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主従は似るもの

 ちゃちゃっと装備を修繕し、まだ到着まで時間がかかりそうなのでログアウトして昼食とトイレを済ませた俺は再びログインしてクエストのログを確認してみることにしたのだが……。


「うーん?」


《邪悪なる眷属》

報酬

???

達成条件

フードの男と協力して海魔を撃退せよ


 あの場にフードの男なんていたか? それっぽいやつは見かけなかったと思うんだけどなぁ。

 もしかしたら時間経過で登場する助っ人だったのかもしれない。

 俺にはノクティスがいたから倒せたが、普通のプレイヤーには現状倒せないくらいには強かった筈だ。クラーケンって鳥さんが捕ってきた食材の中にもいたし……。

 一定時間クラーケンの攻撃を耐えると助っ人登場、そこから助っ人の力を頼りにクラーケンを追い返すのが正解パターンって所か。

 報酬の???が何だったのかスゲー気になるけど、失敗してしまったものは仕方がない。

 まだ到着まで少し時間もあるし船内でも見て回るか。




(う、うぉぉぅ……)

「ノクティスは乗り物ダメだったかー」


 せっかくだからノクティスと一緒に回ろうと思い、船の簡易生産部屋から自室に戻るとそこには床に墜落した哀れな鳥が1羽いた。


(だ、旦那ぁ……世界がぐらぐら回ってまサァ……。もうあっしはこれまでで、うっぷ……)

「ただの船酔いで大袈裟な。暫く飛んでれば治るだろ」

(飛ぶ? はは、冗談言わねぇでくだせぇ……今飛んだりしたら確実に頭から地面に墜落しやすぜ……)

「こりゃ重症だな。一緒に船の中でも見て回ろうと思ったが、お前は大人しく休んでろ」

(め、面目ねぇ……)


 船を見て回るのはやめて酔い止めの薬でも調合するか?

 たしかカルメ婆さんから作り方を教わってた筈だ。

 綺麗な水に雑草を一つまみ、愛情を60%籠めて煮詰める

と酔い止めになる、だったか? まるで原理がわからない。

 そもそも他の師匠達から教えてもらった技術と違ってカルメ婆さんから教えてもらったことは再現できた試しがない。

 錬金術師のタルメルの爺さんが若干ボケてしまったのはこの謎パワーに真っ向から錬金術の理論で挑み、解明に失敗したからだって話もある。

 ……ノクティスには悪いが予定通り船を見て回ろう。俺には酔い止めは作れそうにない。すまん、許してくれ……!





 適当に船内をうろうろしていたのだが、あまり面白そうな物がなくてつまらない。

 これなら海でも眺めていた方がましだな。甲板に出るには何処を通ればいいんだっけ?


「ん?」


 闇雲に進んでいると壁に1枚のレリーフが飾ってあるのを発見した。

 彫られているのはどうやらこの船を作った人達らしいのだが、なんか見覚えがあるような気がする。


「誰だったかなぁ……って下に名前も彫ってあるじゃん」


 えーと、カツ・ドーン、ギュウ・ドーン、カイセン・ドーン……ドーン三兄弟かよ!?

 あの人達がこんなまともな船を作っただと? 信じられねぇ、ただのボトルシップマニアじゃなかったのか!

 普段は3人で陸海空を制覇するロマン溢れる船の設計を熱く議論し続けていたが……まさか本気で造ろうと考えていたのか?

 ヤバい、ホーム作りの一環だとか言って手伝わされる可能性が出てきたな。正直言ってめんどくさい。

 テーマパークなんていらん物まで作らされてるのに船まで手が回るかっての!


「で、俺は何をしようとしてたんだっけか?」

 

 たしか、海がどうとか考えてた気がするけど……。


ピンポーン

『乗客の皆様、歓楽島・バルカナルに到着致しました。お降りの際はお忘れ物等をなさいませんようお気をつけ下さい』


「お、ついに到着か!」


 ヒャッホー! お待ちかねのカジノの時間だ!

 はぁ、ついにここから俺のLUKが無双を始めるんだなぁ……感慨深いぜ。

 カードにスロット、ルーレット! 先ずはどれから遊んでやろうか。


「おっといけね、部屋でのびてるノクティスを回収しないと」


 かなりグロッキーだったし早く陸地に連れて行ってやらねば。






「おお、これが歓楽島……!」

「いやー、何時来ても心踊る場所だねぇ。年甲斐もなくワクワクしてきちまうよ、ふぇっふぇっふぇ!」

(あっし、乗り物には金輪際乗らないと誓いやす……)


 いいねぇ、ザ・リゾートって感じが堪らない。リゾートっぽい所に行ったことないけど、たぶんこんな感じで合ってると思う。


「フォル婆、こっからは完全別行動といこうや」

「いいともさ。ただしただ別行動ってのもつまらない、ここは一つ勝負といこうじゃないかい」

「勝負? いいけどどんなルールにするんだ?」

「帰るまでにより多くコルを増やした方が勝ちってルールはどうだい? 負けた方が何でも一つ勝者の言うことを聞く罰ゲームつきでねぇ」

「ほほう、面白いじゃん。けどフォル婆相手に言うこと聞かせる権利じゃ燃えないなぁ……」

「しょうがないねぇ……ライ坊が勝ったらアタシの代わりにソフィアを好きにしていいってことで」

「ふっ、全力で勝ちにいこうじゃないか。4桁のLUKを前に膝を屈するがいい!」


 けど了承も無く他人を景品にするのはどうかと思うの。その方が嬉しいから指摘はしないけどね!


