表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/285

森のスナイパー

 楽しい。楽しすぎるぞ自力でする空の旅! 特に鷲掴みにされたり無駄にアクロバットな飛行じゃない辺りポイント高い。

 速度はそれほど出ないが、ゆったり景色を眺めながらのんびり目的地に向かえるって所も素晴らしい。

 ただ天翔天駆で高度を維持しないといけないのは少しばかり面倒かな。


「おっ、王都到着まであと半分くらいか。さすがに障害物もモンスターも無視して突っ切ってるだけあって早いもんだな」


 本来のルートである街道から外れると、奥に行くほどレベルの高いモンスターが出現してショートカットの邪魔をしてくるのだが、空を飛んでいる俺には関係ない。

 ふっふっふ。運営よ、妨害モンスターに飛行系のモンスターを混ぜなかったのは悪手だったな!


「しかしこのまま王都に行く訳にはいかないよなぁ……」


 確かに俺はモンスターとの戦闘自体は行っていない。行ってはいないのだが、それはモンスターから捕捉されないって事じゃない。

 つまり何が言いたいのかって言うと……


「絶賛トレイン中なんだよねー!」


グオォォォ!

ブルルルルル!

ぺギャー! ぺギャー!

キュオオオオン!

ブフォォォォ!


 アイシャさんが見たら興奮して即座に突っ込んで行きそうなくらい多種多様なモンスターが群れをなして俺を追いかけて来ている。

 隠れようにも空には遮蔽物がないので常にモンスターから捕捉され続けてしまうのだ。これでもう少し俺の滑空スピードが速ければ振り切れたんだろうけどなぁ。


「んー、どうすっかなぁこれ……」


 と呟いた時だった。

 複数の鋭い風切り音と共に、俺を追いかけていたモンスター達が突如として爆ぜたのだ。


「は……?」


 い、いったい今のは何なんだ!?

 群れの中に2、3体いたボスっぽい風格を醸し出すモンスターも雑魚諸ともまとめて消し飛んでやがる!

 そしてどうやらこの攻撃はまだ終わっていなかったようだ。

 再びの風切り音、始めの攻撃を辛うじて生き延びたモンスター達が無慈悲に宙を舞う。


「え、えげつねぇ……」


 何処の誰がこんな大虐殺をやってのけたのかは分からないが、こんな攻撃今のプレイヤーには到底真似できない。

 即ち現状この攻撃の主だと考えられるのはNPC、あるいはモンスターってことだ。

 ぶっちゃけ俺を無視してモンスターばかり狙っている事からどちらかと言うとNPCなんじゃないかなーと思うのよ。てかそうであってくれ!

 こんな攻撃仕掛けてくる奴がモンスターで、しかも比較的序盤のエリアにいるとか運営の正気を疑わざるを得ないから!


 だがそんな俺の思いも虚しく、攻撃の主は次の標的を俺へと定めたようだ。

 何故そんなことが分かるのかって? 風切り音より早く弾丸が俺を射貫いたからさ……。


チュドォーン!


 ははは、せっかく再生を果たした転聖龍鎧さんがまた消し飛んでしまわれたぞ。とか考えながら俺は気絶状態になり無様に森へ墜落したのであったとさ。







「痛てて……はぁ、漸く気絶状態が解けたか」


 しかし鎧がぶっ壊れてしまった。

 無限滑空大作戦、その肝心要のMPの自動回復が出来なくては空を飛んで王都を目指すことはできない。

 道のり的にはあと半分より短いくらいの距離ではあるが、ここは街道からかなり離れた位置にあり、雑魚モンスター相手でもかなり苦戦すると思われる。

 こりゃ定期船の出発までに王都に着くのは無理そうだぜ……。


「ハァ……急がば回れ、か。昔の人の教えは守っとくんだったな」

(ほっほーぅ? あっしの一撃を受けて生きてるとは思ったより頑丈なんですネェ? 流石は森向こうのバカ共先導してあっしの縄張りに戦争なんざ吹っ掛けて来やがっただけのことはありまサァ)

「!?」


 や、ヤバい!

 この口振り、絶対さっきの攻撃してきた奴だ!

