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ホネホネの超絶パワー

(ヒーハッハァ! 漸くたどり着いたか人間! 進化したうちのダンジョンにかなり苦戦しちゃったのかなァ?)

「ああ……このダンジョンは恐ろしい進化を遂げていたと認めざるをえない」

(そうだろそうだろ! やっぱなんだかんだ言ってもうちのダンマス天才だからな!)

「三層の壁からたまにオリハルコン採れるとか、そんなの時間忘れて入り浸っちゃうよね!」

(採掘に時間掛けてたんかい!)


 そうなんだよ。

 二層はさっさと攻略して中ボスの爆音蝙蝠も苦労せず倒した俺とセレネだったが、三層にはかなり時間を掛けてしまった。

 もちろん層を重ねる毎に雑魚モンスターも強くなるのでそこでもタイムロスしてはいるのだが、例のレアアイテムが手に入りやすい薄ぼんやり光ってる隠し採掘ポイントを血眼になって探し続けた結果三層に突入してから既に2時間近く経過している。

 それもこれも三層に入った瞬間に見つけた採掘ポイントでオリハルコンの欠片がドロップしてしまったのが悪い。三層中を探し回った甲斐あって剣一本くらいなら作れそうな量のオリハルコンが集まったからわりとウハウハだ。


(人様の家の壁を掘るとは常識のないやつめ。まあいい、奪われた俺のパーツと一緒にそのオリハルコンも返してもらうぜ!)

「あっすまん、お前からドロップした仮面なくなっちゃったんだよね」

(な、なん、だと……?)

「ちょっと前に災厄が復活したの知ってる? あいつに吸収されちゃってさー」

(よ……よ……)

「よ?」

(よくもやってくれやがったなコンチクショウがーッ!! もう許さん、取り巻きカモン!)

「お、お前達は……!」


 ボス部屋の奥から現れたのはマッディウォーターゴーレムとゴージャスミミックだった。


「――――」

(はぁ……何故美しい私がこんなことをしなければならないんですかネェ? 直接戦闘なんて柄じゃないし、何よりこの美しい装飾に傷でもついてしまったらどう責任とってくれるんですかネェ、ホネホネさーん?)

(ぶつぶつ文句言うなよナリキン。ダンジョンのボスモンスターとして戦えるんだから光栄だろうが!)

(偉そうにしちゃってまぁ……ドロヌマさんがいなきゃろくに戦えないの分かってるんですかネェ?)


 オリハルコンヘッドマスターだけじゃなく、マッディウォーターゴーレムとゴージャスミミックもネームドモンスターなのか。

 ホネホネ、ドロヌマ、ナリキン……控えめに言ってここのダンジョンマスターのネーミングセンスは壊滅的なのでは?


(へーん! それでも俺のスキルがあってこそだろうが!)

「――――」

(ドロヌマさんの言う通りですネェ。やるならさっさとやる、じゃないとま~たダンマスに怒られてしまいますからネェ)

「いったいお前ら3体でなにしようってんだ?」

(慌てんなよ人間、説明なんてまどろっこしいことはしねぇ! 直接見せてやるからよォ! スキル、混身融合!!)


 その宣言と共に金属製の髑髏は眩い輝きを撒き散らし、その光の中にマッディウォーターゴーレムとゴージャスミミックが吸い込まれる。

 少しして光が収まると、そこには一体のモンスターが佇んでいた。


(クックック、どうよ? これぞ俺達の混身体……ゴールデンウォーターゴーレムだぜ!)


 それはマッディウォーターゴーレムよりも一回り大きなモンスターだった。

 泥の代わりに金粉が溶け込んでいる水の中からはミミックとおぼしき物体が四肢を形作っているのが見てとれる。そして当然のように顔の位置にはホネホネことオリハルコンヘッドマスターが浮かんでいる。

 こいつはあまりにも謎過ぎる。一体何を考えてこんなモンスターをデザインしたのだろうか? あまりにもキモいしダサい!


(ふふん、驚愕のあまり声も出ないか? 無理もない、この無敵のボディを前に戦意を保つ事ができる訳がないからな)


 どう返すのがこの場合正解なのだろうか……髑髏なのにドヤ顔がうざすぎて正直あまりかかわり合いたくない。

 俺が返答に窮しているとボス部屋の奥から更にもう一体のモンスターが現れた。


「……」ひょこ

(おお! レッドボーンジェネラルちゃんじゃないか! もしかして俺を応援しに来てくれたのかな?)

