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再び屋台の店主になる

「ふーん? それでまた屋台出すことになったのか」

「まぁな。とりあえずスパイスとかはこの2日で大量に作ったから、結構な数のプレイヤーが来ても売り切れにはならないと思う」

「食スレと捜索スレの奴らだいぶ盛り上がってたもんな。てかレアカード払いって何よ?」

「読んだまんまレアカードを商品と交換する支払い方法だけど?」

「そのレアカードってのがよく分かんないんだよなぁ……あ、俺らも今日ファースに行く予定だから手伝ってやるよ」

「サンキュー」


 以上、帰り道での光介との会話でした。

 でも参ったな。結構アグレッシブに動いてる光介(ライト)達でもレアカードはドロップしたことがないのか。てことはプレイヤーからカードをゲットできる可能性はかなり低いと思った方が良さそうだな。


「そんなことを考えながらログインする俺であった、っと」

「やっと来たねライ坊。広場が凄いことになってるよ」

「マジで? まだ開始二時間前だぞ?」

「前もって会場を作っておいてよかったねぇ。あの人混みじゃまともに設営作業なんて出来やしないよ」

「むしろ先に会場作ったせいで人が集まってるって可能性もあるけどな……」


 プレイヤーの中身である俺達日本人はイベント前日から並ぶくらいのことは平気でやるし、人が集まっているとなんかよく分からなくてもとりあえず群がる性質も持っている。まさかその性質をゲームの中でまで発揮するとは思わなかった。


 ホームエリアからファースの広場へ移動する。すると途端に見えてくる人、人、人。過疎エリアだってのが信じられないくらいの人の群れがそこにはあった。


「人来すぎだろ……俺の予想してた3倍はいるぞ?」

「ニャー……」


 人混みが苦手なセレネがうんざりしたような鳴き声を漏らした。後で高級猫缶買ってやるから我慢してくれ。


「ふぇっふぇっふぇ、まさかまたファースに人が集まるなんてね。これは確かに稼ぎ時さね」

「本当、念のため師匠達にも屋台出すように頼んどいて良かったわ」


 俺の料理だけじゃ並んで待つ時間に対してショボすぎる気がしたので、昨日のうちに何人かに声をかけておいた。

 魔導工学を利用した回転する玩具(ガラクタ)を多数取り揃えるニコルテス老の玩具屋。

 ブレーネさんの超高級志向本格王宮料理屋台。(値段高過ぎてプレイヤーはたぶん買えない)

 よく分からない木彫りの伝統工芸品が並ぶパブルさんのポナート屋。

 ドーン三兄弟のボトルシップ屋に、カルメ婆さんの愛情たっぷり雑草エリクサージュース、そして賑やかし担当のセルディオのおっちゃん。

 この布陣ならきっとプレイヤーの波だって乗り越えられる!


「それじゃ師匠達も準備してくれ! 目指すは全員で歓楽島バカンスだ!」

「「「「「おー!」」」」」

「ほーらお前ら道開けろ! 屋台の準備が出来ねーだろうが!」


 ヒャッホー!待ってましたー!等の声が上がるが、半分くらいのプレイヤーは今から何が始まるのか分かってなさそうな顔をしてる。

 たぶん食スレ民と捜索スレ民のファース大移動に釣られて着いて来たんだろうな。

 期待していたであろうイベントじゃなくてちょっと申し訳ないが、それはそれとしてせっかくだから金を落としていって欲しい。


「食材よし、スパイスよし、食器も使いきりのを大量に用意した。師匠達は準備できたか?」

「「「おう、いつでも始められるぜ」」」

「こっちも準備できたよ~ぃ」

「……む、いいぞ」

「ふふん、売上勝負といこうではないかネ、ライリーフ?」

「若いもんにポナートの良さを広めるチャンスじゃ、張り切って行こうかのぉ」

「よし、それじゃちょっと早いけどオープンだ! あ、こら! お前らちゃんと並べよな! 順番だっての!」


 こうして雛鳥達に料理を作って以来のデスマーチが幕を開けたのだった。





「リャパリャパ炒め大盛で5皿くれ!」

「スパイスの詰め合わせ3セットください!」

「ホネナシチキン? この商品名大丈夫なのか?」

「だから順番守れよ! いっぺんに話しかけるな! ほらリャパリャパ炒め2人前で1600コル!」

「うひょー! でも前より高くない?」

「前はレア度確認してなかったからな!」

「大盛まだー?」

「今よそる!」


 くおぉぉ……! 人手が足りねぇ! ライト達はまだ来ないのか!?