「それじゃ帰りの分を除いてお互い手持ちは20万からスタートってことで、ん」


 なんだろう、何かを寄越せと言わんばかりの手。具体的に言うとアドベントの転移門で見たのと同じこの手つきだ。


「ん? 帰りの分を除いた……っておい、まさか」

「ふぇっふぇっふぇ、百倍にして返すから貸しとくれ」

「やっぱりか!」


 今回は貸せって言ってきただけマシだと思っておこう。





「しっかし、意外とプレイヤーっぽい連中が多いな」


 フォル婆と別れた俺はとりあえずカジノを目指したのだが、すれ違う連中の半数近くがプレイヤーのようで正直困惑している。

 ここに来る為には80万コル貯めて船のチケットを買うか、冒険者ランクC以上で受けられる護衛依頼を受注しなければならない。

 どっちの条件もそこそこ難しい筈なんだけど、この人数はいったいどう言う訳だ?


「あ! ライリーフじゃないですかー、お久し振りですね。頭のそれは私が手元にいなくなった寂しさを埋める為に飼い始めたペットですか?」

「え、ティルナート? なんでここにいるんだ?」

「そんなの新マスターとのデート中だからに決まってるじゃないですか。あれ? 新マスター? ……やれやれ仕方ないですね、迷子になるだなんてああ見えて新マスターもまだまだ子供と言うことですか」

「いや、はぐれたのお前だろ」


 と言うかこいつ、自分の本体を持ってるアルバスからはぐれるとかポンコツ度が上がってないか?


「それより聞いてくださいよライリーフ! 新マスターは毎日私のことを優しくお手入れしてくれるんですよ!」

「へー。……え? ちょっと待て、それって感覚共有した状態でってことか!?」

「当然じゃないですかー」


 いやん、と手で頬を押さえクネクネしながら答えてくれた。

 お手入れってあれだろ? やたらエロい声でティルナートが喘いじゃうやつだよな。

 ほほう、俺ですら自重したあれをアルバスは毎日していると。なるほど、なるほどねぇ?


「ティルー? 何処にいってしまったんだい、ティルー!」

「あ、新マスター!」

「ティル! ダメじゃないか、いきなりはぐれたりして」

「むぅ、私ははぐれてませんー。新マスターが迷子だったんですー!」

「はいはい、それでいいよ。でも本当に心配したんだからね? 君は可愛いから誰かに拐われてしまったのかと思ったんだ」

「新マスター……」

「もう僕の側を離れないでくれるかい?」

「……はい」///

「……てかティルナートは霊体だから拐われることなんかないだろ」

「ら、ライリーフ!? 何時からそこに!」

「最初からですが何か? いやしかしアルバスくぅーん。君も少し見ない間に随分とレベルの高いプレイヤー(意味深)になったみたいだなぁ?」

「い、今のはその、えっと、そ、そう! 君に習って即興でロールプレイをする練習だよ! け、決してそれ以外の意味なんてないからな!」

「うん? 何の話かなー? 俺は別にさっきのやり取りのことなんて何とも思っちゃいないぜ。それよりティルナートから聞いたんだけど、毎日剣の手入れをしているそうじゃないか」

「そ、それがどうしたって言うのさ!」


 クク、罠にかかりおったわ!


「アルバスくぅーん、ティルナートの元の所有者が誰だったかもう忘れちまったのかい?」

「あっ……ち、違うからな!? 武器の手入れは基本だし、あの、えっと!」

「ティルナート、毎日の手入れの感想は?」

「はい! それはもう丹念に、あんな所やこんな所まで優しく撫でてくれるのです。うへへ、正直たまりませんね」

「ティル!? なんてことを口走ってるんだ! ち、違うぞ! 僕はやましい気持ちなんて一切なくて! ただ手入れは大切で!」


 ぷふふ、道行くプレイヤーにまで言い訳を始めやがった。そろそろ可哀想だからからかうのはここら辺にしといてやるか。


「アルバス、もう分かったから落ちつけって。からかって悪かったよ」

「うぅ、最悪だ……掲示板に変態として晒されるに決まってる……」

「安心しろよ。そもそもティルナートが見えるのはごく一部のプレイヤーだけだし、剣を手入れするのだって普通のことじゃんか」

「そ、それもそうだな……」

「武士の情けだ、お前が剣を弄くりまわして興奮する特殊性癖だってことは俺の胸の内にしまっといてやるさ」

「そ、それは本当に違うぞ! 手入れの度にティルが勝手に……」

「えー? 新マスターも毎回ノリノリじゃないですかー! 嘘はよくないですよ! あ、それよりライリーフ。おっぱいの感触の鞘はまだ出来ないのですか?」


 まだそれ覚えてたの? まったく、主従揃ってレベル高過ぎだろ。

お目汚し失礼致しました……。

正直後半がどうしてこんなに酷いことになってしまったのか分からない。

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