 それらしき姿は見当たらないが、既に声が届くほど近くにいることは間違いない。

 右も左も、そして後ろからも気配を感じないと言うことは――


「上か!」

(ご名答! ってあらら? ライリーフの旦那じゃねーですかい)

「え?」

(あ、もしかしなくても先導してたんじゃなくて追われてた感じっすよね? だとしたらまとめてスナイプ決めちまってすいやせんでした)


 声の、延いては攻撃の主は木の枝にとまった体長1メートル程の迷彩柄をしたイカす見た目の梟だった。

 どうやらこの梟は俺のことを知っているらしく、勝手に納得して謝罪までしてくれた。

 んー、俺に梟の知り合いなんていない筈なんだけどなぁ。

 梟、鳥、スナイプ……んん?


「お前、もしかして鳥ガーハッピーなのか!?」

(お久しぶりでサァ、ライリーフの旦那!)

「うわーなんか縮んだなお前! 前はもっとデカかったろ?」

(そうですかい? 自分じゃよくわからねぇんですが、そう言われるとライリーフの旦那が前より大きく見える気がしまサァ)


 まさか鳥ガーハッピーが成鳥になるとこんなに格好良くなるとはな。つくづく名前だけが残念な奴だぜ。

 あ、そうだ。王都までこいつに護衛してもらえばいいんじゃないか?

 ここから王都までに見かけるようなモンスター程度、鳥ガーハッピー様の火力の前には塵芥も同然だしな。


「なぁ鳥ガーハッピー、俺ちょっと王都に行きたいんだけどさ。さっきの狙撃で鎧が壊れて空を飛べなくなっちまったんだよ」

(いやー本当に申し訳ない。てっきり新種のモンスターだと思っちまいやして)

「あぁ、その事は気にしてないから大丈夫だって。それに、鎧は後で勝手に直るし、俺を追いかけてた後ろのモンスターも殲滅してくれたしな」

(そう言ってもらえると助かりまサァ)

「んで、ここから相談なんだけどさ。ちょっとここから王都に着くまで俺の護衛をしてくれないか?」

(護衛ですかい? あっしの攻撃受けてピンピンしてるような旦那に護衛なんて必要ないと思うんですが)


 まぁ鳥ガーハッピーからすれば確そう思うのも当然だよな。

 実際【ウォーキング・デッド】がある以上いつかは自力でも王都にたどり着けるし。


「実は急いで王都にいかなきゃならないんだよ。俺の攻撃が貧弱なのは知ってるだろ? 道中のモンスターを相手にしていたんじゃ予定に遅れかねないんだわ」

(なるほど……分かりやした、旦那の護衛あっしが引き受けやしょう。ですが1つ頼みを聞いてもらってもいいですかい?)

「頼み? あんまり無茶な事じゃなければいいぞ」

(あー、また飯を食わせてくれやせんか? どうも生の肉だけってのは味気なく感じちまいやして……)

「あぁ、島での飯はクッキングバード達が頑張ってたおかげでかなり美味かったもんな。そりゃ舌も肥えてるだろうよ。その程度の頼みならいくらでも聞いてやるさ。そうだ、なんならこれからは俺と一緒に行動するか? それなら毎日うまい飯にありつけるぜ?」

(そいつぁマジですかい!? 是非ともお供させてくだせぇライリーフの旦那!)


ピコン!

《鳥ガーハッピーのテイムに成功しました》

《名前を付けてください》


「なぬ!?」

(どうしたんです?)

「い、いや、何でもないから!」


 ちょっとした冗談のつもりでついてくるか?なんて聞いたらテイムに成功してしまった。

 あ、そう言えば【ヴィルゾーヴの友】って称号がテイム成功率上げてくれてるんだっけか。すっかり忘れてたわ。


「んー……なぁ、お前名前の希望とかある?」

(名前ですかい? そうですねぇ……今の種族名よりマシならなんでもいいってのが正直な感想でサァ)

「そうかぁ……じゃあノクスでいいか?」

(ノクス……これでもう変な名前だって笑われることもないんですねぇ……!)

「お、おう」


 地味に苦労してたんだなぁ。

 梟、夜行性、夜って安直な連想でノクスと付けてしまったけど平気だよね?

いつも読んで頂きありがとうございます。


昨日しれっと新作投稿してたりするので、どうしようもないくらい暇な時にでも気が向いたら読んでやってください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