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魔法の言葉

お待たせしました。

インフルじゃなかったけど40℃越えはアカンよね。

なおイベントは今から頑張る予定。

「おいエイルターナー? なんか聞いてた話と違くね? めっちゃ怒ってるじゃん!」

「どうすんのよこれ! こんな状態で本当に報酬なんて貰えるんでしょうね!?」


 公爵が怒りながら現れた瞬間、瞬時に俺を盾にした(ライ)とリーフが後ろからひそひそ声で俺を責めてきた。

 ここに連れてきた俺ですら報酬が貰えるか怪しいと思うこの状況、こいつらの不満と妙な事に巻き込まれそうな事への焦りは分かる。分かるけど俺の事盾にするのはどうなのよ? まあ昨日俺に絡んで来た時みたいな反応されるよりはマシだからいいけどさ……。

 おっといけね、二人に呆れてる内に屈強な兵士達が無言で睨みを利かせながら俺達を囲む包囲網を狭めて来ている。こんなむさ苦しい連中との押しくらまんじゅうは御免蒙るので、公爵の怒りを鎮めるパーフェクトコミュニケーションかましてやるぜ!


「公爵様俺ですよ俺! お久しぶりのライリーフです!」

「む? 貴様か……前回も言ったがアポ無しで来るな馬鹿者め。これでも私は色々と忙しい身なのだぞ」

「なるほど、ダイエットの為に分刻みのスケジュール管理をしてるのか。ストイックだな!」

「違うわ! いや、ダイエットのメニューもスケジュールには組み込んではいるが……そうではなくてだな」

「やっぱりな。だいぶ痩せてきてると思ったんだよ」

「そ、そうか? 貴様もやはりそう思うか! 少し前までは忌々しく思っていた姿見に移る私の姿が日に日に輝きを増している気がしたのは気のせいではなかったのだな!」

「ハハ、ソウデスネー」


 フハハ、華麗に目的達成! ダイエット中の人間の機嫌を取るに際し、あれ?痩せました?は魔法にすら匹敵すると言葉だと言っていたクラスメイトの玉城は正しかったのだ!

 いきなり名前の出てきたこいつは誰だって? ドッジボールの時かっこつけようとして瞬殺された大玉転がし六連覇の奴だよ。

 まあそれはともかく、本人の目にはどう写っているのか知らないが、少なくとも俺が見た限り公爵は前回会った時との変化がまるで感じられないダイナマイトボディのままだ。だがあの分厚い脂肪の下ではきっと筋肉がすくすく育っていると思うので強く生きてほしい。








「それで? 貴様は何をしに我が屋敷にやって来たのだ」


 椅子に座り優雅にティーブレイクを決め込む公爵に問われた。

 対する俺達はと言うと、屋敷には入れて貰えたが椅子に座ることも許されていない。まあ長居する気はないから別にいいんだけどさ……。


「俺がここに来る要件なんて1つだけだろ?」

「まさかもうシリウスが見つかったのか!? 今何処にいる!」

「ちょっ、落ち着けよ公爵。さすがにまだ見つけられてはいないんだけど、重要な手掛かりをゲット出来たんだ」

「どんな情報だ! 勿体ぶらず早く教えてくれ!」

「前にフードの男が怪しいって話になっただろ? 少し前にそいつが現れた時にモンスターから助けられた婆さんが聞かれたんだと、封呪の洞穴を知らないかってな」

「封呪の洞穴……? それがなんだと言うのだ」

「鈍いな公爵。ほぼほぼシリウス君で確定のフードの男が探してる場所だぜ? 俺達も同じようにその場所を探せば会える確率が増えるだろ」

「ふむ確かに……もし接触するよりも先に封呪の洞穴なる場所を見つけたとしても、やってくるのを待てば確実に会えると言う事だな?」

「あっちが先に見つけて用事を済ませてなければな」


 その場合は放っておいても勝手に帰って来るんじゃないかと俺は思ってる。それはシリウス君が家に帰って来ない理由がおそらく悪神にあるからだ。

 グーヌートの野郎が言うには悪神は復活していない、けど力は強まってる。封呪の洞穴って名前の場所を探してるくらいだし、悪神が復活出来なかった腹いせにきっと呪いでも掛けたんだろうよ。だからその呪いさえ解ければ自力で帰って来ると思うんだ。シリウス君が極度の方向音痴じゃなければね。


「情報感謝する、直ぐに配下に封呪の洞穴に関する情報を調べさせよう。下がっていいぞ」

「ちょい待ち! まだ話の途中だ」

「何? これ以上の情報があると言うのか!」

「そうじゃなくてな、さっきの情報仕入れる事が出来たのは若干不本意ではあるんだけど後ろのこいつらのおかげなんだわ」

「ほう、そうなのか」

「そうなのです。てな訳で軽~く報酬でもあげちゃってくれないかなーって」

「その為にわざわざ連れて来たと言うのか……」

「頼むよ公爵ぅ、案内してもらうのに約束しちゃったんだわ。その分俺の報酬からさっ引いちゃっていいからさ!」

「はぁ……勝手な奴め。まあいい、お前達よくやった。報酬は金と物どちらがいいか選べ」


 おや? 思ったよりずいぶんアッサリと報酬くれるんだな。てっきり言い争いにでもなるかと思ってたんだけど。


「なんだその不思議そうな物を見る顔は」

「あんた実は公爵の偽物だったりしない?」

「するか馬鹿者め! 私が正当な報酬を渋るような男に見えるとでも言う気か貴様」

「そうは言わないけどさ、公爵っていっつも怒ってるイメージあるじゃん?」

「ほほう、貴様私に喧嘩を売っているな? 普段であれば高貴な私がその様な安い挑発に乗ることはないが……ちょうどいい、休憩時間も終わる所だ、魔法少女なる珍妙な生物から教わったボクササイズなるダイエットの的にしてくれよう。護衛、奴を取り抑えよ」

「ストップ! 悪かったよ! 公爵はいつでも気前と恰幅のいい太っ腹なダンディだ! だからサンドバッグは止めてくれ!」


 てか今魔法少女って言ったかこのおっさん? 魔法少女って言えば夢とか希望とか愛とか、そんなキラキラした非物質をこねくりまわして整形してみましたみたいな代物だ。いったい何をどう間違えば珍妙なんて表現が出てくるんだろうか?

