ジャックポットとハニートラップ
だいぶポーカーのルールがガバガバなので、キッチリしたルール以外認めねぇ!って方は心を無にして読んでください。
カジノに入ると普通に普段の装備のまま遊んでるプレイヤー達が目に入った。
……そのまま入っても怒られなかったのか。わざわざスーツ作って損したぜ。
「とりあえずコルをチップに換えるか」
(旦那、あっしはこの島を見て回りたいんで外に出てていいですかい?)
「いいけど、他のプレイヤーに迷惑かけるなよ?」
(もちろんでサァ!)
船で酔って動けなかった分を発散しに行くのだろう。見るからに飛び回りたくてウズウズしている。
「俺達が泊まるホテルの場所は分かってるな? 遊び終わったらそこに戻るんだぞー」
(了解でサァ!)
扉を開けてやると良い顔で飛んでいった。そっちも存分に楽しんで来るといい。
「そんじゃ、俺も楽しむとしますかねぇ!」
目指せビリオン! カジノの金庫を空にしてやるぜ!
コルをチップに換えた俺が最初に向かったのはスロットマシーン。
ふふ、実は俺、ゲーセンのスロットマシーンでめっちゃメダルを増やしたことがあるのだよ。
あの時の感じを思い出せばLUKさんの力と合わせて100倍は軽いね!
「とりあえず1万コル分を入れて……いざ!」
ガコン、ターラララララ、ポンポンポン。
ギュルルルルルーン!
[7][7][7]
ジャラララララララララ!
ヒャッホー! いきなりジャックポットだぜ!
LUKさん冴えまくりだなおい! この調子でどんどん頼むぜ!
ポンポンポン
[★][★][★]
ポンポンポン
[†][†][†]
ポンポンポン
[♪][♪][♪]
ポンポンポン
[☆][☆][☆]
うっはははは! 当たりが止まる気がしない!
本当にスゲーよ、もうチップがスタートしたときの20倍近くになってしまった。
ただ、数が多過ぎて少々嵩張るな。
もう少し増やしたら高額チップに交換してレートの高い台に移動しよう。
ポンポンポン
[7][7][7]
なんて言ってる側から再びのジャックポット!
ちょっとLUKさんってばどうしたのよ? 普段の幸運とは程遠い悪運っぷりがまるでないじゃないのさ。
もしかしてデレ期来てます? 来ちゃってます? 来ちゃってますよねぇ!
んっん~、もうLUKさんと乱数の女神にキスしてやりたい気分だぜ!
これぞLUK特化の醍醐味ってもんでしょう!
グッバイ、昨日までのいまいちラッキーじゃない俺。そしてウェルカム、ノリにノってるラッキーボーイライリーフ!
ふはははは! 負ける気がしないぜ!
あれから暫く経って、高レートの台でもジャックポットを出したり、ルーレットの一点賭けに成功したりした俺の現在のチップはなんと2億コル相当にまで膨れ上がった。
まじでビリオン狙えそうでドキドキする。
しかしここまで派手に勝ちまくると店側にマークされるようだ。途中から目が笑ってないバニーガールが店側の好意で俺に付き添っている。
めっちゃ綺麗だから嬉しい筈なのに、ゲーム中は不正を働いてないか血走った目で見てくるので喜べない。
「あのー、そろそろ疑いは晴れましたか?」
「なんのことでしょう? 私はただVIPなお客様のお世話をするよう命じられているだけですよ?」
「そ、そうですか」
こめかみに血管浮かんでるし目尻もピクピクしてるのに、あくまで笑顔なのはプロの根性の成せる技だろうか……めっちゃ怖いから素直にキレてもらいたい。
「あら坊や、随分と景気がよさそうね。よかったら私とこれで勝負してみない?」
「よ、喜んで!」
超セクシーなドレスを身に纏った謎の美女にカードの勝負を持ち掛けられてしまった。
つい反射的に頷いてしまったが、店側の罠かもしれない……と思ったがバニーちゃんも訝しげな顔をしているし違うっぽいな。
「ふふ、素直な子は好きよ?」
「うヘヘ……ってうん? この声どっかで聞いたことあるような……」
何処でだっけなぁ……アドベントではないし、ファースだろうか?
