チュートリアルで詰んだかもしれない.8
リベンジに行く前にスキルを付け替えておこう。
【体術Lv5】【投擲術Lv8】【集中Lv14】【精密動作Lv6】【解体Lv3】
↓
【体術Lv5】【身体制御Lv1】【集中Lv14】【疲労軽減Lv1】【逆境Lv1】
遠距離からの攻撃は捨てた。だってあいつら最初の石以外蹴り返してくるんだもん。
スキルレベルの低さが若干気にならないでもないが、ステータスと比べれば誤差みたいなものだろう。
俺には辛く厳しいフィールドだが、他のプレイヤーは最初からスナック感覚で兎を狩りまくってた訳だしな。
あんな動きをする兎をスナック感覚とかどこの超人だよって感じだ。
「ふはは!待たせたなウサ公!今度の俺はさっきまでとは一味違うぜ」
「きゅい?」
「何処がだと?教えてやろう!今の俺はたぶん無敵になったのだ。お前らの攻撃を何度受けても立ち上がれる不死身のボディと死に近づくことで効果を増すパゥワー!完璧な組合せだと思わにゅべらっ!」
この野郎!説明の途中で攻撃とかルール違反だろうが!だが……。
「ふっふっふ。ずいぶんせっかちだなウサ公」
「きゅいい!?」
ゆっくりと立ち上がる俺を見て、兎は驚愕の表情を浮かべた。クックック、反撃のじかんだぜ!
さぁ唸れLUK!その無駄に高い数値がお飾りじゃないってことをここに証明してやろうじゃないか!
現在手足を草で縛られて兎達に運ばれている。どうしてこうなった…?
LUKとても良い仕事をしてくれた。逆境もきちんと発動していた。だと言うのに攻撃が当たらなかった!てかそもそも攻撃させてもらえなかった!
俺が蹴っても死なないと理解した兎の行動はそれはそれは早かった。威力を抑えた連続蹴りにシフトして空中に俺を固定したのだ。
流れるようなコンボはどこの廃人格ゲーマーだよと文句を言いたくなる見事なハメ技だったとも。
【ウォーキング・デッド】の効果で死なない俺だったが、そこには落とし穴が1つあったらしい。
今までは一撃で死んでいたからわからなかったが、どうやらこいつらの攻撃でバッドステータスが発生することがある。気絶だ。
コンボの中で顎にいいのを貰った俺の意識は闇へと沈んでいったのだった。
「ち、ちくしょう!俺をどこに連れていくつもりだ兎ども!」
「きゅ、きゅい。」(黙れ、静かにしろ)
「グホッ」
ぬおぉ…脇腹がぁ!
「きゅう、きゅいきゅい…」(まったく、何だって俺達がこんなことしなくちゃいけないんだよ…)
「きゅきゅう、きゅうきゅーい」(ボスの命令だ、従うしかないだろうが)
「キュ、キュイキュキュウ。キュアキュキュキュウ」(然り、だがこれは我らにとって利のあることだ。我らの未来に繋がる名誉な仕事だ)
「きゅきゅ…」(そりゃそうだけどさぁ…)
「ききゅう、きゅいきゅー?」(これで2人目、ホントに意味があるのかねぇ?)
「キュキュウ、キューイ」(我らが証拠だ、他の者も続くだろう)
……あれ?めっさ喋ってますやん。兎さんめっさ喋ってますやんか!
もしや俺が兎達の会話を理解出来るようになったのか?スキルを確認したいとこだが手が使えないことにはメニューが操作できない、訳じゃなかったな。
思考操作。運ばれている間動けないし練習してみよう。
わりと簡単だったわ。
所持スキル一覧
採取Lv14 採掘Lv1 解体Lv3 体術Lv5 投擲術Lv8
集中Lv15 精密動作Lv6 身体制御Lv2 探知Lv1 疲労軽減Lv2
受け身Lv1 登攀Lv1 逆境Lv3 モンスター言語・兎Lv1
おお、やっぱり生えてたか。しかし条件は何だったんだろう?
一定時間モンスターと行動する?あ、戦闘前の茶番が偶然会話として成立してたって線もあるな。
あれ?スキルが生えてたのはいいとして、どうしてセットしてないのに言葉の意味がわかるんだ?まさか俺が兎になった訳じゃないだろうし。うーん、謎だ。まぁお得だしいいか。
また攻撃されてはたまらないので黙って空を眺めていると目的地についたようだ。
「キュイ」(連れてきたぞ)
「キュイ、クキュウ」(ご苦労、ゆっくり休んでくれ)
どうやらこいつが兎達のボスらしい。
見たところ他の兎達とそんなに違いはなさそうだ。ボスだし片目に傷があったり、耳が少しかけているような歴戦の兎を想像していたが予想が外れた。
「キュイ、キュキュウクキュイ。キュアキュクウキュイキュウ」(俺達は運がいい、あの女が使えなくなってきた所でこの拾い物だ。繁栄への道はこれでより強固なものになるだろう)
「繁栄?」
「キュイ。キュアキュキュウ」(そうだ。我らが遂に平原の覇者になるときが来たのだ)
「いったい何してるんだよ」
「キュウキュイキュ……キュキュ!?」(捕らえたプレイヤーを使って子供達の……しゃ、喋っただと!?)
うんうん、わかるぜその気持ち?
言葉が通じないと思ってたのにいきなり話しかけられたそりゃ驚くよな。
「そんなに驚くようなことじゃないさ、さぁ続けて続けて」
「きゅ、キュイ。キュイキュークキュアキュ」(ま、まぁいいだろう。どうせすぐにその身をもって経験することになる)
「くっ、いったい俺に何をするつもりなんだ……!」
ペチペチペチペチ
「みゅー!」「みゅみゅー!」「みゅいー!」
「…………」
ペチペチペチペチ
「みゅみゅ!」「みゅーみゅー」「みゅみゅみゅう!」
「…………」
か、可愛いすぎる!フィールドで見かける兎達よりもずっと小さな子兎達に俺はリンチされている。
「みゅう!」
小さな足から繰り出される蹴りはまるで痛くない。むしろふわふわふにふにで癒されるくらいだ。
「みゅう!みゅみゅ!」
だが本に、本兎達はいたって真剣だ。
手足を縛られ転がされた俺に果敢に挑んでくる。悲しいことにダメージは0なのだが、蹴られ始めた頃より威力が上がっている気がしないでもない。
なるほど?兎達がしようとしていたのは安全なスキルレベリングだったって訳か。
そうなると気になるのは俺よりも前に捕らえられているらしい女性プレイヤーだ。
俺は貧弱なステータスに殺しても死なないような能力をしているから連れてこられた訳だが、話を聞いた限りでは女性プレイヤー相手に実験が成功したからこそ俺が捕まったのだ。
となるとそのプレイヤーは俺と同じかそれ以上に特殊なステータスになっていそうだな……。
「みゅ…みゅ…」「みゅー…」「みゅ、みゅみゅ…」
「お?疲れたのか?ゆっくり休めよ」
「「「みゅー」」」
素直に返事を返してくれる子兎達のなんと可愛いことだろう。この子達よりも臆病なフォーチュンラビットを倒してしまったことへの罪悪感が5割り増しである。
本当にごめんなフォーチュンラビット……。