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王都にて

「ハァ……お前さん、ギルドに登録したんじゃなかったのか?」

「登録はした、登録しかしてないとも言う。てかそろそろ下ろしてくれよ。周りの視線が痛い」


 リア充スレイヤーとしての本能を抑えきれなかった俺は、簀巻きにされた状態でアドベントの転移門を使って王都に運ばれた。

 だがこの際、俺に転移許可が出ていなかったのでアドベントの転移門に俺とセレネが取り残されてしまったのだ。

 俺を落っことしたことに気がついたバルザさんが戻って来て、仕方なく許可申請を代理でしてくれた。

 しかしそもそも冒険者ランクがEのままだった俺に許可が下りる訳もなく、王都側の召喚命令による特別措置として1度だけ通行が出来るようにバルザさんが方々を駆け回ることになってしまったのだ!

 いやー、お役所仕事ってのはどこも融通が利かなくて困るよな。

 そんな感じでバタバタしていた俺達は、王都側に転移してからも迷惑そうな視線に晒され続けているのだ。

 ……嘘です。8割くらいは俺の格好に興味津々なプレイヤー(おそらく)達の視線です。

 衛兵に担がれた状態で転移してくるプレイヤーなんて珍しいもんな。そりゃ俺でも野次馬するさ!


「おい、あいつ何やらかしたんだ?」

「犯罪行為……って訳じゃ無さそうだな。それなら普通に牢にぶちこまれてオレンジネームなりレッドネームになる筈だし」

「わー、あの猫ちゃん可愛いなぁ。どこでテイムできるんだろ?」

「んん? あの顔何処かで……えっと名前は、ライリーフ・エイルターナーか。……リャパリャパ屋台の店主やんけ!?」

「何!?」

「災厄イベのボスとエイリアン倒した奴か! でもなんで初心者装備?」

「店主さーん! 次の屋台いつになったら出してくれるんですかー!?」

「俺も1回食いたいと思ってたんだ! 本物のリャパリャパ炒めって奴をよォ!」

「スパイスリーフの調合が上手くいかないんですけどコツとかあるんですか!?」


 oh……。そう言えば災厄とエイリアンで2回も名前流れちゃったんだよな。顔隠す装備作るの忘れてたぜ。


「おいライリーフ、このままじゃ王城に向かえん。なんとか彼等を大人しくさせられないのか?」

「何で俺が?」

「彼等が騒いでいる原因はお前さんにあるんだろ?」

「ぐっ、まぁそうだけどさぁ……」


 そもそも簀巻きにされてなければここまで目立つこともなかったと思うんだよ。え? いきなり殴りかかった俺の自業自得だって? はは、何も言い返せねぇや……。


「ハァ……あーコホン、よく聞けお前ら! 屋台は初期資金集めの為に出しただけだから次の予定とかないです!」

「「「「え~?」」」」

「えーって何さ。てか俺は別に生産メインのプレイヤーって訳じゃないからな? そこら辺の料理ガチ勢なプレイヤーの作る飯の方が絶対美味いって」

「ライ、その考えは甘い」

「ぬお!? フィーネが何故ここに!」


 さっきまでこの集団の中にはいなかったと思うんだが?


「そんなことはどうでもいい。ちょっと彼女の作ったリャパリャパ炒めを食べてみて」

「は、はじめまして店主さん! 私はシフォンといいます! どうか率直な感想をお願いします!」

「あ、はい」

「……どうぞ!」

「あーん。モグモグ……うん?」


 なんだろう。不味い訳じゃないんだけど、俺が作った物と比べると青臭さが気になる。そしてリャパリャパ特有の食感を楽しむために噛んでいると奥の方から徐々にえぐみが……。


「う~ん、なんか微妙……」

「うぅ、やっぱり……」

「ライ、これでもかなり美味しい方だよ?」

「マジで……?」

「シフォンは料理ガチ勢の中でも頭一つ抜けてるレベルのプレイヤー」

「マジかよ」


 てことはリャパリャパ炒めに関してはこれが現状で出回っている中での最高レベルの物になるのか。

 正直これなら素直に屋台で兎肉の串焼きでも買った方が良いと思えてしまう。だが、それじゃ駄目なんだよなぁ。

 何て言うか、リャパリャパ炒めには白米にも似た魅力があるんだよ。食事の時に無いとなんか締まらないって言うか、物足りないって言うか……。

 もし俺と同じ気持ちを俺からリャパリャパ炒めを買ったプレイヤー達が感じているのだとすれば生殺しもいいところだろう。

 リャパリャパ炒めは簡単に作れる、なのにあの味には手が届かないのだから。


「……とりあえず、お前らが何で俺の屋台を探し回ってたのかはちょっと分かった気がするわ」

「屋台、出してくれる?」

「毎日は無理だからな? 週一回、ファース限定でいいならやってやるよ」

「「「「「うおぉぉぉぉ!」」」」」

「うるさい! てか喜びすぎだろお前ら!」

「祭りだ野郎共! 食スレの連中と探索スレの連中に知らせてやれ!」

「「「「応ッ!」」」」

「屋台出す時は前日に食スレにでも書き込んでやるからさっさと解散しろ」

「「「「応ッ!」」」」


 なんて団結力だろう。たまたま居合わせたプレイヤーとは思えない一糸乱れぬ完璧なパフォーマンスで捌けて行ったぞ。つくづく飯の力って偉大なんだなぁ。


「所でライ、なんで衛兵に運ばれてるの?」

「ちょっと王城から呼び出し食らってな」

「また変なことしたんだ」

「失敬な、俺は割りとまともだぞ。なぁバルザさん?」

「少なくとも、自分の紹介でできたカップルに嫉妬するような奴はまともじゃないと俺は思うぞ」

「……確かに」


 改めて聞くと酷いな。リア充スレイヤーからは卒業した方がいいのだろうか?

ちなみに主人公に彼女がいないのはリア充撲滅運動のせいだったりする。

見た目は姉と同じくかなりいい方ですからね。

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