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勝負の結果

「……」

((……))


 ざわざわ……ざわざわ……。


「おい見ろよ、なんかスゲー金ぴかだぞ」

「レアモンスター? にしても派手だなぁ」

「よく見たら連れてるの店主さんじゃん。前は猫連れてなかったっけ?」

「ぬおーッ、俺がテイムしようと思ってたのに! 先を越されたか!」

「ひっ……あれは黄金の悪夢!?」

「あっ! 左肩に止まってる梟って昨日俺らのこと助けてくれた梟じゃん!」

「めっちゃ強いんだぜあの梟!」

「むぅ、ここからでも分かる強者のオーラよ……あの鳥達、何故あのような弱き者に従っておるのか」


 すごい目立つんですけど……。

 なんだよ黄金の悪夢って。そして森で何やってたんだノクティス。あと最後の達人っぽい爺さんの眼力が怖い。


「待ち合わせは室内にするべきだったか……」


 俺達はファースに帰る為にフォル婆と事前に決めていた待ち合わせ場所に来ていたのだが、いかんせんルクスが目立つせいで人目を集めてしまう。

 加えて俺もそこそこ有名みたいなのでさらに人は増え、増えた人々に吸い寄せられるようにしてイベントを探すプレイヤーがやってくる悪循環が完成してしまった。


(ふん、不愉快な視線だ。我の能力を披露するついでに蹴散らしてしまってもいいか主よ?)

「そんなことしてみろ、お前の無駄に長い尾羽全部引っこ抜くからな」

(な、なんて恐ろしいことを……この優雅でエレガントな我のチャームポイントは例え主が相手でも渡さんぞ!)

「優雅とエレガントで意味被ってるからな?」


 話しかけて来るわけではないが、目の前でヒソヒソざわざわされてるとさすがにちょっと鬱陶しくなってきた。フォル婆はまだ来ないのか?


「待たせたねぇ、ライぼ……はて、 待ち人はどこにいったのかねぇ」

「おっと、他人のふりして逃げようとしてもそうはいかないぜフォル婆」

「なんなんだいその金ぴかの鳥は。目立ってしかたないじゃないか」

「フォル婆がもっと早く来てればここまで人は集まらなかったんだぞ? とりあえず船に急ごうぜ」

「やれやれ、年寄りを急かすんじゃないよまったく」


 よく言うぜ。誰が歓楽島に来るか決める為にやってたマジック&シールドで縦横無尽に飛んだり跳ねたりしてたじゃねーか。

 あんな動きが出来る老人を労ろうなんて気持ちには誰もならないって。


(おいルクス、覚悟しろよ。船って奴は恐ろしい乗り物だ……)

(まさかノクティスは船酔いするのか? 我は兄弟として情けなく思うぞ)

(お前は乗ってないからそんなことが言えんだよ!)

(ふっ、我ならばそんな醜態を晒すこと無く優雅な船旅を満喫出来るだろうがな!)

(へっ、言ったなお前? 出来なかったら旦那の作るダンジョンであっしの手下になってもらうかんな)

(よかろう。船旅を満喫して逆にノクティスを我の手下として馬車馬のように働かせるのも一興よな)


 人の頭を挟んでケンカしないでほしい。スゲーうるさいんだけど……。






(うおぉぉぉ……世界が、世界がぐるぐるとぉ……)

(へへっ、うっぷ……それ見たことか。ルクスはあっしの手下に決定でサァ旦那ァ)

「お前ら本当に乗り物ダメなのな」


 スーツを着ていたおかげか来るときのようなトラブルに見舞われることもなく船に乗ることが出来た俺達は、フォル婆も含めて俺の部屋へと移動した。


「ふぇっふぇっふぇ、まさかヴィルゾーヴの子供が船酔いするなんてね。もしかしてあいつも乗り物ダメなんじゃないかい?」

「見てみたい気もするけど、気持ち悪くなったら船掴んで飛びそうな気がするな。この方が速いとか言ってさ」


 なんせ自分より何倍も大きいモンスターだって巣に持ち帰って餌にしてるくらいだ。この船ぐらいなら軽く運べてしまうだろう。


「で、ライ坊。アタシを部屋に誘ったのはこの子達の様子を見せたかったからじゃないだろう。ついにアタシの魅力に逆らえなくなっちまったのかい?」

「おぞましいこと言うな。カジノ勝負の結果発表といこうじゃねーの。そのでっかい荷物は飾りじゃないだろ?」

「ふぇっふぇっふぇ、そう言えば勝負なんてしてたっけね。地下まで落ちたアンタがどこまで挽回できたのかみものだよ」

「あの程度逆境でもなんでもなかったってことを見せてやるさ。……あれ? なんで俺が地下に落ちたって知ってんの?」

「ん? あー……たまたま近くで見ててね。見事な負けっぷりだったじゃないかい」

「なんだよ、見てたなら声くらいかけろよな」


 でも妙だな。あの時ギャラリーなんてほとんどいなかったと思うんだけど、フォル婆はいったいどこから俺の勝負を見ていたのだろうか?

