寝落ちからの復帰
投稿が遅れてしまい申し訳ありません。
寒くなるとどうしても睡魔に抗えなくてですね……。
「悠二夕食の時間よ。起きなさい」
「んぇ……?」
もうそんな時間だったのか。どうやら俺はすっかり眠りこけてしまっていたようだ。なんか母さんに起こされるの久しぶりだなぁ。
トイレを済ませてからリビングに向かうとそこには俺以外の家族が既に揃っていた。
「悠二、母さんがいるからってちょっと気が緩み過ぎなんじゃないか?」
「んなことないって。でも昨日はちょっと徹夜しちゃったからさ」
「それ、ゲームの話?」
「そだよ。てか姉さんもそろそろ初めてみたら? Ω様なんて最新型のダイブマシーンをただのベッドとして使い続けるのは勿体ないって」
「キャラは作ってあるわよ? 睡魔に抗えないだけ」
まあ気持ちは分かる。Ω様の寝心地は神の領域に達していると言っても過言ではないし、マッサージ機能を使った日には完全に骨抜きにされてしまうからな。むしろ怠け者の姉さんがキャラの作成だけでも終わらせていた事に驚きだ。
おっと、そんな事より今は夕食だ。
「今日はボロネーゼか。いっただっきまーす」
いやー相変わらず母さんの作る料理は美味いなぁ。
俺もゲームの影響でかなり料理の腕前が上がったしそろそろ追いつける頃合いかとも思っていたんだが……まだちょっと追いつけそうにない。
「それ、徹夜するほど面白いゲームなの?」
「えっ、母さんも興味あるの? まあ面白いけど徹夜してまでやるものじゃないよ。今回はイベント企画したら予想以上に人が集まっちゃって仕方なく死ぬ気で準備したんだ。それで……んん?」
おかしいな……そこからの記憶が曖昧だ。
でっかいバルムンクを作って、バルムンク伯爵として開会式を行ったことは覚えてる。
えっと、確かそこからは司会進行をして3回戦のスタートを見届けて……それから……それから……ッ!?
ここで記憶が途切れているだと!? まさか俺は寝落ちしてしまったのか!?
「や、ヤバい! まだ大会中じゃねーかッ!!」
「あっコラ悠二! 飯はどうするんだー!?」
「後で食べるからラップしといてー!」
「まったく……悠二の奴少しゲームに夢中になり過ぎじゃないか?」
「そうね。少し対策を考える必要があるかもしれないわ。ルシフェル、今夜付き合いなさい」
「千夏さん……名前で呼ぶのは止めてってば……」
「お父さんもお母さんも相変わらず仲良いよねー」
「大会は!?」
良かったまだやってる!
流石に人の少なかったAグループは終了してしまっているが、他はまだ準決勝の途中だ。
『セーフ……ぅおおお!?』
しまった! 俺が寝落ちした場所はギガントバルムンクの上じゃねーか!
『ぬぉーッ! 落ちるぅ!?』
「おっ? 店主さんが起きたみたいだぞー」
「あーやっぱり落ちたか。奇跡的な体勢で止まってたもんなぁ」
「街中って落下ダメージ入ったっけ?」
「バルムンク伯爵ーッ!?」
「ありゃ死に戻り確定だな」
『こんなアホな死に方してたまるか! 天翔天駆ッ!!』
「おおー、本当に飛んでら」
「こりゃあのスレで言ってた店主さんNPC説は正しいかもしれんな」
「運営側のプレイヤーって可能性もあるぞ」
「いや、バルムンク伯爵はバルムンク伯爵だろ?」
NPCだの運営側のプレイヤーだの……いったい俺の何処を見ればそんな考えが浮かんでくるのやら。
たしかにちょっと広めのホームエリアを持っているし、通常だとテイム出来なさそうなモンスターを連れている。空も飛べるけどこれはユニークモンスター倒したからだし別にそんなにおかしくは……ない、よな?
『フハハハハ! 大会をほったらかして夢の中に現れたバルムンクの回収に向かってしまった事をここに謝罪しよう!』
「バルムンク伯爵の設定は寝落ちの可能性を考慮しての物だったのか」
「無駄な設定じゃなかったのか」
「一眠りするだけでバルムンク増えるなら簡単に手放しもするわな」
ふふふ、バルムンク伯爵は適当に作り出したキャラではあったが精神のみで世界を渡る設定はナイスだ。おかげでなかなか良い言い訳を産み出せたぜ!
『そして何事もなかったかのように実況に戻る私であった。おーっとB6グループのゴブリンデッキ使いのフィールドが一掃されたーっ! しかしサポートカードでゴブリンが3体復活! 凄まじい攻防であります!』
てかあれ王都で会ったガキンチョじゃね?
友達にも勝てなかったあいつが大会の準決勝に駒を進めるまでになっていたのか。やっぱりゴブリンデッキはちゃんと使えば強いんだなぁ……って何故にBグループ!? そこの賞品バルムンクだぞ!?
