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ドラゴンは鱗まで美味しい

いつもより長めです。


「うはは! 何これ、超デカいな!」

「むぅ、さすがにこのサイズは完食できない」

「こ、こんなドロップがあるなんて報告あったかしら……?」


 皆一様に驚いているが、俺の心を支配した感情は哀しみだった。

 あのボロ小屋は俺が一人で組み立てた物だったんだよ。そりゃログアウト用だから簡素でまともな家具なんてベッドしかなかったけどさ、壁に棚とか取り付けてこれまでに手に入れたよく分からないレアアイテムを飾ったりして楽しんでたんだ。

 無限再生する泥団子に真球石、萎びたカッパのミイラにツチノコの化石。どれも特に使い道は思い浮かばなかったけど、眺めているとちょっとした秘密基地気分を味わえた良いアイテム達だった。

 きっと今頃どのアイテムも尻尾に潰されてしまって無事なのは泥団子だけだろう。


「だ、大丈夫かライリーフ? 家壊れちゃったけど」

「いいんだマロン……俺もいつまでも少年じゃいられない、きっとそう言う事なんだ」

「え? 何の話?」


 次は大人の秘密基地建設だ。少年の心を忘れずに大人げなくギミック満載の特別仕様にしてやるぜ!

 どうせこのだだっ広いホームが完成するまでにはかなりの時間が掛かるんだし、先に俺専用のスペースを作るくらいしてもいいだろう。


「そうと決まれば先ずは秘密基地1号の敵討ちだ! 黄金竜の尻尾、テメェは骨の髄までしゃぶり尽くしてやるから覚悟しな!」

「物相手に寸劇かましてる所悪いんだけど、さすがにこれを1人でどうにかするのは無理じゃね?」

「甘いぜライト。俺が鳥さんの島で捌いてきた食材達に比べれば、この程度スモールサイズもいいところ……そしてこれだけじゃ雛達のおやつにすらならないと言う事実に震えるがいい!」

「改めてお前が拐われた島の魔境っぷりにドン引きだぜ!」


 正直伝説級のモンスター達を解体して料理した経験をまさかこんなにも早く活かす時が来ようとは思わなかった。島にいた時よりも調理術と解体のレベルが上がっている今、どれだけ早くこの巨大な肉の山を処理できるか楽しみだぜ!


「見さらせ! これが俺の最高速だ!」

「は、速い! 鱗を剥がす手の動きが目で追えないだとォ!?」

「もう半分も処理が終わってるじゃん! ライリーフスゲー!」

「まだまだァ!」

「包丁で二刀流だと!? ライ、お前……何処まで高みにのぼるつもりなんだ?」

「ダメだライリーフ! 包丁持つときは猫さんの手じゃないと危ないんだぞ!」


 ライトはもちろん本気で言ってる訳じゃない。いつもの茶番劇だ。けど一緒になって見物しているマロンの反応は素だろうう。そしてそこにフィーネが参戦してきた。


「マロンちゃん。ライなら大丈夫」

「なんでだよ……?」

「ライは一子相伝のユニークスキル、戦闘調理術の使い手。相手が大きければ大きいほど、その包丁捌きは冴え渡る」


 なんかそのスキル普通にありそう……そのうち本当に生えてきたりしてな。


「そ、そうだったのか! でもファフニール戦で使わなかったのはなんでだろ?」

「……」プイッ……


 ふっふっふっ、そこで詰まって目を反らしてしまうとはまだまだだなフィーネ。ライト、フォローは任せたぞ?