 おっと、そんなことより手持ちのコルから勝った分を計算しないとな。


「ふぇっふぇっふぇ、アタシは軽く億越えさね」

「バカな、そっちも億越えだと!?」

「そっちもって……まさか地下から這い上がってすぐに億も勝ったって言うのかい!?」

「オフコース。俺のLUKが唸りをあげたぜ!」

「ふぇっふぇっふぇ、てっきりアタシの圧勝だと思ってたけど……面白くなってきたじゃないかい」

「それはこっちの台詞だぜ! よし、紙に儲けた額を書いて同時に見せるか」

「それがいいね」


 お互いに億越えの儲けは確定、これだけでオーナーさんはさぞ頭の痛い思いをしたことだろう。地下闘技場が解放されたらお金落としに行くから許してほしい。


「書けたか?」

「おうともさ」

「それじゃ、いっせーの」

「「せ!」」


 俺の額は6億飛んで53万。麻雀してたおっさん達から巻き上げた分がかなり効いている。そして肝心のフォル婆の儲けは……


「6億、1370万……」

「ふぅ、僅差でアタシの勝ちのようだね」

「だーッ! 途中で切り上げなけりゃ絶対勝ててたのにぃ!」

「惜しかったねライ坊。それじゃアタシの言うことを一つ聞いてもらおうか」

「くっ、体は汚されても心まではくっしないんだから!」

「まぁそれでもいいんだけどね、アンタのホームに追加で作って貰いたい物があるのさ」

「なんだそんなことでいいのか。で、あれ以上なに作らせようってんだよ」

「温泉だよ。屋台に来た子達に聞いたんだけど、広くて大きな湯に浸かるのは大層気分が良いんだってねぇ?」

「温泉かぁ……まぁ気分が良いのは確かだな。それくらいなら今さら増えた所でどうってことないぜ」


 源泉堀当てられなかったら最悪銭湯でも作ってお茶を濁せばいいだろう。

 あ、ついでにでっかいプールも作るか。ここの海ってアホな能力した海産物がそこら辺に転がってるせいで安心して海水浴気分が味わえないからな。

 ふふふ、そしてプールとくれば水着回! 完成したらライト達を招待して4人の美少女水着姿を合法的にウォッチ出来るって訳よ!

 この完璧なプランを産み出すきっかけをくれたフォル婆には感謝してやろうじゃないか。


「サンキューフォル婆! 俺は温泉、そしてプールを作ってみせるぜ!」

「なんで面倒事を頼んだアタシに感謝してるのかは知らないけど、ほれ。これ持っていきな」


 フォル婆からひょいと投げ渡されたのは小さな袋だった。


「なにこれ?」

「アタシがカジノで勝った分のコルほぼ全額だよ。ライ坊に借りた分のコルに色付けて返させてもらうよ」

「はぁ!? いやいやいや、いくらなんでもこれは貰いすぎだろ!」

「アタシが持ってても使う機会なんてそうそうないからね」

「んなことないって! あって困るもんでもないんだから自分で持っておけって!」

「ライ坊、アタシらが住んでるのはファースだよ? 100万コルもあれば1年は余裕で暮らせる街さね」

「あっ」


 本当だ。金の使い道が皆無じゃん。

 ファースで見かけた1番高い物(猫じゃらし)でも10万コルだった。

 となるとNPC的には無駄に金を持ってる方が危険なのかもしれないな。

 フォル婆なら例え強盗や盗賊に襲われても余裕で退治しそうな気もするけど、念のため死んでも問題ないプレイヤーの俺が金を預かっておいた方がいいのか。


「わかった、これは貰っておくよ。けど後で返してほしくなったら言えよ? 手元にあれば返すからさ」

「なら入れ物は返しておくれ。それ割りと貴重なんだよ」

「これが?」

「アンタらプレイヤーにはすとーれーじとか言う便利な物があるだろう? それと似たような物で重さも無く結構な物がしまえるのさ」


 言われてみれば確かに見た目通りの重さで中に大量のコルが詰まっているようには感じられない。

 これがあれば更にストレージに物を詰め込むことができるのか……。


「なぁ、フォル婆」

「いくら出されても売らないよ」

「ちぃ!」

「ま、欲しいんならダンジョンにでも挑んでみることさね。たまに宝箱から出てくることもあるらしいよ」


 ダンジョンか。そう言えばダンジョンマスターに後で遊びに行くって言ってから結構経ってるな。

 あそこで落ちるとは思えないけど、ダンジョンマスターのジョブを解放する条件を聞きに行くついでに探してみるか……ってまたやることが増えちまったな。

 とりあえず王都に着いたら城に修繕費を払いに行って、それからエイルターナー邸でシリウス君の情報収集。これが終わったらカードショップ探して、えーとそれから……その場の流れで色々する!


 考えてもその通りに事が進むことなんて滅多にないんだから深く考えないでゲームを楽しめばいいんだよ!

 とりあえず船が王都に着くまでログアウトしてよっと。

ライリーフの現在の所持金、12億コルオーバー。

所持金だけなら確実にトッププレイヤーに違いない。

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