チュートリアルで詰んだかもしれない.14
これ加護どころの話じゃねぇ!?
「ちょっ、神父様!ヘルプ、ヘールプ!!」
「そんなに慌てていったいどうしたのですか?」
「加護じゃなくて試練が始まったんですけど!?」
「試練ですと!?素晴らしい、まさかそこまでの信仰をお持ちだったとは」
「信仰心なんて欠片も持ち合わせてませんって!ちょっと正直に欲しいものねだってみたらいきなり声が聴こえてきたんですよ!」
「ははは、グーヌート様は正直者が御好きですからな。加えて言うなら強き者に挑む、そんな戦いを観るのも御好きなのです。心当たりは御座いませんかな?」
「めっちゃあります……」
前向きに考えるなら、倒す予定だった連中の素材の他にアイテムや称号まで貰えるようになったってことだ。もともとソロで挑むつもりだったしパーティを組めなくても問題ない。
でも経験値全部持っていかれるのか~。巣穴までの道すがらキックラビットを狩っていって、レベルを上げてボス兎に挑む作戦が使えなくなってしまったのは辛いな。せめてカウンターのスキルを入手してからなら楽だったのに……。
無い物ねだりはしてもしょうがないな。今の手札でやれるだけやってやるさ!
(ふん、ようやく街からでて来たか。びくびく震えてもうフィールドには来ないかと思ったぜ)
「おいおい、ずいぶんと見下してくれるじゃねーの。まさか俺の案内はお前一匹でするってのか?」
(はっ当然さ。オレはボスの後を継ぎ『空脚のビット』の名を得たんだ!サンドバッグを運ぶくらい余裕だぜ)
「げっ、いきなりネームドかよ。まぁでもちょうどいいか」
(ちょうどいいだと?)
「ネームドなのにパシりにされたお前で本番の練習をしてやるよ!」
(……!こいつ、舐めやがって!)
「来いよ、軽く捻ってやんぜ!」
(シッ……!)
空脚のビット。
ウサ公の後釜だってだけあって空中ジャンプを使えるらしいスピードもかなり速い。ネームドモンスターなだけはあるのだろう。でもなぁ……。
「オラオラどうした!そんなに速く動けるのに逃げてばかりじゃネームドの名が泣くぞ!」
(くっ、う、うるさい!)
こいつの動きは直線的過ぎるのだ。それにカウンターにビビってなかなか突っ込んでこない。ウサ公とは比べるのも烏滸がましいレベルだ。
まぁ、スキルに制限がなくなった今だからこそ弱く思えるんだろうけどな。
「そんな離れた位置でいいのか?俺には投擲術だってあるんだ、ぜっ!」
(ギャ…!ち、ちくしょう!石なんか投げてきやがって!)
クリティカルも出たみたいだが一撃でHPの2割を削ることができた。思った通り、進化してもHPは低いままのようだな。
「そら、まだまだいくぞ!」
(っ!!クソ、クソぉ!)
アイシャさんを使って促成栽培された為だろう。本当の戦闘経験が少ないらしく石を回避するために必要以上に距離を空けている。
蹴りしか攻撃方法がないのにそれではいつまで経っても俺に攻撃を当てられないだろうに。
これがウサ公だったなら冷静に石を蹴り返してきたり、そもそも石を構えた瞬間に距離を詰めてコンボを叩き込んで来るぞ?
そんなことを考えながらも淀みなく身体は動く。回避した所を目掛けてもう片方の手からも石を投げれば……。
(ギャ!)
よし、怯んだところで更に一発!
(こ、このぉ!)
投擲術に身体制御、精密動作、予測。もしかしたら体術の効果も乗っているかもしれない。逃げ腰なこいつを狩るには十分すぎるぜ!
「そろそろ終わりだ!ウサ公が強すぎたのかもな。正直、余りの弱さに拍子抜けだわ」
(オレはネームドモンスターなんだ!こんな…こんな簡単に負ける筈がないんだ!)
「せめてお前が石なんざ無視して突っ込んで来てたなら苦戦したろうよ」
(ちくしょう………)
《ネームドモンスター『空脚のビット』との戦闘に勝利した!》
《EXP2400は戦神グーヌートに奉納された!》
《アイテム、空脚の宝珠を手に入れた!》
《アイテム、空脚の毛皮を手に入れた!》
《称号【空脚】を獲得した!》
ふぅ……運良く一撃も食らわずに勝てたな。いや運悪くか?
今のうちにどれくらいの痛みになっているか確認しておきたかった。
ネームドモンスター相手に無傷で勝てた以上通常のキックラビットの相手も難しくないだろう。
わざとダメージを食らうのも何か違うしなぁ。そうなると残り2体のネームドモンスターから攻撃を受けるしかない訳じゃん?
『剛脚のラビィ』『連脚のバーニー』。
あー、剛脚からは受けたくないなぁ。でもウサ公のほうが強いんだろうなぁ。だってあいつ名前に無双なんてついてるんだぜ?間違っても兎についてていい文字じゃないっしょ。でも勝てないと今度こそ詰みそうなんだよなぁ。…………。
うっし、とりあえず新しい称号の効果でも確認しておくか!
【空脚】
ネームドモンスター『空脚のビット』を討伐した証
効果
スキル【空歩】を獲得
空歩か。どれ試してみよう。
「よっ、おお!これは楽しゲピャ」
頭から落ちた。いきなり空脚のビットやボス兎のようにはいかないか。
スキルレベルが上がればあんなスタイリッシュアクションもできるようになると信じて育てるしかない。
あとの2匹からも称号を貰えるだろうからやっぱりボス兎は最後に回そう。
空歩も一瞬なら使えるし、巣に向かいながら目についたキックラビット達を相手に練習しておこうか。
達成条件
ユニークモンスター『空脚無双・ラビットオブテンペスト』の討伐 0/1
ネームドモンスター『剛脚のラビィ』の討伐 0/1
ネームドモンスター『連脚のバーニー』の討伐 0/1
ネームドモンスター『空脚のビット』の討伐 1/1 達成!
キックラビットの討伐 0/30