第三話 夕凪時雨と黒騎士(2)
あの事故から数日。俺はやっと親友を失ったショックから立ち直ることができた。俺は宿から外に出て歩いているとこの前の黒髪の女の子が俺のところまで走ってきた。俺が立ち直って宿から外に出た瞬間に俺のところにくるとは…。すごいタイミングだなこいつ…。すると彼女はぜぇぜぇと荒れていた呼吸を整えると、
「私は…救ってくれた彼の代わりに貴方を絶対に守って見せます。覚えていてください。私の名前は夕闇雪ですから!」
大声でそう宣言すると深くお辞儀をして走っていった。彼女が拓人に見えてしまってついだんまりしてしまったがきっと彼女は彼のような優しい勇者になるだろう。それが嬉しくもあり悲しくもあったのだ。そうこうしているといつの間にか喫茶店にきていた。ここのコーヒーを飲むのは俺の楽しみだった。きっと少しでも明るくなるように無意識にここにきたのだろう。俺は気分転換になるだろうとおもい、だいぶご無沙汰していた珈琲屋の店の扉を開いた。するとカランカランと懐かしい音がなり大柄なマスターがでてくる。
「いらっしゃい…ご無沙汰だったな… 」
彼はスキンヘッドと胸の傷。そして大柄な身体をしているが優しい。その上喫茶店を開いているだけあって料理。勿論コーヒーを淹れる腕は超がつくほど一流だ。確実にこの国で一番質がいい喫茶店だろう。だがここには人がいない。客がいないのだ。客なんて自分をあわせてご老人一人しかいない。それは何故か。それは彼の見た目が原因だ。彼は喫茶店を上半身裸で経営しているのだ。それを初見で見た女性や男性は上半身裸のおっさんによって威圧され店から追い出されるのである。勿論マスターはそんなきはないだろう。鈍感である。そんなマスターに優しい言葉を掛けられた俺は少し泣きそうになったがなんとか堪えて軽い冗談を言う。
「すまんすまん。マスターが恐すぎてないちまった。」
「てめえぶっとばすぞ?」
キツい言葉を投げ掛けられたように見えたが彼はそんなに怒っていないようで、すこし拗ねたかんじだった。おっさんの拗ねた顔とか誰得とかいわないぞ俺は。俺はそんなことを思いながらマスターの優しさに触れて少し笑顔になる。彼はそんな反応を見れて良かったと思ったか彼も笑っていた。彼はなにも言わずいつも俺が飲むコーヒーを淹れると俺のまえに出す。俺はそれを受け取り砂糖をドバドバと入れて飲む。
「お前は相変わらずコーヒーの味をぶち壊していくな!!!」
そういいながらわっはっはと笑うマスターに誘われて自然に俺も笑ってしまう。すると彼は嬉しそうに言った。
「お前が笑えて良かった。暗いお前なんてつまんねえからな。それにあいつもそんなおまえを望んでねえはずだ。」
そういって彼は俺に笑いかけた。彼はどれだけ俺の事を心配してくれただろうか。彼はただの客の俺を心から心配してくれた。彼みたいな人間はこの世に何人いるのか怪しい位に優しいのだ。流石にここにいると泣いてしまいそうだったのでお代を渡してからそそくさと外に出る。すると店の中から大声で彼の声が聞こえた。
「なにかあったらいえよ!!!俺はお前の味方だからなぁ!!!!!」
彼はとんでもない男だよ全く……今日は快晴だけど見栄っ張りで俺はこういった。
「あーあ。今日は雨だな。」