「ぜんぶ大盛でくださいな」

「はい……ってフィーネじゃん! 到着してたなら手伝ってくれよ!」

「断る。目の前にライの料理を置かれて我慢できる程私は我慢強くない」

「……おまけしてやるからこれ食い終わったら手伝ってくれ」

「ライ、大好き」

「くっ! 涎垂らしながらでなければ嬉しい台詞なのに!」


 フィーネがいるってことはライト達が到着したってことだ。この盛況ぶりを見て、まさかフィーネのように食ってからなんて悠長なことを考えたりはしまい!


「おー! 何これおもしれー! 魔力で回るの? あ、これとかレースできそうじゃん! 爺ちゃんこの3つちょうだい」

「……ん、3つで……3600コルだ」


 ライトぉ!? 何ガラクタに目を輝かせてやがるんだテメェ! ンなもんほっといてこっち手伝えや!

 はっ! まさか他のメンバーも……?


「わー! 見て見てルルちゃん! 瓶の中に船が入ってるよ! どうやって作るんだろう?」

「ピンセット使って瓶の中で船を組み立てるらしいっすよ」

「「「俺達は豪快なだけじゃねぇ! 繊細さも併せ持ってるんだぜ!」」」

「おじいさん達凄いんですね!」

「ホームゲットした時用に1個買っておくっす!」


「この、ポナートって木彫り……なんだか癒されるな。爺さん1つこの場で作ってる所を見せちゃもらえねーか?」

「ふっ、この良さがわかるとは……兄ちゃん若い割りに渋い趣味しとるのぉ」


「このジュース健康に良さそうね。後味もスッキリしてて美味しいわ」

「愛情がたっぷりだから美味しいのよぉ? あと大きな声じゃ言えないんだけどね……これを毎日飲めばお嬢ちゃんのお胸もすぐに大きくなるわよぉ」

「くっ、ゲームの中なのが惜しいわね。……それはそれとしてダースで貰えるかしら?」

「はい、毎度あり」


 ダメだ……全員別の屋台に捕まってやがる。

 人を分散させて楽をするために用意した師匠達の屋台がこんな形で裏目に出るだなんて!


「何故……何故売れないのだネ? 私の料理は完璧な筈なのだネ……」

「値段がアホみたいに高いからだよ! それより暇ならこっち手伝ってくれよブレーネさん!」

「ぐぬぬ、まさかこの私が手伝いに回る程差が開くとは……ライリーフ、今回は勝ちを譲ってやるのだネ!」

「ポーズ決めてないでさっさと注文とる!」

「あ、ハイ……」


 この時、俺はまだ気づいていなかった。この波を乗り越えた後には、社会人プレイヤーの波が控えていると言う事実に……。

いつも読んで頂きありがとうございます。


おまけ

屋台の商品と値段


ライリーフの屋台

・リャパリャパ炒め(塩味)

並800コル 大盛1200コル

皿を持参した場合並の値段で大盛が買える。


・スパイス詰め合わせ

6000コル

☆☆~☆☆☆☆のスパイスが5本も入っていてお買い得。


・ホネナシチキン

1500コル

肉はチキンランナーの物が使われている。

空腹度が回復する他、食べてから30分間ステータスにチキンハート状態(自分よりも強い敵に遭遇した場合、STR、INT、MNDの数値が全てAGIに移される)が付与される。

転移技やアイテムが少ないスプルドでは強敵との戦闘から離脱することができる便利アイテム……なのだが、美味しくてつい空腹度回復用に食べてしまい肝心の戦闘で事故るプレイヤーが後を絶たない。



ブレーネの超高級屋台

・肥沃なる大地のピュレ

一杯20万コル


・山の恵みのポワレ

一皿30万コル


・海の恵みのプレゼ

一皿32万コル



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