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いざ歓楽島へ!

「おや、ずいぶん早かったねライ坊。ふぇっふぇっふぇ、しかし見事なまでにボロボロだねぇ?」

「ほっとけよ……それよりさっさと船に乗ろうぜ」


 蜘蛛に食われかけた所を蜥蜴に強奪され、更に蜥蜴ごと蝙蝠に連れ去られた所でノクティスが到着。かろうじて助かるも落下ダメージで気絶と言う超絶コンボを食らった俺と装備はもう滅茶苦茶だ。

 いくら初心者装備が壊れないと言っても傷や汚れはついてしまう。

 クリーンで汚れだけは落としたが、傷だらけなのに新品のように見える謎装備になってしまっている。

 そうだな……例えるなら自分でわざと傷をつけてダメージ加工っぽくしようとして見事に失敗した、そんな感じ。つまりめっちゃダサい。

 この船着き場に到着するまでに、道行く人々にクスクスヒソヒソと笑われ続けたんだから相当だろう。

 さっさと船の部屋で装備を直したい。




 搭乗の列に並ぶこと暫く、漸く俺達の番がやって来た。


「ようこそ、ご利用ありがとうございますレディ」

「アタシの部屋はこっちだね。先に行ってるよライ坊」

「うーい」

「む? 困るな君ぃ。ここはチケットを購入できるセレブ専用の搭乗口だ。護衛依頼を受けた冒険者はしたの貨物搬入口から入ってもらわないと」

「へ?」

「と言うかその装備、護衛依頼すら受けられない駆け出し冒険者だな。自分で傷をつけて歴戦の冒険者のように見せているつもりだろうが……ふっ、バレバレだよ」

「いや、俺は」

「警備員! この冒険者擬きをつまみだせ。お客様の搭乗の邪魔だ」

「「うっす」」


 言うが早いか2人の警備員は、そのゴリマッチョな見た目に反する滑らかな動きで自然に俺の両腕を確保しやがった。


「ちょ、離せよ! 俺はちゃんとチケット買ったっての!」

「何ィ!? 貴様チケットを盗んだのか!」

「買ったって言ってんだろうが!?」


 ええい! このポンコツAIめ、俺の話を全然聞きやがらねぇ!


(旦那、あっしがなんとかしやしょうか?)

「何か名案があるのか?」


 満腹になってから俺の頭の上で置物のように固まっていたノクティス! その野生の頭脳が導き出した答えを聞こうじゃないか!


(へい。あっしがこいつら全員の頭を撃ち抜きゃ旦那も船に乗れるかと)

「却下! 物騒すぎるし本当に犯罪者になっちまうだろうが!」

(そうですかい? いい案だと思ったんですがねぇ……)


 まったく、恐ろしいことをさらっと言いやがる。流石はボスモンスターすら瞬殺するスナイパーだと誉めてやりたいが、今は自重しろ。


「何をごちゃごちゃ喋っている。大人しくしろ」

「このまま衛兵の詰め所まで運んでやる」

「ちくしょう、せっかく王都まで来たってのにぃ……!」


 と、俺が諦めかけた時だった。

 海から何か巨大な物が出現したのだ。


「く、クラーケンだぁ!」

「どうしてこんな場所に!?」

「おぉ、神よ……これは聖職者でありながら豪遊しようとした私への罰なのでしょうか?」


 おい、最後の奴まさかアドベントの神父か? こんな所で何やってんだよ……。


ピコン!

《新しいクエストがスタートしました》


「ほほ~う?」


 なるほど、NPC達の普段より自由度の低い思考パターンだったのは俺がクエストのフラグを立てたからだったか。

 そうと分かれば話は早い。普段であれば尻込みするようなサイズの怪物ではあるが、今の俺には頼もしすぎる相棒がいる。


「クラーケン……! くっ、こいつを離して逃げるか?」

「バカ言うな! 俺達の職務は船の安全を守ること、そうだろ!?」

「そ、そうだな。すまん、俺が間違っていた」

「分かればいいんだ。俺達は俺達の仕事をまっとうしよう。さ、詰め所に急ぐぞ!」

「ああ!」

「船守らねぇのかよ!?」


 仕事に託つけて逃げようとしてるだけじゃねぇかこいつら!


「おいおい勘弁しろよ……相手はあの海の悪魔クラーケンだぞ?」

「君の安全の為にもここは詰め所に向かうのが一番だろ」

「ちっ、海の漢とは思えない思考回路だ。そのムッキムキの筋肉は飾りかよ!」

「そうは言っても……なぁ?」

「あぁ、いくら筋肉がムッキムキでもクラーケンには勝てないし……」

「もういい分かった。俺達があいつを殺るから腕離せ」


 言葉と同時に龍呪の眼光を発動する。

 これでクラーケンにビビってるこいつらは怯んで腕を離す筈だ。


「お、おい……あんたまさか本当に歴戦の冒険者だったのか!?」

「とんでもねぇ威圧感だ……空気まで重く感じるぜ! ダサい服装の癖に!」

「服のことはほっとけ! 後で直すつもりだったんだよ……たく。ノクティス、お前の案を採用するぜ。ただし撃ち抜くのはあのデカブツの頭だ」

(了解ですぜ旦那!)


 俺の頭から音も無くふわりと飛び立つと、ノクティスは灯台の上に陣取った。


(確かにデケェが、3発も撃ち込めば十分でサァ!)


チュドドドーン!


「うーん、若干オーバーキルな気がしないでもないが……実にいい仕事だぜノクティス!」


 たぶんクリティカルが発生して3発目が着弾する前に倒せてたけどね。


「う、嘘だろ……? クラーケンがこうもあっさり……」

「マジかよ……」


 あっはっは、マジなんですよー。本当……強すぎるわ鳥ガーハッピー。


ピコン!

《クエストを失敗しました》

《クエスト情報が更新されました》


「あれ、失敗なのか」


 もしかして俺が一切攻撃に参加してないからだろうか?

 しかしその後、クラーケンを倒したこともあり盗人疑惑の誤解は解けて無事に船に入れて貰えた。

 やれやれ、これで漸く装備が直せるぜ。

 けどクエストに失敗したのに誤解が解けたのは何故だろう? 後でどんなクエストだったのかログを確認してみるか。






―side???―


 ライリーフを乗せた船が出航し、人の気配が消え去った港にその男は1人佇んでいた。


「まさか、俺が出る前にあれが倒されるとはな……。後始末を押し付けてしまったようで心苦しいが、おかげで面白い物が見れた」


 フードを深くかぶり人ならざる気配を放つその男は、そう呟くと幻のように消え去っていた。

 無人の港からはもう何の気配も感じられない。

いつも読んで頂きありがとうございます。


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