ダンジョンのお勉強なのです!
「よく来たのですライリーフ! ではこれより立派なダンジョンマスターになる為の講習を開始するのです!」
「はい先生!」
「とてもいい返事なのです。先ずはダンジョンマスターの心得から学ぶのです」
「はい先生!」
ダンジョンマスター心得その一!
侵入者には常に厳格で威厳のある態度で振る舞うべし!
「これメルキア出来てないよね?」
「う、うるさいのです! ライリーフが来た時以外はちゃんとできてるのです!」
「ほんとに~?」
「本当なのです!」
ダンジョンマスター心得その二
DPの無駄遣いは避けるべし!
「何事も節約が大切なのです。欲しいアイテムや召喚したいモンスターがいたとしてもすぐにポイントを使うのではなく、一度よ~く考えてから本当に必要かどうか判断するのです」
「DPってのはダンジョンマスターにとってのお金みたいなものなのか」
「そうなのです! ダンジョンの拡張や進化にも使うのでなかなか貯められないのです……」
「ま、その辺はしっかり出来ると思うぜ? これでも家計の財布を預かる身だからな」
ダンジョンマスター心得その三!
情報収集を怠るべからず!
「常にダンジョンの流行りは移ろうもの。どんなトラップが有効なのか、どんなアイテムを設置すれば侵入者がより多くやって来るようになるかを正確に把握する事こそがDP大量獲得に繋がるのです!」
「ダンジョンにも流行なんてあるのか。でもそんなのどうやって調べるんだ?」
「他のダンジョンマスターと情報をやり取りしたり、月刊ダンジョン通信に連載されているコラムを読んだりするといいのです」
「月刊ダンジョン通信……なかなか侮れない雑誌だな」
「でも最後にものを言うのは自分の直感とセンスなのです。安易に流行りに乗っかってしまうと周りのダンジョンと侵入者の層が被ってしまってDPの伸びが悪くなってしまうのです」
「そういうとこ無駄にリアルだなぁ……」
「ダンジョンマスター同士は仲間でありライバルでもあるので仕方ないのです」
以上の3つがダンジョンマスター心得である。結構普通のことで安心した。
なんとなくメルキアのお母さんが子供の為にでっち上げた物のような気がしないでもないが極力守っていこう。
「心得の次はダンジョンの基本中の基本、ダンジョンの作成方法について説明するのです」
「ダンジョンコアを使えば自動的に作られるんじゃないのか?」
「チッチッチ、素人はこれだから困るのです。プロはコアを使う場所から吟味するのです!」
ダンジョンコアは使用した場所によって作成されるダンジョンが変化するぞ!
自分の理想のダンジョンを作成する第一歩として場所選びは重要なのだ!
「岩場なら洞窟っぽく、街中なら遺跡っぽくなるのです。ただ水辺でダンジョンを作成するのは止めておいた方がいいのです」
「そりゃまたどうして?」
「下手すると水没したダンジョンが作成されてしまって不便なのです。ああ言う所にダンジョンを構えるのは水生生物型のダンジョンマスターの特権なのです」
「なるほどねぇ」
「ライリーフはこの前連れてきたあの綺麗な猫ちゃんをボスモンスターにするのです? だったら草原とかで作るのがオススメなのです」
「いや、ボスは鳥共にしてもらう予定だよ」
「鳥モンスターなら森とか林がオススメなのです」
「森か林ね。了解」
メルキアのこの一言でダンジョンに世界樹を植えることが俺の中で決定した。世界樹のダンジョン……いろいろ危ない気がするぜ!