 ボクササイズなんて知ってるって事は確実にプレイヤーだろうし、俺の知ってる魔法少女は……筋肉モリモリのピッチリ衣装来た漢女(おとめ)だったわ。うん、ありゃ珍妙な生物扱いされても仕方ない。魔法少女状態の時はかなりレベル高い見た目なのになぁ……俺のファーストキスの時も魔法少女の姿だったなら――


「うっぷ、VRだからノーカウント……VRだから誰が何と言おうとノーカウントなんだ!」


 失ったままの方がいい記憶もある。なんで俺はこんな記憶を思い出してしまったのか! ハァ……ハァ……ふぅ、にしてもダイヤさんはなんでまた公爵と知り合う事になったんだろう? 今度魔法少女衣装を渡す時にでも聞いてみるか。







 その後無事に雷達が公爵から報酬を受け取り、エイルターナー邸ともおさらばした俺達は王都で解散することとなった。


「いやーなんか悪かったな、ちょっと道案内しただけでこんなにいい物貰っちまってよ」

「でも武器選ぶなんて雷は本当に馬鹿よねー! あたしみたいにもっと面白い物選べばいいのに」

「うるせーな! 何選ぼうがそれよりは絶対マシだからいいんたよ!」


 面白い物と言えば聞こえはいいが、リーフの選んだ物は抱き合う埴輪に噛みつくワニの像という控えめに言って頭のおかしい代物だ。念のため鑑定もしてみたが変わった効果もなければ値打ちがある訳でもない正真正銘のガラクタだ。

 選んだ本人は後々に隠しクエストでも発生することを期待してるんだと思うが、残念ながらその可能性は低いと思う。

 ついでだし他のメンバーが選んだ物も説明しておこうか。

 雷が選んだのは対霊効果のついた棍棒、ターナーが選んだのは体重が倍になるアクセサリー。そしてエイルはクリスタル製の鳥のオブジェを貰ってご満悦だ。どんだけラクス好きなんだよお前。


「んじゃ俺はマロン待たせてるからそろそろ行くな」

「あ? んだよエイルターナー、フレンド登録くらいしていけや」

「別にいいだろそんなの……」

「一緒に強敵と戦った仲だろ? な?」


 そう言いながら雷は肩を組んできた。そして小声で「その鳥に会えなくなるとエイルが落ち込みそうだから頼む!」だとさ。ちらりとエイルの方を見てみれば、さっきまでのご満悦顔から一転、ラクスを見つめながら今生の別れかよってくらい酷い顔でボロボロ涙を流してやかる。


「……あれはやベーな」

「だろ!? だからフレンド登録頼む!」

「分かったよ、承認してやるから早く送れ」

「サンキュー、マジで助かるぜ! あ、シリウスだっけ? マント野郎の情報見つけたら教えてやるよ」


 こうして俺は雷、リーフ、エイル、ターナーの四人とフレンドになった。

 どうせ探すなら封呪の洞穴を探して貰いたい所だけど、情報に関しては欠片も期待してないので余計なことは言わないでおこう。


「さーてと、フレンド登録も済んだし待ち合わせ場所に急ぎますか!」


 って言っても場所はアドベントのギルドだから迷う事もないし、転移門が使えるようになった今となっては遅れようがないんだけどな!

 まずは転移門でアドベントに転移! それからいつもの道順でギルドへ向かえばこの通り、何事もなく待ち合わせ場所に到着だぜ!


「お待たせー……ってウォーヘッドだけ? マロンとアケノさんは?」

「よおライリーフ……その鳥どうしたんだ?」

「テイムした」

「そ、そうか。あー、二人は別行動することになったみたいだ。お前の所にもメール届いてないか?」

「ちょい待ち……メール、メールっと。これか」


 どれどれ? 質の悪いプレイヤーに絡まれてた女性プレイヤーをアケノさんが助けてその流れで一緒に行動することになっちゃったから悪いんだけど兄貴と二人で遊んでくれ……マジかよ、アケノさん主人公力めっちゃ高いなおい。


「読み終わったか?」

「ああ、アケノさんスゲーな」

「前にライトの奴も似たようなことしてたけどな」

「マジで!?」


 まさか俺が知らない間にゲーム内とは言えそんなイケメンな行動を起こせるようになっていたとはな……。ちょっとした敗北感を感じるぜ。


「それでこれからどうするよ? 予定通りクエストでもやるか?」

「え? あー、そうだな……せっかくだしウォーヘッドの銃作るってのはどう? 今日ならテストしながら微調整もできるしさ」

「おっ、いいねぇ! なら報酬とは別にもう一丁頼んでもいいか? 金と素材は出すからよ」

「OK、ならさっさとファースに行こうか」


 厄災戦の報酬とは別にもう一丁作るなら、報酬の銃はとことん遊んじゃってもいいってことだよな? クックック、楽しくなってきたぜ!

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