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酒場にて

不覚、上書き保存を忘れて後半を書き直す羽目になろうとは……!


 今、俺の目の前にはとある料理が山盛りで置かれている。


「こ、これを食えと……?」

「それを食いきれたらこの店の代金は俺達の奢りだ。ま、食えなきゃお前が店の支払いを持つだけだがな」

「んだよそれ。あ、お姉さんミルクちょうだい! 底の浅い皿でお願いね」

「ガハハハ! ミルクとかまじでガキじゃねーか!」

「俺のじゃねーし! 今のはセレネ用だっての!」


 ギルドから叩き出された俺達は、互いに文句を言い合いながら酒場へと向かった。

 別に一緒に店に入ろうとかそういうつもりは微塵もなかったんだけど、おっさん達も文句の言い合いでいい感じに喉が渇き腹が減ったとかでついて来やがったのだ。

 で、今俺の目の前に置かれている料理。俺の目が正常ならミミズの素揚げに見える。と言うか商品名が山盛りスナックワームでそのまんまだった。


「ほれ、冷めないうちに食っちまえよ」

「くっ、ニヤニヤしやがって……」


 ここは街の酒場だ。もしこいつを食えなかったとしても、俺を含む4人で豪勢に飲み食いしたところで余裕で払えはするだろう。

 でもそれはなんかムカつく。

 これを食べきれさえすればおっさん達が支払いを受け持つのだ。わざわざ俺が金を出す必要はない。

 覚悟を決めろ俺! ここはゲームの中なんだ。虫だろうと高級な肉だろうと所詮はデータに過ぎないじゃないか!

 店が山盛りにして売ってるくらいだし味もいいんだよたぶん!


「ええいままよ!」

「うへぇ……本当に食いやがった」

「ギャハハハハ! マジかよ!」

「……」


ひょいパク、ひょいパク。


「お、おい? 無理すんなって。普通に折半にしてやるからよ」

「そうだぜ。それを食った男気に免じてさっきの件も水に流してやろうじゃねーの」

「いや、あんたらが横入りしてきたのが原因だろうが。てかこれ普通に美味いぞ?」

「「「はぁ!?」」」


 ざっくり説明するとチーズ味のポテトだな。食間もフライドポテトとポテチの中間みたいな感じだしかなりイケる。

 どおりで山盛りにされてるわけだ。こんなのずっと食べてられるもん。

 でもあれだな。普通に美味い物も売ってるのに、何でプレイヤー達は俺の屋台を熱望したんだろ?

 リャパリャパ炒めはおまけで、スパイスが目当てだって言うならある程度納得もできるけど……。


「ニャー」

「ん? セレネも食べるか?」

「ニャウ」


 うん、いい食べっぷりだ。猫に揚げ物ってどうなの?と思わなくもないけど、ゲームだから気にしない。


「……な、なぁ。それ本当に美味いのか?」

「食えばわかるよ。あー、山盛りとは言え4人で食べるとなると少ないかもな」

「4人ってなんたよ! お、俺は食わねぇからな、そんな気持ち悪い物!」

「ガハハハ! お前はそんなんだから女にモテねーんだよ」

「ンだとコラァ!?」

「おっさん達ケンカすんなよ。ギルドに続いて酒場からも追い出されたいのか?」

「「この程度じゃ追い出されねぇよ!」」


 ダメだこいつら。ナチュラルに周りに迷惑かけるタイプだわ。


「よ、よーし……俺は食う。食うぞー……」

「あんたはまだ悩んでんのかよ。あ、そうだ!」

「ん? なんむぐぅ!?」


 顔を上げた瞬間スナックワームを口に突っ込んでやったぜ!


「う、美味い……」

「だろー?」

「ヤバいなこれ。4人どころか2人でだって足りないくらいだ!」

「うげ、リーダーまでゲテモノ食いに目覚めやがった」

「見た目はお世辞にも良いとは言えないが、味は確かだぞ? これだけでいくらでも酒が飲めるくらいにはな」

「そりゃ言い過ぎだろ。どれ、俺も1つ試してやらぁ……むっほぁ、マジでうめぇじゃねーか!」


 自分以外の全員が美味い美味いと食べている中で我慢ができなくなった最後のおっさんが陥落するのにそう時間はかからなかったとだけ言っておこう。





「歓楽島の情報だぁ? あそこはクエスト達成報告の受付だぞ」

「ギルドなんか久しぶりに入ったから受付がどこかわかんなかったんだよ」

「しかしお前、歓楽島の情報なんて集めてどうするんだ? あそこに行くには片道80万コルの定期便に乗らなきゃいけないんだぜ?」

「高っ! 何か抜け道とか無いのかよ」

「ないこともないが、島での自由度が下がって楽しめないぞ?」

「あの夢のリゾートに仕事で行くんじゃなー」

「それでも往復の料金を払わなくていいってのはありがてぇんだけどよ」


 酒も進み口の軽くなったおっさん達から情報を聞き出せた。仕事と言うからには特別なクエストでもあるのだろう。

 Eランクでも受けられるクエストだといいんだけど、そう上手くはいかないだろうな。


「それってEランクでも受けられるクエストか?」

「バーカ、実績のあるCランク以上の冒険者にしか受けらんねーよ!」

「Eランクの坊主はおとなしく金稼いだ方が早いんじゃねーか? ガハハハ!」

「確かに……」


 今からクエストをチマチマこなしてCランクを目指すのは面倒だし、週末に出す予定の屋台で稼ぐ方が早そうだな。

 あー、でもそうなるとファースに帰らなきゃならないのか。

 せっかく合法的にファースから抜け出せたのに何も出来ずに自分から帰ることになろうとは……。


「しゃーない。明日ぐるっと王都を散策したら帰るか」

「ニャー?」

「わかってるって。師匠達にお土産買うのも忘れてねーよ」

「ニャ」


 今日はログアウトして楽しみは明日にとっておこう。

いつも読んで頂きありがとうございます。


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