でもあの爺婆の巣窟にこんな美女がいる筈ないし、流石に気のせいか。
「それじゃ貴女、ディーラーよろしくね」
「へ? は、はい……わかりました」
「それで、ゲームの内容は?」
「そうね……ポーカーを10回勝負でどうかしら」
「2人でポーカー? まぁいいけど」
「ルールは2人だしドローポーカーでいいかしら?」
「一回引き直して良い役が揃ってる方が勝ちのルールだっけか? いいぜ」
「ただし、それだけじゃ面白くないからよりスリリングなルールを追加しましょう?」
「スリリングなルール……?」
「ええ。ベットの最低値は1万コルから、そして敗者は勝者がベットしたチップと同じチップを追加で支払うの」
「なるほど」
普通はベットされたチップだけを獲得できる訳だが、追加で相手からチップを奪えるのか。一対一の勝負だからこそのルールって訳だな。
「次に2回目以降のベットの最低額は前回のチップの合計から」
「はぁ!?」
「あら? そんなに沢山のチップを持ってるんだからいいじゃない」
「いやいやいや無茶苦茶だろ……」
このルールだと仮にお互いが1万ずつ賭けて勝負がついたとしても、合計が2万、そこに敗者が追加で1万払うから3万で次も最低値だったとしても次のスタートが12万からになる。
そして勝負である以上最低値でゲームが進むことなんてあり得ない。それを10勝負も繰り返すってなると……ま、負けたときが恐ろしい!
「もう、仕方ないわね……なら坊やが勝ったら私のことを好きにしていいわよ?」
「ふっ、俺も男だ。1度受けた勝負を反故になんてしないさ!」
「ふふ、そう来なくっちゃ」
こうして謎の美女と俺のポーカー対決が幕を開けたのだった。
「最初だし10万って所かしら」
いきなり10万もベットしてきやがった。
後半が多少怖いが、今の俺の資金は2億もあるんだし慌てることはない。
そして今の手札は8と6のツーペア。フルハウスも狙えし強気でいこう。
「こっちも10万ベットで」
「ふふ、乗り気じゃなかった割には強気ね? そんなに私が欲しいのかしら?」
「正直そのおっぱいは資料として是非揉んでおきたい」
「資料……?」
「ちょっとおっぱいの感触のする鞘が欲しいってねだられててな。その参考にしたい」
「そ、そう……変わったお友達がいるのね」
ふっ、精神的動揺を誘う作戦だったのだろうが無駄だ。俺はエロのためなら羞恥心を封印できる。俺をただの童貞と侮ったうぬの不覚よ!
「んっんん。それじゃ、私は3枚交換しようかしら」
「んじゃ俺は1枚」
ペアになっていなかったカードの代わりに転がり込んで来たのはスペードの6! これでフルハウスだぜ!
「コール、1万」
「レイズだ」
出揃ったチップは合計23万。買っても負けても次は30万スタートか……。
「それでは両名カードを開示してください」
「10と4のツーペアよ」
「8と6のフルハウスだ」
おっと割りと良い勝負だったのか。油断ならねぇ。
俺の勝利で次は35万からスタートだな。
「Jのスリーカードよ」
「ストレートフラッシュ」
勝負は進み、現在俺が4連勝中。賭け金もかなりの額になってきた。
「本当に運が良いのね坊や」
「まぁな。4桁のLUKは伊達じゃないぜ」
「(うげ、そんなにLUK高かったのかよこいつ!)」
「バニーちゃん、聞こえてるからな?」
「空耳では?」
空耳かぁ……。ならしゃーないな。
「4桁……それは確かに凄いけど、運命の女神がいつも坊やに微笑むとは思わないことね」
「うん……?」
負け続けていると言うのに随分楽しそうな顔するなこの人。
ま、おっぱいのために手は抜かないけどな!
「む」
今回の初手は2のフォーカードか……。
役としては強いけど、同役内では最弱の手だ。
これまで4回の勝負は俺の勝ちだが、この人も相当良い手を揃えてくる。
いっそのこと全部捨ててみるのも一興か……?
「3枚交換するわ」
「俺は全部だ」
さーて何が来るかなっと。
「うっ」
3のスリーカード……手が弱くなってしまったか。
そもそもフォーカードならそうそう負けることもないし取り替えなくても良かったんじゃないか? 俺のバカ!
「ふふ、どうやら運命は私に味方し始めたみたいねぇ?」
「ど、どうだかな」
「その強気はいつまで続くかしらね? コール200万」
「にひゃ!?」
おいおい、ここに来てそんな吊り上げ方するのかよ!?
ここから先の勝負は一気に賭け金が膨れ上がりそうだ。
「ちっ、コール……」
「あら、レイズじゃないのねぇ?」
「うっ……」
「では両名カードを開示してください」
「ふふ、私はロイヤルストレートフラッシュよ」
「なっ! 3のスリーカードだ……」
ちくしょー! どのみち勝てなかったのかよ!
「くっ、次の勝負だ!」
「ふふ、今回は私の勝ちだから、次は坊やの先行ね」
後から思い返せばここで流れが完全に変わってしまったのだろう。
十数分後、全財産をむしり取られた俺はパン一で地下牢に収容されてしまうのだった。
謎のフォル何とかさんのLUKは任意変動式で100~99999まで思いのままだったりする。




