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地獄のような設営作業

 ライト達に屋台の手伝いの報酬を渡した後、皆はカードを買いに王都へ行くと言うので俺は一人でギルドへと向かった。今の時点でバルムンク争奪杯に何人くらい参加者が集まっているのかを確認するためだ。


「キャンディさーん、今何人くらい参加者集まってる?」

「凄い数だよ。こりゃきちんとした施設を作らないとパンクしちゃうんじゃないかい?」

「えっ、そんなに?」

「今の時点で10000人も参加申請してきてるよ」

「まん!?」


 ちょっと待て、それはいくらなんでも多すぎるだろ! プレイヤーイベントってそんなに人が集まるものなのか? 誰でも参加できる屋台と違ってわざわざカード買ってデッキ組んで登録しなきゃいけないんだぞ?


「……それだけバルムンクを欲しがる奴が多いってことか」

「当然じゃないか。お伽噺に出てくる剣、その本物ともなれば一流の冒険者だって食いつくさ。後は副賞のLRカードが欲しいって層もいるからね、まだ増えるとおもうわよー?」

「くそ、参加人数に制限つけるんだった!」


 全く予想していなかったが、今のキャンディさんの口振りだとNPCもかなりの数が参加してそうだ。

 確かにギルドのクエストボードからも参加はできる。それを見ればNPC達も参加するって可能性に気がついた筈だろうに、俺のまぬけめ!


「こんな所で後悔しててもしょうがねぇ、すぐに会場の設営に移らないと!」

「ファースの広場じゃこの人数は集まれないよ? どうするんだい?」

「なんですと!? あー、いや大丈夫だ! 場所は俺のホームエリアを使えば広さだけは確保できるから……バトルする為の机と椅子を大量に作らないと!」


 まずはメニューを開いてホームエリアの侵入許可範囲をフレンドのみからイベント参加者に変更。ん? 一部のみ適応とかもできるのか。なら会場予定地とそこまでの道だけ許可を出して他は侵入禁止にしよう。


「これでよし! 次はカルメ婆さんの所でポーション大量に買わねぇと。キャンディさん、それじゃまた!」

「頑張りなよー」


 そうだ、絶対足りなくなるだろうし今のうちに追加分の木材の調達を頼んでおくか。フレンドコール、マロンっと。


『ライリーフどうしたの?』

「マロン、ちょっと頼まれてくれ」

『いいぜ!』

「まだ内容言ってないのにありがとう!」

『で、アタシは何をすればいいんだ?』

「木材を大量に集めて俺の所に持って来てくれ。どれだけ持って来ても相場の3割増しで買い取らせて貰うからさ」

『マジで! でもライリーフだって自力で集められたよな? なんでアタシに頼むんだ?』

「机と椅子、それと参加賞を大量に作らないといけなくてな。自分で材料集めてると間に合いそうにないんだよ」

『そっか、明日のイベントの準備だな! 任せてよライリーフ! いっぱい集めて行くからさ!』

「任せた!」


 これで時間はあっても材料がない、なんて事態にはならない筈。……足りるよね?








 まずは机を一つ完成させる。今回はスキルとレシピを利用しての量産なので最初の一つを丁寧に作ることにした。なるべく大きくして必要な数自体を減らせば複製回数も減らせる。これでMPと時間が大幅に節約できた。

 MPの回復とスキルのリキャストを待つ間には椅子を作る。こちらは簡素で作りやすい仕上がりだ。たぶん数が間に合わないので、トーナメントが進みある程度人数が減るまでは立ったまま戦って貰うことになるけどしゃーないよな。

 そうして暫くトンテンカンと椅子と机を量産さているとノクティスがやって来た。


(旦那ー、作業中すいやせん。ウル達が散歩(狩り)行きたいって言ってるんですが、行かせてもいいですかい?)

「ん? あいつらも単独行動持ってたのか、別にいいぞ。ただし他のプレイヤーの迷惑にならないようにしろよ」

(分かってますって。あー、ところでウル達の事なんですが……なんか進化したみたいですぜ?)

「は?」


 進化? 昨日の今日で?


「ちょ、ちょっと待て。一旦ウル達を連れてきてくれ」

(了解でサァ)


 テイムしてから戦闘なんてしてないのにどお言う事だよ。もしかしてPKとの戦いで進化できるレベルになっていたのだろうか?