「次はダンジョンのモンスター達について説明するのです。ボスモンスター以外は基本的に倒されると消滅してしまうのでその都度補充が必要なのです」
「もしかしてそれにもDP使うの?」
「もちろんなのです。DPはダンジョンに侵入者が入ったり、その侵入者を撃退するか倒すかすると入るのですが……高価なモンスターばかり揃えていると多くの数を倒された時にDPの収支がマイナスになってしまうことがあるので注意が必要なのです」
「ああ、それでメルキアのダンジョンのモンスターは安そうなのが多いのか」
「ほ、補充用のDPが少なくて済むから全滅させられても収支はプラスなのです! だから悔しくなんかないのです!」
ちなみに勝率が一番低いボスモンスターは二層にいたコウモリで、ボス部屋にたどり着かれたら100%負けているらしい。そして意外なことに合体ホネホネは俺以外にはまだ負け無しなんだとか。
レッドボーンジェネラルさんの勝率は4割ちょっとと一層のボスとしては中々の好成績をキープしていて、尚且つモノケロームを使い始めてからの勝率は脅威の7割越え。
これはたぶん剣に状態異常耐性とリジェネの効果が付いていたせいだろう。他のプレイヤー達よ、マジですまん。
「あとモンスターは単体で購入するよりもスポーンサークルを買った方がお得なのです」
「スポーンサークル?」
「一日に100体まで登録されたモンスターが召喚できる魔法陣なのです。使わず日を跨いでしまった場合にも、最大で1000体まではストックしておけるのでコスパ最高なのです!」
「でもそんなにモンスター召喚することなんてあるのか?」
「人気のダンジョンなら日に10万体のモンスターを召喚している所もあるのです。私の所でも各種モンスターのスポーンサークルを20個ずつ稼働させているのです」
「そんなに!? あ、未だにここに張り付いてお宝のドロップ狙ってるプレイヤーが結構いるからか」
「彼等は何度も来てくれるのでDPがいっぱい貰えるのです。最後にホネホネに倒されてくれる所も最高なのです」
「奴等も自分達の行動がダンジョン育ててるとは思わないだろうなぁ……」
ダンジョンの勉強はまだまだ続くが、メルキアがカレーを待ちきれなくなってしまったので少し休憩だ。
「ライリーフ、早くカレーを出すのです!」
「そんなに急かさなくてもちゃんと出すって。ほれ、カレーとナンだ」
「はふぅ……凄くいい匂いなのです。んにゅ? れ、錬金の大釜でカレー作ったのです!?」
「ああ、サイズ的にちょうどいいからな。こいつでよくいろんな物作ってるよ」
「なんて勿体ない使い方……! 色々言いたいことはあるのですがカレーが冷めちゃったら悲しいのでお説教は後回しにしてあげるのです。いただきます!」
「はいよ、召し上がれ」
今回のカレーはメルキアのリクエスト通り甘口に仕上げてある。
竜骨スープをベースに野菜と肉とスパイス、それから隠し味に数種類のフルーツ……を入れすぎたせいで味の調整にちょーっとばかし手間取ってしまったが最終的にいい味になった。普段家でカレー作る時は中辛だから甘口作るのは苦手なんだよ。
「ハフ、ハフ……んんーっ! 久しぶりのカレーは最高なのです! しかも今回のナンにはチーズが入ってて幸せなのです!」
「チーズナン美味いよな」
(あー今日も働きまくってやったぜ。へーいダンマス~そろそろ飯にしようぜ……ってなんだァ!? おいずりーぞダンマス! なーに一人で旨そうなもん食ってんだよ!)
「む、ホネホネ。これは、ハフハフ……私が貰ったカレーだからあげないのです!」
「食べながら喋らない。お行儀悪いぞ?」
「ごめんなさいなのです。ホネホネは無視してカレーに集中するのです」
メルキアにとってダンジョンのボス<<<カレーなのか。ホネホネって一応このダンジョンの最後の砦だろ? そんな雑な扱いでいいの?
(なんて酷いダンマスなんだ……おい兄弟、勿論俺の分もあるよな?)
「え? ああうん。はいこれ」
(うっひょー待ってましたァ! この丸く艶やかで光を反射して輝くこの……この……ナニコレ?)
「溶かして丸めたオリハルコン」
(……おい人間、テメェにはこれが食い物に見えるってのか? ア"ァ?)
「逆に聞くが、一般人である俺が金属製の髑髏を見て普通に飯食うなんて考えるとでも? 貴重な金属提供してやったんだから有り難く食えよ」
(……)
「……」
(オーラインパクト!)
「当たるかバーカ!」
「二人とも仲良しなのです。ハフハフ」
おまけ
・オーラインパクト
全身にオーラを纏い、相手に向かって突進する技
攻撃を当てると纏っていたオーラが爆発する
オーラのおかげで非実体系のモンスターにも攻撃が当たるぞ!




