか」
「見た目はな! でも性能は本当に凄いんだぞ?」
アイテム
無限木人・ナグラレール PM
我は物言わぬ木人、無限木人・ナグラレール
世界樹より別たれし木人なり
我はどのような攻撃も受け止めよう
例えこの身が砕かれようとも
即座に再生し次の攻撃を受け止めよう
躊躇う必要はない、それが我の存在意義なのだから
遠慮もいらない、覚悟は産み出されたその時に済ませた
さあ、全力で参られよ
「長いわ! なんだよこのフレーバーテキスト!? 攻撃しづらいだろーが!」
「俺に言うなよ。PMアイテムでもこう言う所は勝手に決まるんだからさ。それに本人?も遠慮すんなって言ってんだからドパンと派手にぶちかませばいいんだよ」
「……他の的じゃダメか?」
「ダメだね。こいつなら勝手に直るけど他の物は壊れるだろうが」
「そう言われるとなぁ……」
まあ別にドラグディザスターを的に使ってもいいんだけど、もう射撃耐性はゲットしてるからな。壊れてから直るまでの時間も長いし、今わざわざ壊すこともないだろう。
「さあ設置完了だ、覚悟を決めなウォーヘッド」
「くっ、すまねぇナグラレール……!」
ウォーヘッドが引き金を引く。その瞬間、銃に刻まれた術式が魔力結晶から魔力を吸い上げ即座に魔法を完成させる。
使用された魔法の名は雷竜召落。その弾丸は通常の物よりもずっと素早く標的に食らいつき、破壊の轟音を響かせた。
「うおお!?」
「おー、思ってたよりずっと派手だなこりゃ! まさかナグラレールが跡形もなく吹き飛んじまうなんてな」
「そ、そんな……ナグラレールぅ! ライリーフ! ナグラレールは再生するんじゃなかったのか!?」
「するよ? ほら、もう直り始めてるじゃん」
「よ、良かった……本当に吹き飛んで消えちまったのかとばかり……ってなんだこの銃は!? 威力が欲しいとは言ったがやり過ぎだろ!」
「やっぱり? 手持ちの本に書いてあった中で一番威力が高い物使ったんだけど……雷の上位魔法はやり過ぎだったか」
「でもスゲーよ。これがあれば未解放エリアのボスモンスターだって倒せるかもしれないぞ」
「あ、それは無理」
「いやいや、この威力を連射出来るなら余裕だって。多少反動がキツいけど、STR上げれば抑えられるだろうしよ」
「そうだな。確かに連射出来れば余裕だろうな」
「は? おい、まさか……」
「うん、それ一発しか撃てないんだわ。大砲の名は伊達じゃないぜ!」
術式を強力な物に変えれば当然消費されるMPも増える。それが上位魔法の物ともなれば、4桁あるMPを簡単に消費してしまうのは当たり前っちゃ当たり前の事だ。
「こんな物どう使えってんだよ……」
「追い詰められた時の切り札にいいじゃん。あとそれ試作品だから普通に普段使い出来る銃も作るぞ?」
「なら何でこんな物試し撃ちさせたんだ……?」
「最大でそれくらいの威力には出来るって分かりやすく伝えたくて。あっやっべー、そろそろ飯作んなきゃ! 今のを参考に威力と弾数の割合どれくらいがいいか考えてよ。飯食い終わったら作るからさ! それじゃまた後で!」
「おいちょっと待てって! ハァ……例が極端過ぎて参考にならねぇっての……なあ? ナグラレール」
「……」
「お前、本当に再生速度早いのな」
「……」
「……俺も飯食ってこよ」