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割りと簡単な魚料理

(ふぁ~あ……ん? おお、我の目覚めに先駆けて戻るとは出来た主よ。極上の朝食を作ることを許す、急ぎ準備するがいい)


 起き抜けにいきなり飯の要求とは太い野郎だ。いや、見た目はかなりスマートだけど。


「おいノクティス、こんな尊大な態度の兄弟いなかったろ?

どうなってんだ」

(いやー、そいつはあっしも聞きたいくらいでサァ。鳥ガーハッピーに進化した兄弟はもっとこう……硬派な鳥だった筈なんですが)

「もはや見る影もないな。というか見た目に引っ張られて成金な口調になってんじゃね?」

(金ぴかですもんねぇ……あ、あっしは魚が食いたいです)

「お前も便乗するのかよ」

(あっしも腹へってますからねぇ。頼んます旦那)

「しゃーねーなぁ……」


 俺もそろそろ何か食べないと空腹度がヤバかったので作るのはいいんだけど、なんか腑に落ちない。

 まぁいいや。ノクティスの注文は魚だから……アクアパッツァでも作るか。

 歓楽島は島だけあってそこら辺の店で新鮮な魚が買える。ホテルに戻る時に適当な魚介類を買い漁っておいてよかったぜ。


「あっしまった、ここで料理するのは不味いわな。ちょっと厨房借りてくるわ」

(む、空腹の我を待たそうと言うのか? だが許そう。我は寛大だ、久方ぶりの料理を堪能するには空腹こそが最高のスパイスよ。しかしこの寛大さがいつまでも続くとは思わないことだ。せいぜい急げよ主)

(普通に待ってるから早く作ってでいいじゃねぇか。なんでそんな回りくどい言い回しになるんだ? 旦那、待ってる間に摘まめるもの置いていってくだせぇ)

「言い回しは金ぴかのがアレだけど、ノクティスも大概遠慮がないよな……」


 俺は作り置きのリャパリャパ炒めを二皿置いて厨房へと向かった。





「すいませーん、ちょっと厨房貸してくださーい」

「またか! うちの飯はそんなに不味いってのか!?」

「いや、食べてないから分かんないっす」

「食べろよ! あんちゃんそれでも客かよ!」

「は、はぁ……すんません」


 どうやら俺以外にも厨房を借りに来た人がいたみたいだ。ちょっとタイミングが悪かったかな?

 しかしこの人の言うことももっともだ。ホテルで料理を提供しているのに、それを食べもせず自分で作るなんて失礼だったな。


「ふん! まぁいい、厨房は好きに使え」

「え?」

「ただし俺の分も作れ。あんちゃんが何を作る気かは知らんが、それがうちの料理より不味ければ二度と厨房には入らせんからな!」


 とりあえず厨房は使わせてもらえるみたいだな。

 こちらとしては一度だけ厨房を使えればそれで十分だし、俺の料理より美味い料理がこのホテルで提供されているのなら自分で作る手間が省けてありがたいくらいだ。


「すいませーん、また厨房お借りしてもいいですかー?」

「またか……お嬢ちゃん、あんたうちの料理を美味い美味いと食ってくれてるじゃねぇか。それなのに何だって自分で作ろうとするんだい?」

「ここの料理がおいしいからこそですよ! 私も早くもっと美味しい料理が作れるようになりたくていてもたってもいられないんです!」

「そうなのか? ま、まぁその気持ちは料理人として分からんでもない。先客がいるが気にせず使ってくれ」

「ありがとうございます!」


 鯛っぽい魚のウロコを取っているとそんな会話が聞こえてきた。

 ホテルにまで来て料理をするとは物好きな奴もいたもんだ……俺もやんけ。


「あっ! 店主さん!」

「ん? あー、たしか……シフォンだっけ。こんな所で会うなんて奇遇だな」

「本当ですね! あの、もしよかったら作ってる所を見ててもいいですか?」

「別にいいけど、シフォンも何か作りに来たんじゃないの?」

「いえ! 店主さんが料理してる所を見る方が勉強になりそうなので!」

「勉強って……単にスキルレベルが高いだけだから、見てもあんまり意味ないと思うぞ」


 ステータス画面を開いてチラッと見てみた所、調理術のレベルは70まで上がっていた。おそらくこの前の屋台で5時間フル稼働で料理を作った影響だろう。


「それでも調味料を入れるタイミングや火の加減なんかは分かると思うんです!」

「そ、そっか。なら見てるだけじゃ暇だろうし、ちょっと手伝ってくれ」

「はい!」


 LUK補正でなんとかなってるだけだと思うから見てても意味ない、とは言い出せなかった。だってめっちゃキラキラした瞳をしてるんですもん!

 例えるならサンタクロースを信じる子供のような純粋な瞳だ。お前らには出来るか? そんな子に、サンタなど存在しないとキッパリ宣言することが。

 俺には出来ない! 相手が自分の技術に憧れる美少女ならば尚更だ。


「それで、そのお魚で何を作るんですか?」

「アクアパッツァだよ。見た目の割りに簡単に作れるからね」

「わぁ! いいですね!」

「んじゃ、こいつのウロコ取りよろしく」

「まかせてください!」


 さすがフィーネが頭一つ抜きん出ている料理ガチ勢だと言うだけのことはある。実にスムーズに下処理をこなすもんだ。

 おっと、俺もさっさとおっさんの分の魚の下処理をしなければ。

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