「マロンちゃん、戦闘調理術にはデメリットもあるんだ。モンスターを丸ごと料理するから普通のドロップアイテムが手に入らない。恐らくライの奴はマロンちゃんにきちんとドロップが発生するように使わなかったんだろうよ」

「そんな……アタシのせいでライリーフは全力で戦えてなかったのか!?」

「えっ! い、いやぁ……それはどうかなー?」


 ライトが視線でヘルプを要請しているが無視しておこう。俺は今格好いいアクションで尻尾を解体するのに忙しいんだ。茶番劇に付き合ってる暇はないね。


「ちょっとあなた達、その子に嘘を教えるんじゃないの!」

「えっ、嘘なのか?」

「うん。戦闘調理術の辺りから。マロンちゃんごめんね?」

「即興で設定作ってアドリブで話を進めるって言う俺とライがいつもやってる遊びなんだ。フィーネまで乗ってきたからつい楽しくなっちゃってさ。悪かったよ」

「……別にいいよ。アタシのこと仲間に入れてくれようとしたんだろ? ならむしろ嬉しいくらいだ!」


 うんうん、仲良きことは美しきかな。さて、そろそろ真面目に解体するか。


「ちょとライく~ん? 何自分は関係ありませんみたいな顔して作業を進めているのかしら?」

「リリィ、俺は尻尾を解体していただけだ。だから俺は悪くない」

「戦闘調理術の話が出た辺りで急にオーバーアクションな解体をし始めたのはどうしてかしら?」

「それはもちろん戦闘って付くくらいだから戦ってる時みたいに動いた方が格好いいと……あっ」

「ちゃんと貴方もマロンちゃんに謝りなさい」

「はい……」


 マロンは笑顔で凄かったから許すと言ってくれた。ええ子や。

 その後順調に尻尾の解体は進み、遂に巨大な肉の山は全て切り分けられストレージへと収まった。

 現在は人数分のドラゴン肉を取り出してシンプルに塩と胡椒で下味を付け、強火で軽く焦げ目をつけてから弱火でじっくりと火を通している所だ。


「しっかしもったいないよなぁ。この大量の鱗もでっかい骨も装備に使えないなんてさ」

「アイテム名の横に(食材)なんて表記が出るの初めて見たわ」

「ライ、鱗も料理できる?」

「食材って表記されてる以上ちゃんと料理には使えるんだろうけど、直ぐには作れないかなぁ。そもそもどう食べればいいか分かんないし」

「ライリーフ! 揚げてみたらポテチみたいにならないかな!?」

「ん? んー、そだな。ちょっと試してみるか」


 錬金の大鍋にたっぷりの油を入れて180℃に熱する。温度計が無いので箸の気泡を見て温度を確認しているが、現実と一緒であってるよな?

 今回はお試しなので素揚げにしてみた。色は黄金のままなのでいまいち火が通っているのか判断がつかないが、自分の直感を信じて5分程で油から取り出した。


「後は油を切って軽く塩を振って……よし、完成かな?」


 見た目が金ぴか過ぎて食べ物なのか非常に怪しい雰囲気だ。しかし眺めているだけでは何も始まらない。いざ、実食!


「あーむ、ハフッハフッ……んぉ?」

「ライ、おいしい?」

「どうなんだ!?」


 食間は重厚な見た目とは裏腹にとても軽くてパリパリしている。味もアッサリしていて、これならいくらでも食べられそうだ。


「なかなかいい感じだぞ。ステーキの付け合わせもこれでいいな」

「骨でスープも作って」

「フィーネ、それはさすがに時間が掛かるからパスだ」

「えー」

「今週の屋台で売るから我慢してくれよ」

「それならいい。あ、忘れてた。シフォンからも後でメールが届くと思うけど、今週はアドベントで屋台出して欲しい」

「なんでだ?」

「新規料理人プレイヤー育成の為の……撒き餌?」

「もっとましな言い方あったろそれ……」


 まあ料理人プレイヤーが増えれば俺も屋台を辞めやすくなるので参加しておこう。


「ライ君、そろそろステーキがいい感じよ」

「おっ、遂に完成か!」

「ニャー?」

「ナイスタイミングだセレネ! これからご飯だからノクティスとルクスを呼んできてくれるか?」

(その必要はありやせんぜ旦那!)

(ほう、これはなかなか……特にその黄金に輝く揚げ物は我にこそ相応しいとみた!)