 いやいや、でもあいつらユニークモンスターだぜ? 例え最弱レベルのモンスターであるキックラビットからの進化個体だからってそう簡単にレベル上がるようには出来てないだろ。3体で1体扱いだからそれこそレベルアップまでに普通のキックラビットの3倍の経験値が必要でもおかしくない。

 ウサ公の時のようにユニークモンスターとしての力が定着して見た目が変わっただけって可能性もあるだろうが、同じモンスターであるノクティスが進化したと断言している以上やっぱり進化してんだろうなぁ。


(旦那ー、連れて来やしたぜー)

(ウル来たー)

(スクの羽見てー)

(ヴェルも変わったー)

「……なんかお前ら妖精っぽくね?」


 キックラビットから少し獣人よりになり、カーバンクルチックな宝石が額の中心にくっついている。そして背中には幾何学模様の描かれた半透明の小さな羽がパタパタとその存在を主張している。

 元からかなりファンシーな見た目をしていたが、今ではファンシー度が天元突破レベルだ。スクショを送ればきっと一瞬でアイシャさんを召喚できるだろう。

 たしかテイムする前に見た時は『三位一体のラビッツ』だったよな。今はどんな感じなんだろ?



ウル=スク=ヴェル(フェアリーラビット・トリニティ)

Lv1/120


ステータス

HP 1400

MP 1800

STR 80

VIT 140

INT 260

MND 100

AGI 580

DEX 70

LUK 360


スキル

嗅覚 脚力強化 索敵

下克上 三位一体 単独行動

妖精化


アーツ

・アサルトステップ

・ラピッドキック

・トリニティダンス

 ┗奥義 トリニティブレイク

妖精の祝福(ブレスオブフェアリー)(妖精化中のみ)



 おお、普通に強いな。ノクティス達のステータスと比べるといささかインパクトは薄いが、Lv1でこのステータスはかなり強い。

 しかしこいつら、なんでまた妖精化なんてしたんだ?


(やっぱり世界樹の果実を食べたからですかね?)

「でもノクティスは別に変わってないだろ? セレネだって進化なんてしてなかったぞ」

(あっしらと違ってウル達は丸々一個食べてたからじゃないですか?)

「なるほど……」


 ノクティスの予想は正しいかもしれない。何よりこいつらはユニークモンスターとして性質から考えると3体で1体扱いだから一気に3つ分の世界樹の果実を摂取したことになる。


「にしてもノクティス、なんで世界樹の果実が関係あると思ったんだ?」

(ブラウニーさんに分けてあげたら大層喜んでましたからね。一晩でホームを完成させちまう程の興奮っぷりを見れば予想もつきまサァ)

「ああ、そう言えばブラウニーさんも妖精だったな」


 世界樹だもんな。妖精やら聖霊やらに関わりがあって然るべきか。

 ウル達が進化したのを見るに、ひょっとすると鳥さん(ヴィルゾーヴ)があんなに強いのは世界樹の果実を独占しているからなのかもしれない。

 ……独占する前からあそこに巣を作れるくらいには強かったんだから関係ないか。


(遊び行っていいー?)

(まだダメー?)

(トカゲ退治ー)

「ああ、悪かったな。もう行っていい……待った、トカゲ退治って?」

(((キラキラのトカゲー)))

「おい、ノクティス?」

(安心してくだせぇ旦那。あっしもルクスも姉さんもついていきますから!)

「お前らが戦いたいだけだろそれ! てかセレネは復活出来ないんだから連れていくなよ!」

(え? でもあっしらの中じゃ姉さんが1番――)

「ニャー……」

(1番開幕のブレスに巻き込まれる心配がありませんからね! 影に潜っちまえば余裕でサァ!)

「たしかにアレさえ回避できればお前とルクスだけでも倒せるだろうけどさぁ……」

「ニャー」

「ん? セレネも来てたのか。で、お前も戦いに行きたいの?」

「ニャ」

「そうか……絶対死んじゃダメだからな? これは主である俺から眷属であるお前への命令だ、分かったな?」

「ニャウ」


 こうして俺のペット達はファフニール周回へと出掛けて行った。

 俺は心配や不安を和らげるべく無心で椅子と机を作り続けたが、暫くしてふと疑問がわいた。


「そもそもあいつらに地図の欠片って使えたっけ……?」


 使えないなら問題ない、と言うか使えなくて無駄にあーでもないこーでもないと悩んでいてくれた方が助かる。


「イベントアイテムだし、たぶんプレイヤーしか使えないよな」


 そう考えて俺はアイテム作成に集中した。

 そして再び築き上げられたバルムンクの山を前に白目を剥くことになるのはこれより数時間先のことだ。

 まあでも、皆無事で良かったよ。

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