10月30日
返信は翌日になってからした。
田沢順平(6:40) 「俺も同じ科目とるよ(笑)」
「学校の授業だけだと受験不安だけど…」
遅刻しそうだったから、いそいで家を出た。
今日は天気が悪い。雨になりそうだ。
北海道、東北では雪がちらつく予報だ。
もう11月になる。
冬の足音はすぐそこまで聞こえている。
*
学校に着くと、すぐに南條がこっちに来た。
「高橋からきいたけどさぁー」
「お前、倉本とLINEしてるんだって?」
そのやりとりを見ていた高橋が、こっちをみてニヤけた。
別に隠すことでもないけどなんか知られたくなかった。
「南條、廊下いこう。」
奴は周りを気にせずに話を盛る。
馬鹿だから限度をしらない。
ウェイウェイしてるやつだ。
いろいろ誤解されたらまずい。
「んーしてるけど、まあ勢いでしただけだから。」
「たいした話もしてないしねー。」
南條は勝ち誇った感じでこう言った。
「俺のデータによると、そういう奴は決まって片思いになる。」
いやまてまてまて。
なんのデータや。
お前なんの立場から言ってんだよだよ。
言い返そうとしたら、朝礼のチャイムがなった。
慌てて教室に戻る。
高橋はずっと笑っていた。
*
南條に広まると、竹田にも伝わる。
もうそうなると収集はつかない。
男子と比較的仲がいい櫻井はもちろん知っていた。
でもよくこんなことで盛り上がれるな。
小学生かよ。
うちのクラスはそれくらい、色恋沙汰もない。
だからちょっとのことでも敏感に反応するのか。
まあ、俺の周りの一部の男子だけだが。
*
終始、倉本は無関心だった。
というか、耳に入ってないのかもしれない。
それはそれで良かった。
色々と巻き込みたくなかった。
倉本唯(19:10)「やったぁ!(笑)」
「塾で頑張るしかないよ。」
返信が返ってきて、正直ホッとした。
田沢順平(21:06)「同じ科目の人いて安心したわ(笑)」
「俺、東京離れたいんだよね。」
「そのためにも勉強がんばる(笑)」
馴れ馴れしすぎるだろうか。
自分のことを語りすぎたかもしれない。
いろいろ考えすぎてる。
気楽に行け。
*
模試が近いということもあるのか、今日は勉強が疲れた。
予備校から帰ると、吸い込まれるようにベットに向かった。
もう何もしたくなかった。
この時間、あいつは何をしてるんだろう。
ふとした時に頭をよぎった。
もう俺は、後戻りできないところまで来ているのかもしれない。
言葉では言い表せない何か。
これは恋なのか。自分でもわからなかった。