 こいつらも大概鼻がいいよな。料理目当てでテイムされただけのことはあるぜ。

 俺のペット達も揃った事だし、早速ドラゴンステーキを食べようか!


「うひょー、これがドラゴンステーキかぁ! 肉汁が溢れて止まらねぇ!」

「はふぅ……幸せ」

「んん……! お肉はしっとり柔らかいのになんて濃厚で力強い味なの!」

「ライリーフ! これ超美味いよ!」

「だな! これはファフニール周回して尻尾集めるっきゃないな」


 俺のこの不用意な発言が獣達を本気にさせてしまった。


(旦那……トカゲを仕留めればこいつがもっと食えるんですね? あっしちょっと本気出しちゃいますぜ)

(ふむ主よ、我も少しばかり手伝ってやらんこともないぞ? 無論やるからには全力を尽くすとも)

「ニャー!」


「ちょ、今のはライト達に言ったのであってお前達に言った訳じゃないからな!?」

(遠慮はいりやせんぜ旦那。100匹でも200匹でもあっしらが仕留めてみせまさぁ)

「どんだけやる気なんだよ!」


 ノクティスもルクスも島でもっと良い物食ってたろうが! 今さらドラゴンなんかで興奮するなよな……。


「あはは! そいつらの為に周回するのかライ? いいぜ、とことん付き合ってやんよ!」

「もともと一緒にイベント遊ぼうと思ってファースまで来た訳だものね」

「ん。マロンも一緒に遊ぶ?」

「うん! やっぱりゲームでも1人で遊ぶより皆と遊んだ方が楽しいもんな!」


 なんか皆のやる気まで上がってるし!

 これはもうとことん周回するしかない雰囲気だな……。


「仕方ない、今日は周回するかぁ……あ、そういやファフニール倒した後に拾った財宝確認してないや」

「アタシも忘れてた」

「おっ、財宝か~。運が良ければLv10討伐報酬の竜墜剣・バルムンクも出るらしいぜ?」

「へー。なら剣選んで持って帰るんだったかな?」

「見た目は関係ないみたいよ? 洞窟から戻ると鑑定が出来るようになってて、鑑定すると本当の姿に戻るんですって」


 なんかガチャみたい……あ、ガチャ。ログアウトする前に忘れずに引きに行かなければ。


「アタシ鑑定持ってないや……」

「俺がみてやるよ。貸してみ?」

「うん。任せたぜ、ライリーフ」

「はいよ」


 マロンが拾ったのは近くに落ちていたコイン3枚だ。あの時はまだラックリンクの効果が続いていた筈だし、良い物が拾えてるんじゃないかな?



心眼の首飾り ☆☆☆☆

DEF10 耐久値150/150

MND+40 クリティカル発生率上昇・小

心を落ち着ける効果のある首飾り

凪いだ心は心眼に通うづる


大きな金塊 ☆☆☆

換金アイテム


古の通貨 ☆☆☆☆☆

換金アイテム



「おお、☆4のアクセサリー引けてるじゃん! マロンちゃん運いいな」

「換金アイテムも価値の高い物だし大当たりね」

「へへへ、これでいい防具が買えるぜ!」

「次はライの番だね」

「おう!」


 俺も結局足下に落ちてたコイン3枚を選んだんだっけ。良いの引けてるといいなぁ。



黄金の仮面 ☆☆☆

換金アイテム


竜墜剣・バルムンク ☆☆☆☆☆☆

ATK680 耐久値320/320

MP+200 対竜・大

一人のドワーフが黄金の竜へと転じる少し前

最後に鍛えたのがこの剣だとされている

黄金竜の最後がこの剣によってもたらされたのは、はたして偶然なのだろうか?


竜墜剣・バルムンク ☆☆☆☆☆☆

ATK680 耐久値320/320

MP+200 対竜・大

一人のドワーフが黄金の竜へと転じる少し前

最後に鍛えたのがこの剣だとされている

黄金竜の最後がこの剣によってもたらされたのは、はたして偶然なのだろうか?



 最高レアがダブってしまった……。

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