エイルターナー邸にて
城を出てふと後ろを振り返ると、窓からジト目で見つめてくる姫様が目に入った。とりあえず笑顔で手を振っておこう。
さて、次はエイルターナー邸で情報収集か。
「ここか……」
貴族達の立派な家が並ぶ区画、その一番奥に超広い庭付きで他の屋敷より数段立派な豪邸がそこにはあった。
「さすが王国ナンバー2の貴族だわな」
門には鍵が掛かっていて勝手に入れない。見張りの兵士もいないようだが、留守なのだろうか?
呼び鈴のようなものも見当たらないし……参ったな、ここに来たのは無駄足だったか。
「そうだ、渡された鍵でなんとかなるか?」
ストレージから公爵からシリウス君に渡すようにと預けられた鍵を取り出す。
ゴゴゴゴゴ……
ビンゴ! 鍵に反応したのか門が勝手に開いて中に入れるようになったぜ!
「おじゃましまーす」
鍵は俺に渡した訳ではないと言っていたが、これも調査の一環だ。現場百遍だっけ? まずはシリウス君がいなくなった部屋を見てみないとな。
しっかし門から屋敷までがやたらと遠いなぁ。こんなに広い庭を維持するのはさぞ大変だろう。ま、俺の整地した土地の方が100倍広いけどな!
なんてどうでもいいことを考えているうちに屋敷の玄関へとたどり着いた。
皆はドアノッカーって使ったことある? 俺はない。だから今目の前にあるこの物体をどう使用すればいいのか悩んでいる。
わっかを持ってドアにぶつければいいんだっけ? でもがっつり握ってしまうと手が挟まっちゃうよな……マジでどう使うんだこれ?
「ゼェ……ハァ……貴様、ゼェ……我が屋敷で……ハァ……何をしている!」
「おっ、ちょうどいい所に。中に入りたいんだけどこれの使い方が分からなくってさ」
「ハァ、フゥ……何? そんなものこうしてこうだろうが」
「なるほど、下じゃなくて横持てばよかったのか。サンキュー……って公爵じゃん、中いれて」
「貴様、鍵を勝手に使って入って来たな? あれはシリウスの物だと言った筈だぞ」
「とりあえずシリウス君がいなくなった現場を見てみたかったんだよ。それよりそんな汗まみれなのはダイエットのせいか? 客を前にするならシャワーくらい浴びろよ」
「アポ無しで乗り込んで来た貴様には言われたくないわ!」
ごもっとも。でも俺だって見張りの人がいればその人に伝言くらい頼んだぜ? いないんだからしゃーないよね。
「まぁいい、我が息子の手がかりを探しに来たと言うならば是非もない。早速案内してやろう」
「よろしく」
公爵に案内されるままたどり着いた部屋は、何と言うか……とても子供の部屋には見えなかった。
本棚には難しそうな本がぎっしり詰まっていて、大人の使う書斎だとでも説明された方がしっくりくる。
だが部屋に置かれている小さな机とベットが間違いなくここが子供部屋だと主張してくる。
「うわぁ……つまんねー部屋。おもちゃの1つも買ってやらなかったのかよ?」
「あの子がねだるのは新しい本や、修練の為の剣ばかりだったのでな……しかし、そうか。貴様の目にもつまらなく映るか……」
そりゃそうだろう。こんな一切の遊びのない部屋、俺なら3分もせずに脱走する自信がある。
いくらシリウス君が真面目な子だったとしてもこれはさすがに辛いんじゃなかろうか。
仮にこれがシリウス君本人が望んだ結果だと言うのなら、ちょっと友達にはなりたくないな。一緒に遊んでる最中に勉強しだしそうだし。
「ここ、シリウス君がいなくなった時のまんまなんだよな?」
「机の位置や本の並びに至るまで一切動かしてはいない」
「ふーん……じゃあアレで調べたりしたのか? 城で崩れた天井に使ってた過去再生の魔法」
「無論だ……だが肝心のシリウスが消え去る前後の映像が見れなかったのだ。おそらくあの日発生していたとされる魔力嵐の影響だとはおもうのだが……」
「魔力嵐?」
「何年かに1度起きる魔力の嵐だ。あまり我々には影響がないが、過去再生等のごく一部の魔法が使えなくなるのだ」
それはまた随分と都合のいい嵐だな。クエストの為に調整されたものだとしてもそこまで露骨になるだろうか?
「一応部屋に入って見てもいいか?」
「好きにしろ。だが勝手に物を動かすことは許さんからな」
「見るだけで十分だよ。あと自分から出て行ったって線はなさそうだな」
「む、何故だ?」
「魔力嵐ってのがどんな物かはいまいち分かんないけど、それを人為的に引き起こすことは出来ないだろ?」
「それは……確かに」
「んでもって、その魔力嵐を観測するためには過去再生みたいな特殊な魔法を使える必要がある。シリウス君はそんな特殊な魔法は使えたか?」
「いいや。あの子は天才だったが、私の買い与えた魔法教本に書かれている魔法以外は使えなかった筈だ。それでも私よりよほど多くの魔法を使えたがな!」
えっ、それって本に書かれてる魔法は全部覚えたってこと? どんだけ天才なんだよシリウス君。
「そ、そうか。でだ、人為的に起こせない魔力嵐とそれを観測することの出来ないシリウス君。タイミング良く、それも誰にも気付かれることなく抜け出すことは不可能だ。それは外部からの犯行であっても同じ事」
「それは何故だ? 魔力嵐を観測することができるなら実行できるではないか」
「いつ起きるかも分からない魔力嵐に頼るくらいならもっと簡単な方法がいくらでもあるだろう? それなのにわざわざ魔力嵐を利用したってことは……」
《悪神の残滓……弱き者よ貴様今何処にいる?》
「うえ!?」
「ど、どうした!」
「あー、神様からネタバレくらった的な?」
推理シーンの一番いい所を台無しにしやがって……グーヌート、やはり許すまじ!
映像にするなら部屋の中ををくるくる見て回りながら会話、推理の最後を言いかけた時に自分の考えだした結論をちょっと格好つけて宣言しようと椅子に触った所でグーヌートのネタバレって感じ。




