チュートリアルで詰んだかもしれない.9
()の中の言葉は主人公にしか聞こえていません
今回登場するもう一人のプレイヤーにはキュイキュイ言ってるようにしか聞こえていません
別にキュイキュイ書くのがめんどくさくなったんじゃないんだからね!
子兎達が疲れて眠ると今度はフィールドで見かけるサイズまで成長した兎達にサンドバッグにされた。
ある程度動く的じゃないと満足できないのか足を縛っていた草は外してくれたのだが、いかんせんAGIに差がありすぎる。
レベルが低いのか、フィールドで戦っていたときのような空中移動こそしてこなかったのだが、それでも俺は回避出来ずにギッタンギッタンのボッコボコにされた。
しかも時間が経つにつれてこいつらの蹴りの威力も上がっていった。
「お、おのれ兎共め……いつか絶対に泣かせてやるからな!」
(お前みたいなへなちょこに負ける俺達じゃないぜ)
(そうさ!もう一人のやつみたいな化け物にでもなってから言うんだな!)
「化け物だと?でも俺より前にここに捕らえられているんだろ?」
(奴は捕らえられているのではない。自らの意思でここに留まっているのだ)
(ボス、お疲れっす)
(うむ。そら人間、飯を持ってきてやったぞ。感謝して食べるんだな)
そう言って兎が差し出してきたのは萎びた葉っぱだった。
「調理しろ、とは言わないがせめて新鮮な物を寄越せよ……」
(ハッ、贅沢を言うな!どのみちプレイヤーは腹さえ満たされれば何を食べようが関係無いだろうに)
それはそのとおりなのだが、サンドバッグにされた上に残飯処理だなんてお断りだ。しかしそうか。空腹度があったな。
称号とLUKの効果で攻撃され続けても死に戻りできなかった訳だが、空腹によるペナルティでなら死に戻りができるかもしれない。
それをネタに脅せば、少なくともまともな食べ物が出てくるんじゃないだろうか?
「おい、いいのか?満足出来るような食い物が出てこなければ俺は餓死することだってできるんだぜ?せっかく捕らえたプレイヤーなのにみすみす逃げられることになるんじゃないのかなぁ!」
(くっ、痛いところをついてくる……だがお前に渡す食料はそれだけだ。どうしてもと言うならあの女にでも分けてもらうがいい。連れてきてやるからおとなしくしていろよ!)
「おお、遂にもう一人のプレイヤーと会えるのか」
しかし自分の意思で留まっている、ねぇ?兎達から化け物なんて呼ばれていたが、はてさてどんなものやら………。
(連れてきてやったぞ)
「まぁ素敵だわ、私以外にも兎さん達に招待された方がいたのね!」
………デカい。何処がとはあえて言わないが、デカい。
なるほどこいつは化け物クラスだぜ!うちの姉さんも大きいほうだと思うがそれをはるかに凌ぐ圧倒的質量の暴力!姉さんを富士山とするならこの人はエベレスト!思わずそう例えてしまいたくなるほどの圧倒的スケールだ。だがそれはともかく。
「手足を縛られて転がされてる俺を見ての感想がそれかよ……」
「?兎さん達と遊んでいたのでしょう?とっても楽しそうだわ!」
はは~ん、さてはこの人天然だな?そしてどことなく高貴なオーラを感じる気がする。なんと言うか、世間知らずのお嬢様って感じだ。
何故か装備が全て外されていてインナーなのが非常に気になる所だ。健全な男子高校生たる俺はそりゃもうガン見してしまいましたとも。
「あの、つかぬことをお聞きしますが…何故にインナー?」
「え?このほうが直に兎さん達と触れあえるからに決まってるじゃありませんか?」
キョトンとした顔でそう返された。マジかこの人。この凶悪な兎達と触れ合うためにインナーになるとか予想の斜め上を行く天然だぜ。
こいつら別にテイムも何もされてないモンスターだぞ?それと触れ合うなら防御力が高いほうが長く触れ合っていられそうなものだが……。
「あっ、勘違いしないでくださいね?街の外でだけですから!街ではちゃんとマントを装備しているんです!」
「いや、それはそれで変質者なのでは?」
(おい、さっさと飯をねだったらどうだ)
「あら、ごめんなさい兎さん。別に貴方のことを無視している訳ではないのよ?」
(……ふん!)
「ちょっ!?」
スパーン!ふるるるん……
おお、蹴りの衝撃で揺れていらっしゃる!ありがたやありがたや……じゃない!
こいつ何考えてやがる!無防備なおっぱ、じゃなくてえーとこの人名前なんだっけ?まだ聞いてない?じゃあこの人でいいか!……をいきなり蹴りつけるとか!死に戻りでもされて俺が飯にありつけなかったらどうするんだ!
「うふふ、もぉ~。やきもちやきなんだからぁ~」
「ハァ!?今のくらって笑顔だと!?」
(くっ、まだ防御を貫けないか…我の蹴りは既に大岩すら一撃で砕くと言うのに!)
「おい、ウサ公!どういうことだ!」
(こいつは自分の意思でここにいると言った筈だ…。こいつにとって今の我の蹴りですらじゃれてきたとしか思っていないのさ!)
苦々しい声でボス兎は答えた。ん?どこかでこんな話を見たことがあるような気がするぞ?………あ、掲示板だ!たしかこの間覗いたときにそんな書き込みがあった筈だ。
超上級もふリスト、通称兎列車さん。
もはや山のように見える数の兎達に蹴りつけられながらご満悦だった変態的プレイヤー。
インナーなのは防具が意味を為さないほどのVIT極振りだからだったか!
「あぁ毛のふわふわした感触がたまりませんね~。ハァ…称号なんて増えなければもっと子兎さん達とも遊べたのに…」
「しょ、称号ですか。ちなみにどんな効果なんです?」
「【鉄壁の守り】って称号なんですけどね?私に攻撃が通らなかった時にダメージを反射してしまうんです……そのせいで子兎さんが怪我をしてしまったんです」
シュンとした表情からヤバめな情報が飛び出してきた。ボス兎の全力の蹴りですらほぼノーダメージだったよな?しかも防具無しでだぞ?きちんと装備を整えた状態のこの人にダメージって与えられるのだろうか……?
ちょっとゾンビアタックできるからってイキッてた俺とは格が違うヤバさだ。
(ハァ…ネームドを越えユニークに至った今ならば、と思ったのだがな)
「……へい、ウサ公。今なんつった!?」
(今ならば攻撃が通るかと)
「違う!その前!え?何?お前ユニークモンスターだったの?」
(その通りだが、貴様知らずに我に毎回挑んできていたのか?)
「毎、回……?」
(実にしつこく追いかけて来たではないか。そのお陰で進化もできたから文句は言わんがな)
「えっ……じゃあもしかしてお前以外二段ジャンプとか空中コンボとかできないのか?」
(当たり前だろう。貴様兎をなんだと思っているのだ?)
どうやら俺はユニークモンスターに挑んでいたらしい。
ちなみにヒロインとかではない