「ぜったい優勝してSランク冒険者になってやるぜ!」
「ガキにゃまだ早ぇよ。大人しく俺様に負けときな。愚鈍な巨人兵でゴブリンをまとめて粉砕だァ!」
『またしてもゴブリンが全滅ゥ! ここから逆転できるのかー!?』
『ゴブリンデッキはパワーが低いからね。ここからパワーの高い巨人を突破するのは難しいと思うなー』
『おお、レーレン様も実況に回ってくれるんですね!』
『Aグループはとっくの昔に優勝者まで決まっちゃって暇だったからね。あ~もう少しで優勝できたんだけどなぁ』
普通に敗けてたのかこの遊びの神様。Aグループの優勝者はかなりガチなカードゲーマーみたいだな。
『ちなみにレーレン様はどこまで勝ち抜いたんですか?』
『ふっふーん! なんと5回戦まで勝ち残ったんだよー! 後5回勝てば優勝だったのに本当に惜しかったなぁ』
『それ、何処が惜しいんです……?』
ベスト8にすら残れてないじゃん!
『対戦相手が優勝者だったからね! 実質準優勝みたいなものだよねー?』
『それは違うんじゃ……おっと? 少し目を離した間にゴブリンキング、ゴブリンエンペラー、ゴブリンプレジデントが召喚サレテイルーッ!? 何故にゴブリンに大統領がいるのでしょうか! 私、非常に気になります!』
『あの3体がバトルゾーン揃ったってことは……まさか!?』
『何か知っているのですかレーレン様?』
『ふふふ……彼凄いよ。この大会が終わったら直接ボクの神徒にスカウトしないと』
『そ、それほどのことが起きようとしているのですね』
凄い事が起きている風に実況してるけど、戯神の神徒ってつまりはレーレン様の遊び相手って事なんだよなぁ。
「このガキ、一体何をするつもりだ……?」
「バトルゾーンにキング、エンペラー、プレジデントがそろったとき……封印されしゴブリンの神は復活を果たす!」
「そ、そのカードは!?」
「3体をコストに復活せよ! 失われし伝説の小鬼神・ゴブリンゴッド」
『出たーッ! このカードが発売されて以来誰も召喚に成功した事のない幻のカード! こんな所でその召喚を観られるなんて感動だよ!』
『神、と言う事はレーレン様の知り合いがモデルになったカードでしょうか?』
『そうだよ! って言っても彼は古の大戦の折りに龍帝に食べられちゃったんだけどね……彼がいなければボク達は龍帝に負けていたかもしれない、そんな偉大な神だったよ』
『ゴブリンですよね?』
『ゴブリンだよ?』
古の大戦、今の情報だけでかなりカオスな物になった気がする。
「いくぜ! ゴブリンゴッドの神威によっておまえのサポートカードを封印!」
「くっ、だがパワーは巨人兵の方が高い! 次の俺様のターンになればそんなカード粉砕してやるぜ!」
「次のターンなんてあるわけないだろ? ゴブリンゴッドで巨人兵に攻撃!」
「血迷ったかバカめ! 返り討ちだァ! ……何!?」
『これはどうした事でしょう! パワーで勝る筈の巨人兵が圧倒されているーっ!? ってちょっと待て! レーレン様何モンスター実体化させてるんですか! 危ないでしょうが!』
『大丈夫大丈夫、ダメージまでは再現してないからさ。こんな勝負滅多に見られないんだからいいでしょ?』
『ハァ……決勝戦もモンスター実体化させてくれるならいいでしょう。おそらくそうしないとこの場に残ってくれてる人達が満足しないと思うので』
『それくらい御安いご用さ! ……出来ればお小遣い欲しいなぁ、なんて言ってみたり』
『……ちょっとだけですよ?』
『わーい! さすがボクの神徒だぜぃ!』
あ、今視界の隅で鼻血出しながら倒れたのはマルティさんだな? ゲーム内なのにどうやって鼻血出してるんだろう……。
「な、何故だ! 巨人兵のパワーはゴブリンゴッドより高いのに何故!」
「オレはゴブリンゴッドの効果で手札からゴブリンジェネラルのカードをロストゾーンに送っていたのさ! これによりジェネラルのパワー分ゴッドのパワーがアップ、巨人兵のパワーを上回ったってわけだぜ!」
「おのれぇ……ここまで勝ち抜いて負けてたまるかよ! 俺のターン!」
「言った筈だぜ? 次のターンなんてないってな! ゴブリンゴッドはロストゾーンにあるゴブリンカードの枚数分追加攻撃ができる」
「バカな!?」
「ロストゾーンのゴブリンカードは17枚……これで止めだ! 愛と哀しみのゴブリンラッシュ!」
『勝者決定! 決勝戦に進んだのはゴブリンデッキ使いの少年だーッ!!』
その後、各グループの決勝戦は特に見所もなく大会は無事に終了した。バルムンク争奪杯の優勝者はプレイヤーが4人、NPCが6人。やっぱり子供の頃やってたりするNPCの方が、付け焼き刃でデッキを組んだプレイヤーよりも強かったみたいだ。
そう言えば、優勝者の中に自称ジークフリートの子孫君の姿がなかったな。今頃どうしてるだろうか?
カードバトルは書かない筈?
実況だからセーフなのです。




