フードの男
本日短め。
《成る程、魔力嵐で我等の目を欺いたか……相変わらず狡い奴よ》
「ぐ、グーヌート様! それでは私の息子は……!」
《生きていたとしても奴の力に相当汚染されていると覚悟せよ。しかし十数年経って未だ復活の兆しがない辺り、貴様の息子を依り代とした転生計画は失敗したと見ていいだろう》
「そんな……」
目の前で手乗りサイズのSDキャラ風にデフォルメされたグーヌートが公爵に無慈悲な宣告をしている。
おのれグーヌートめ、ネタバレしやがった挙げ句俺を置いてきぼりにして訳の分からん会話を始めやがって!
ちなみに俺の予想は魔力嵐の影響で偶々ワームホール的なものが出現してシリウス君が吸い込まれた神隠し説だったのだが、まさか本物の神が関わっているとは思わなかったぜ。
「おいグーヌート、そもそも悪神ってのはなんなんだ?」
《む? プレイヤーである弱き者が知らんのも無理はないか。悪神とは――》
かつて龍と神とが争う時代、その戦乱に乗じて人々を堕落させることを目的とした三柱の神がいた。
悪神、邪神、堕神。悪逆の三神と呼ばれるこの三柱は激しい戦いの末名前と力を奪われて封印された。
しかし三柱の中でも最も強き力を持っていた悪神が他の二柱を滅ぼし、僅かながらに力を回復させ封印から逃走した。
《――それが今から約2000年前の出来事だ》
「へー」
《弱き者よ、神自ら解説してやったと言うのに反応が薄くはないか?》
だってありがちな展開じゃんね? この程度の情報じゃ現代っ子は心踊ったりしない。
「とりあえず知りたいことは大体分かったから帰ってどうぞ」
《わざわざ出向いてやったと言うのに、貴様それでも我が神徒か?》
「無理矢理クエスト受けさせた癖によく言うぜ……」
グーヌートにお引き取り頂いた所で改めてエイルターナー公爵と話し合う。
誘拐が悪神の仕業だと分かりかなり心にダメージを受けてしまっているようだが、先に進む為にもきっちり俺と会話をしてもらうぞ?
「ふん、今さら何を話せと言うのだ……」
「最近入って来た情報を知りたい。あんたのことだ、それらしい情報は逐一収集してんだろ?」
「ないこともない。だがこんな情報は無意味だ! 息子はもう……!」
「公爵、気持ちは分かるが諦めるには早いだろ。五歳であんた以上の魔法の使い手だったんなら、案外死にかけの悪神くらい自力で蹴散らしてるかもだぜ?」
「それは……そう、だな。あの子は天才だった。きっと悪神なんぞ一捻りにしてしまったに違いない!」
「その意気だぜ公爵。元気も出た所で早速情報を教えてもらおうか」
「ふん、貴様なんぞに励まされるとはな。最近入ってきた情報でめぼしいものとなると……鉱山に向かう途中で貴族のような服を着た子供が一人でいるのを見た、と言うのが一番有力そうな情報だな」
「それはまた曖昧な……ってか成長してるだろうし子供じゃ別人だろ」
「む、確かに。だが他の情報も似たようなものばかりだ。エイルターナーを名乗るフードの男に助けられた、なんて話もあるが……どうせ貴様が名乗ったのだろう?」
「いや、俺は基本ライリーフとしか名乗らないから……ってフードの男?」
なんか最近そんなワードを聞いたような、見たような……。
「となるとイタズラの類いか。まったく、この国で我がエイルターナーの名を騙るとは太い輩もいたものだ。善行であるからいいものの悪行など行っていたならばただでは「あーッ!?」どうした!?」
いた! いたじゃんかフードの男!
俺はニアミスしたけど確かにあの時港にいた筈だ!
「……公爵、シリウス君が何処に連れ去られたのかは分からないが、少なくともこの国には戻ってきてるかもしれないぞ」
「何!?」
「フードの男、たぶんそいつがシリウス君で間違いない」
歓楽島行きの船に乗る際に起きたクエストの失敗、それは思った以上に大きかったみたいだ。