「……」ふるふる

(ならデートのお誘い!? 参ったなぁ、今は戦闘中だから後にしてくれよベイビー)

「……」ごそごそ


 レッドボーンジェネラルは鎧からフリップボードを引っ張り出した。


『マスターからネームドモンスター達の戦いぶりを見てくるようにって言われたので』


 そこには丸っこい可愛らしい字でそう書かれていた。

 てかこのレッドボーンジェネラルさん一層のボスしてた個体だよね? 復活早くない? なんて眺めていると目(骨なので定かではないが)が合ってしまった。


「……」ぺこり


 会釈してきたよあの子。

 どうしよう、今更ながらに武器奪った挙げ句に壊しちゃった事に対する罪悪感がふつふつと沸き上がってきたぞ?


「おのれダンジョンマスター、なんて姑息な手を……!」

「……?」

(人間テメェ、何俺を差し置いてレッドボーンジェネラルちゃんと目と目で通じ合ってやがる? 許せん、今ので俺は完全にキレちまったぜ!)


 何を怒ったのか知らないが、合体モンスターは床を滑るように高速で移動してタックルを仕掛けてきた。だがそんな直線的な攻撃、俺には通じないぜ!


「よっと、んな攻撃が当たるかよ!」


 ベースがマッディウォーターゴーレムならきっとあの手が通じる筈。すれ違い様にクリーンを発動!


「ふっ、この三層の中でお前との戦闘が一番呆気なかったぜ」

「ニャー!」

「え? へぶぉ!?」


 ば、バカな……俺の使ったクリーンは完璧にゴーレムの身体を捉えていた! なのに何故消滅しないんだ!?


(甘いぜ人間。その手はもう俺達には通じねぇ!)

「くっ、いったいどう言うことだ……?」

(分からねぇか? 今の俺達はゴールデンウォーターゴーレムだと言った筈だぜ。マッディウォーターゴーレムは泥が汚れとみなされてクリーンの効果で倒されたが……金粉はクリーンに汚れと見なされない! よって俺達にクリーンは効かねぇのさ!)

「そ、そんな理由だったのか!」

(もっとも、仮に水の中の金粉が全て消え去ったとしても俺達は負けねぇがな。ミミック製の骨格、ゴーレムのコア、そして俺と言うヘッド! この3つの要素が揃っている限り無敵だぜ! ガーッハッハッハ!)


 なるほど……合体しているだけあって単体の時より丈夫で長持ちするって訳か。


「セレネ」

「ニャ?」

「俺は武器を奪うのは禁止って言ったよな?」

「ニャウ」

「その言葉を取り消すつもりはないが……モンスター自体がスティールで奪えるならやっちまえ! 頭がなければ合体も解けるだろうよ!」

「ニャ。ニャーッ!」

(ガーッハッハ……は? はぁ!?)

「さすがセレネ、スティールの精度100%の女よ」

「ニャフン!」


 メタリックな髑髏野郎のドヤ顔と違ってセレネのドヤ顔はやっぱり可愛いぜ。


(おかしいだろうが! 何で完全に融合していた俺をゴールデンウォーターゴーレムから引き剥がせるんだよ!?)

「確かにセレネのスティールだけならお前を引き剥がすのは無理だったかもしれないな」

(だよな! なのに何で俺はスティールされてるんだ!?)

「お前の離れたゴーレムをよく見てみな」

(ん? あれは……俺がいた頭部に何かあるだと?)

「俺がマジックで適当なアイテムとすり替えておいたのさ!」


 しかもあれは炭酸が飲みたくなった時にふざけて作ったシュワシュワの実とパチパチの実を限界濃度まで凝縮&圧縮した瓶詰めじゃないか。ちょっとでも衝撃を加えれば爆発する危険物を送りつけていたとは運がいい。


「ホネホネ君、このままじゃ寒いだろうから元の場所に送り返してあげよう」

(なんだハンデのつもりか? このホネホネ様はそんな情けをかけられる程落ちぶれちゃ……ちょっと待とうか兄弟。その顔絶対ろくでもないこと考えてるだろ? ストップ! 俺の敗けでいいからストップ!)

「はっはっは! 消し飛べ!」

(イィィィィヤァァァァア!?!?!?)


 投擲術のレベルが高い俺のコントロールはかなりのものだ。ホネホネは寸分違わず元の位置へと飛んでいき、ビンと激突して大爆発!



ピコン!

《ダンジョンのボスを討伐した》

《街に戻りますか? YES/NO》


 もちろん答えはNO。

 かなりノリノリでダンジョン攻略をしてしまったが、本来の目的はここのダンジョンマスターからダンジョンマスターになるための条件を聞き出すことだ。それをせずに帰ったんじゃダンジョンに来た意味がない。

 しかしこれには根本的な問題が一つある。

 すなわち、こんなアホな方法でダンジョン攻略しちゃった俺に、はたしてダンジョンマスターちゃんは情報を教えてくれるのだろうか?と言う点だ。

 無理そうだったらダンジョンの壁掘りまくってから帰ることにしよう。


毎回酷い戦闘ばかりですまない。

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