帰り道
やってるゲームのイベントが始まったんで更新頻度が落ちると思われます。許して?
つ、疲れた……。
鱗チップスを1つの鍋で一度に大量に揚げられるようになった結果、他の商品を作るスペースが空き材料が再び無くなるまでフル稼働。イベント自体は0時までだったのに俺は結局2時まで屋台を閉められなかった。
しかもバールムンクを売って欲しいって人も結構来ていたので、今回は料理の合間にMPポーションをがぶ飲みして簡易作成で武器まで作るオーバーワークっぷりだ。
途中で家族旅行から帰って来たティナと仕事帰りのウォーヘッドが来てくれなかったらマジでヤバかった。
「皆、こんな時間まで手伝ってくれてありがとな」
「いやぁ、本業よりハードな業務だったぜ」
「兄貴! 兄貴の分のドラゴンステーキ取っておいてやったぞ!」
「おお! でかしたあか、じゃなくてマロン! けどお前、こんな時間まで起きてて親父に怒られねぇか?」
「うっ……もう宿題終わってるから平気だし……」
へー。ウォーヘッドとマロンって兄弟だったのか。
「似てねぇなぁ」
「アバターなんだから当然だろうが」
「あ、そっか」
けど二人とも顔の作りは自然な感じだしそこまで弄ってなさそうなんだけどな……ウォーヘッドの頭がつるつるスキンヘッドだから似てないように見えるのか?
「もう眠さが限界っす……打ち上げは明日にして欲しいっす」
「そうね。時間も時間だし解散しましょう」
「もぐもぐ。明日もご馳走よろ」
「フィーネ、明日旅行のお土産持って行くね」
「ん、待ってる」
こうして女性陣はログアウトしていったのだが、何故かライトとウォーヘッドは残っている。
「2人はログアウトしないの?」
「ああ、ちょっとクエストをな」
「ライも来るか? 聞いた話によると実に紳士的で素晴らしいクエストみたいなんだが」
それはまさか男のロマンが爆発しちゃう系のクエストなのか!?
俺もKENZENな心を持つ青少年の1人だ。行きたいに決まってる。だが……だが……!
「くっ、俺はパスだ……またの機会に誘ってくれ。流石に疲れ過ぎて今は楽しめそうにない」
「あー、ライは昨日も遅くまでやってたもんな」
「そう言う事なら俺達だけで先に楽しむとするか」
去っていく2人に後ろ髪を引かれる思いだが、今日はもう寝ると決めたんだ。薬屋でMPポーションを買ってさっさとファースまで転移しよう。
「品切れ?」
「悪いね~。今日はやたら売れ行きが良くてさ。HPポーションも含めて他所の店も品切れなんだよ」
しまった。プレイヤーはグルメフェスティバルで使ったコルを稼ぐ為にファフニール周回に行く。となればここに集まった連中がポーションを買い占めるのは当然じゃないか。
「はぁ……ドラグディザスターが壊れてなければすぐにMP回復出来るんだけどなぁ」
うだうだ言ってても始まらない、諦めて徒歩で帰ろう。
後から思えばこの時の俺は相当疲れていたんだろうな。普通にアドベントで宿をとってログアウトするって選択肢が頭からすっぽりと抜け落ちていた。
その事に気がついたのがだいたいアドベントとファースの中間辺りの所。なので少しげんなりする程度の精神的ダメージで済んだのだが――
「うっ!?」
いきなり左肩へ衝撃が走り、俺は転倒してしまった。まさか精神ダメージが実体化したのか? いやいやそんな訳ないな。普通に攻撃を受けただけだろう。
けどここら辺のモンスターで俺の感知スキルの外から奇襲をかけてくるモンスターなんていなかった筈……地図の欠片集めの影響でネームドでも湧いたか?
「ん? 目が見えない!?」
今は夜だが何も見えないなんておかしい。このゲームは洞窟やダンジョンの内部だって頑張れば明かり無しでどうにか出来るくらいには明るい。外なら月や星だってあるから尚更明るい筈名のだ。
そもそも俺には夜目が統合された邪龍の瞳があるんだから夜だって昼間と変わらないレベルで見えていないとおかしい。となると……盲目状態か!
その考えに至った瞬間、2回目の攻撃が飛んで来るのを感知した。
「っ! くそ!」
攻撃に気がついたまでは良かった。だけど咄嗟に出来たのは体を少し動かす程度。頭を狙ったと思われるその攻撃を回避しきるには足りず、右腕へと命中してしまう。
「ちっ、今度こそ頭に当ててやろうと思ったのによォ」
「ギャハハ! この距離で外すとかダッセー!」
「お前達静かにしろ。他の奴に聞かれたらどうする」
攻撃してきていたのはプレイヤーだと!?
「誰もいやしねぇよこんな過疎エリア。それに、野郎だって今のサイレントスローで耳も潰れた。感知があっても一遍に2つの感覚潰せば関係無いってアンタの作戦だろカイン?」
「用心するに越したことはない。これでも有名プレイヤーの1人だからな、奥の手の1つや2つ持っていても不思議じゃない。それと不用意に名前を呼ぶな」
サイレントスロー……こいつらの会話からして無音状態にする為の攻撃か。LUKのお陰で防げたが、少しの間無音状態に掛かったふりをして情報を引き出そう。
「もう用心なんて必要ねぇって。さっさとキルして金を山分けだ!」
「うわっと!?」
「なっ! 避けただと!?」
「ちっ、どうやら無音状態には掛かってなかったらしいな。どうしてくれるルーカス、お前のせいで俺の名が知られたぞ」
「ちょ、俺の名前もサラッとばらすなよ!」
「避けんな! 死ね!」
「ぐぁ……!」
くそ、最後の名前分からない1人殺意高すぎるだろ!
「あ? 何で生きてんの? さっさと死ねよめんどいな~」
めんどいと思うなら帰れ!って言っても帰る訳ないよな。せめてMPさえあれば天翔天駆で逃げられるのに……本当にドラグディザスターは肝心な所で使えない鎧だ。
「お前達、盲目状態が切れる前に仕留めるぞ」
「残念、もう見えてるよ」
「はぁ? まだ効果時間は残ってる筈だろ!」
「ふん、耐性スキルか」
盲目状態が解除され、襲撃者達の姿が明らかになる。
俺を囲むように立っていたのは目付きの悪いイケメンとギョロギョロした赤い目のチビ、そして身長2メートルはありそうな巨漢だった。
おまけ
紳士的な素晴らしいクエスト
・秘湯に揺れる美しき黒髪
スプルドは本作品内のCERO的組織でC判定(チャイルドフィルターで限定的にB)なのでそこまで過激でムフフなクエストはありません。
それっぽい名前のクエストをやっても9割は肩透かしを食らいます。
今回ライトとウォーヘッドが噂を聞きつけ受注したこのクエストは、山にある温泉を探しそこに出没する人物の正体を確かめて欲しいと言うもの。
絶好のハイドスポットを見つけて息を潜めて待っていると温泉に浸かる美しい髪をした人物が……ゴリラなのです。
以前主人公が出くわしたことのあるキューティクルコングです。
覗きがばれるとLv50のキューティクルコング20体に包囲されてバドルになります。地獄です。




